テクノロジー

イラスト/坂木浩子

イラスト/坂木浩子

 中曽根康弘元首相に続いて小泉純一郎元首相も自然エネルギー派に転じた。原子力発電に固執するよりも新エネルギー技術や省エネルギー技術に打って出るほうが日本の将来に有利であると現政権に迫っている。

 ただちに脱原発すれば日本としては、当面の間、石油やガスの輸入が増え、国富が年2兆〜3兆円程度流出する。また、再生可能エネルギーへの投資もより急速に増やす必要がある。省エネも加速せねばならない。相当な覚悟が必要だ。それに国民は耐えられないだろう。経団連や自民党の見方である。

 これに対して小泉氏は、いや、原発を続けるほうがもっと覚悟が必要だとして、産業界の人たちを連れて、脱原発を決めて再生エネルギーに賭けようと決めたドイツと、原発をむしろ増やしても隣国へのエネルギー依存を避けようとするフィンランド両国の覚悟のほどを比較対照して見に行ったのである。

 両国は面積が日本より少し小さい程度、人口は日本の6割と1割程度である。フィンランドは電力の25%を3基の原子炉で賄うが、電力の15%を輸入する。石油・ガスもすべてロシアに頼っている。過去に受けた侵略の歴史から、エネルギー自立を最優先する。原発を6割まで増やし、残り4割を再生可能エネルギーで賄う計画だ。

 このためフィンランドは使用済み核燃料を100年分埋めたてるトンネルを世界遺産の港町ラウマ近くの島オンカロに決め、海水面下420㍍のトンネル中に1万本のピットを掘り始めた。トンネルの底でも海水そのものは漏れていないので、今後1万年以上は海への漏出問題はなさそうだとしている。

 小泉氏の半年前に私たちが訪問した時、「日本では割れ目のない岩石で囲まれる径5㍍、深さ10㍍のピットを掘れるだろうか」とオンカロの地質学者は訝っていた。それも数万本である。

 この点で、小泉氏は日本でのこれ以上の核廃棄物増加は処理不可能と判断したと思われる。これに対して自民党や経済界は「即時撤退は代替エネルギーの準備ができない」としている。

 原発が実質上停止してほぼ3年。実は日本の失業率はこの間少しずつ改善し、4%を切るところまで来た。あと1%で好景気時の指標になる。好景気になることと、国富の損失との間には負の相関があった。

 景気と国富のどちらを取るのか、この「負の相関」が論議を呼びそうだ。

 

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