テクノロジー

イラスト/坂木浩子

イラスト/坂木浩子

 東日本大震災から間もなく3年。原発を稼働しないと日本経済はダメになると言われてきた。この3年、若者の就職率は徐々に向上し、特にこの1年の株高は世界でも突出している。なぜ、年商4兆円ほどの原発の稼働が止まっていても景気が良くなるのか。

 製造業は国際商品を作る。円高になると製造業の活動が不利になり、多くが海外に製造拠点を移し、国内雇用が減った。これがバブル崩壊以降の「不景気」感の源だ。それでも生産性向上で貿易黒字はリーマンショックまで25年ずっと年約10兆円が続いた。「国富」はずっと築かれて来た。毎年の貿易黒字はそのまま海外に投資されてきた。

 海外投資は子会社の進出やM&A、外国債の購入に充てられた。対外所得収支の黒字が出るようになり、2005年には貿易黒字を超え、今では経常収支の大半を占める。それ以前は円為替レートがほぼ貿易収支黒字の幅と連動し、貿易黒字は結果的に年10兆円付近に保たれていた。

 しかし、08年以降リーマンショックと東日本大震災が相次ぎ、輸出が急減して30年ぶりの貿易赤字になった。しかし、それでも円は下がらなかった。所得収支黒字の方が大きく、両者を含む経常収支は大きな黒字のままだからだ。経常収支の黒字が「国富」を増やす。

 輸出はすぐには回復しなかったが、復興の努力は内需を旺盛にし、雇用が増えた。さらに、本年に入って安倍政権下で大幅な金融緩和策が開始され、円が2割ほど下がった。製造業にとっては国内で製造できる環境が戻ってきた。必要条件は旺盛な内需と円安の継続である。しかしながら、今後、輸出が増えると、また円高圧力が強まる。大きな所得収支黒字があるからだ。輸出が増えても、円高を避ける唯一の方法は輸入も増やして、貿易黒字を抑えることである。

 世界最大の対外純資産蓄積は巨大な経常収支黒字を毎年生みだし、円高要因となって製造業をこの国から海外へ移転させるもととなっている。困るのは税収が減る政府と雇用を失う国民である。これが不景気だ。企業は国内でも国外でも活躍しやすい場所を選ぶ。「国富」というのは経常収支の黒字である。国富と景気のどちらを選ぶのかが重要である。

 賢い輸入は何があるだろう。災害に強い国作り、スマートなエネルギーグリッドへの転換、若者の海外での教育など、日本の未来を作る工夫が必要だ。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る