テクノロジー

イラスト/坂木浩子

イラスト/坂木浩子

 生命に向き合う科学技術には、多様なパターンがある。iPS細胞に続いて万能細胞の開発が話題になっている。今後さらなる手法の改善や検証が行われることになると思うが、生命に対する科学技術へのアプローチが、ある段階を超えたのは間違いない。

 一方、水産総合研究センターがニホンウナギを稚魚のシラスウナギまで成長させることに成功したように、生物の育成環境の創生に関する技術開発研究も重要な研究だ。ニホンウナギの仔魚の管理は大変難しいもののようだが、大型水槽の連結、殺菌した海水のかけ流し、水流による稚魚の移動等の技術開発で、仔魚を水槽内の殺菌から守っている。このような技術は、一見作業の工夫をしただけのように映るかもしれないが、生態系への深い洞察なしには果たし得ない科学技術の成果であり、海洋食物資源の枯渇が懸念されている中、注目される技術開発である。近畿大学の「クロマグロの完全養殖」が、「2013年日経優秀製品・サービス賞 日経産業新聞創刊40周年記念特別賞」を受賞したのも、その技術開発の難しさを評価されてのことだ。

 また、放射線医学総合研究所では、PET(陽電子放射断層撮影)を使って、アルツハイマー病の進行度を検査したり、重粒子を用いてこれまで治療できなかったがんを治療したりするなど、放射線の医学分野への活用研究も進んでいる。医学の分野は、薬とメスという手段からさらに科学技術の適用範囲が広がろうとしている。ここでも、科学技術の活用の場として、生命というフロンティアが広がる。高齢化社会を乗り切るためには、この分野でも新たな科学技術の開発が必要だろう。

 生命という未知の海に漕ぎ出す船が無事に帰ってくるためには、生命という未知の海への理解が重要だ。遺伝子・細胞レベルの技術開発では、生命倫理の問題が頭を過る。しかし、考えてみれば、アンチエージングの概念でも、既に老化という生命の宿命に抗うということには、間違いない。昔の人々は、海の先は大きな滝となっており、進んだ船は滝壺に落ちると思っていた。新たな生命という未知の海では、このことが杞憂であることを強く願っている。無事に港に帰還するためには、人間を見つめ、人が集団となった社会を見つめ、そして人類が経てきた歴史から学び、科学技術という船をしっかりコントロールしていかなくてはなるまい。

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