政治・経済

IT・通信、建設・土木、プラント、機械など、幅広い分野において技術者の派遣や受託開発を手掛けるアベールジャパン。異業種の知識と技術を複合させた「総合エンジニアリングサービス」を標榜する。社名の「AVAIL(役に立つ)」とは、顧客と社会に貢献するという企業理念に基づいて付けたという。

 父親が金属プレス加工の会社を経営していた影響もあり、もともと技術には深い関心があったという市原敏雄社長。サラリーマン時代は小型トランスメーカーや、水処理プラント関連企業などでキャリアを積んできた。エンジニアとしてだけでなく営業職にも約15年従事し、2003年、54歳の時に北海道で起業。自らを「遅咲き」と称するが、瞬く間に事業を成長させ、今や全国規模に拡大。創業以来10年間、毎年平均で前年比130%の売り上げ成長を続けている。市原社長に今後の方向性と事業に懸ける想いを聞いた。

 

「現場の心を忘れた経営は発展しない」と言う市原社長

「現場の心を忘れた経営は発展しない」と言う市原社長

技術者が本領を発揮できる会社

―― まずは現在の事業環境をどう見ていますか。

市原 弊社はこれまで、リーマンショックなどあまり影響なく成長を続け、現在も好調を維持しています。派遣業界には大きく分けて一般派遣(登録型派遣)と特定派遣(常用型派遣)がありますが、この2つは全く性質が異なるものです。

 一般的に派遣と言えば世間的には派遣切りなどのマイナスイメージがあり、事業環境は厳しいのではないかと思われがちですが、これは主に製造業などの一般派遣の話です。われわれが手掛ける特定派遣は、技術者が自分の持つ創造性や技術を本当に発揮できる場所で働けるのが特徴です。世の中には、実際にやりたい仕事はあるけれど、所属する会社では実現できないという人がたくさんいます。弊社では社員の立場のまま、会社を辞めることなく仕事を選ぶことができます。これが特定派遣の大きなメリットだと思います。

―― 好業績を維持している秘訣は何でしょうか。

市原 幅広い分野を総合的に手掛けているため、仮に1つの業界で受注が減っても、他の分野でカバーできるという点は間違いなく当社の強みになっています。特定派遣でも専門分野に特化して単一業種に偏っている業者が多いのですが、当社はIT・通信、建設・土木、プラントまで総合的に技術者を抱えているのが大きな違いです。特に最近では、モバイルの通話エリア拡大などで通信関連の仕事が増えています。当社では基地局をはじめとするインフラ全般の工事から、その運用まで幅広く手掛けています。

 また、特定派遣は社員の定着率が良いということも挙げられます。社員は一時の腰かけではなく、あくまでも正社員や契約社員で雇用し、1つのプロジェクトが数年にまたがるケースも多い。ですから仕事に対する社員の満足度が高く、当社の社員定着率は97%を誇っています。

―― 幅広い分野で技術者のクオリティーを維持するのは大変ではないですか。

市原 そうですね。手掛ける分野がIT系や建築系など多岐にわたるので、技術者を確保するのはそれなりの苦労があります。ただ、当社の場合は大半が中途採用なので、経験をしっかり積んできた社員が多い。一方、最近では宇宙開発分野の通信関連などで新卒社員も採用するようになりました。

儲かる仕組みをつくるのが経営者の仕事

―― 市原社長は東京出身ですが、北海道で起業した理由は何ですか。

市原 単に前職の転勤先が北海道だったというだけです。もちろん東京で起業するという選択肢もありましたが、家庭の事情などもあり結果的に北海道に本社を置くことになりました。北海道は景気が悪く、会社がどんどんなくなっている時期だったこともあり周囲は不思議がりましたが、私は常々「こういう時期だからこそ会社をつくるんだ」と言ってきました。当初は営業マン時代などに培ってきた人脈を生かして受注を獲得し、事業としての離陸は早くできたと思います。景気が良くても悪くても、仕事というのはあるところにはあるものです。

―― 今後の目標を教えてください。

市原 自社でモノづくりがしたいという気持ちは強いです。現在もいくつか自社ソリューションを作っていますが、こちらも今後増やしていく予定です。また、IT・通信技術と建築・土木技術の複合技術で何か新たな展開ができないかと構想中です。

 将来的には、守備範囲を東南アジアなど海外にも広げていきたいとも考えています。海外は国民性や文化が違うので、当社の経営を融合させるのは日本より難しいかもしれませんが、これから事業環境はどんどん良くなっていくのではないかと思います。

―― 市原社長の経営哲学とは。

市原 第一に「現場主義」です。今でも昔ほどではありませんが、何かあった時には自ら全国を飛び回って、自分の目で見て確認する主義です。現場の心を忘れた経営は発展しないと思います。

 次に「儲けるは欲、儲かるは道」という言葉がありますが、儲けようとして営業マンの尻を叩くようなことばかりしていると、結局営業マンはギブアップしてしまいます。だったら経営者は儲かる仕組みをつくることを考えればいいということです。それができれば景気に関係なく会社を成長させられます。それこそが社長の仕事だと思っています。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

永田町ウォッチング

一覧へ

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年7月号
[特集]
社会課題で儲ける!

  • ・総論 グローバリズムとどう折り合いをつけるのか
  • ・なぜ、よしもとは社会課題と向き合うのか 大﨑 洋(吉本興業共同代表取締役CEO)
  • ・茶葉から茶殻までバリューチェーン全体で価値を創造する 笹谷秀光(伊藤園顧問)
  • ・持続可能な経営は、持続可能な地域が支えている キリンホールディングス
  • ・人生100年時代の健康問題に取り組む ファンケル
  • ・世の中に貢献する中で商売を広げていく ヤマト運輸
  • ・社会課題を解決する金融モデルは、懐かしい過去に学ぶべき 吉澤保幸 場所文化フォーラム名誉理事

[Special Interview]

 芳井敬一(大和ハウス工業社長)

 創業のDNAに立ち戻り、オーナーの教えを伝承・実践

[NEWS REPORT]

◆史上最高益でも原価低減 豊田章男の「原点回帰」

◆成長戦略再考を迫られた富士通の苦境

◆市場規模はバブル前に逆戻り 規模より知恵を問われるビール商戦

◆7兆円M&Aを仕掛けた武田薬品の野望とリスク

[特集2]

 オフィス革命 仕事場を変える、働き方が変わる

ページ上部へ戻る