国際

タイのビジネス界で存在感を示す日本

 海外からタイへの投資は、世界の中でも日本が圧倒的第一位だ。タイと日本の間ではEPA(経済連携協定)を結んでいるが、商工会議所としてはタイにおけるビジネスと投資環境を改善していく試みを続けている。

 最近では、日本からの投資金額と案件数はわずかだが減少傾向にある。1件当たりの投資額も、1億バーツ(約3億2千万円)程度の少額のものが全体の60%を占めるようになり、中身が変わってきている。とはいえ、現在投資している企業がタイから出ていくケースは少ない。多くの企業はタイでの投資拡大を目指している。

 以前は日本企業から政治の不安定を何とかしてほしいという要望が強かったが、今は人材確保や労務の件での悩みが増えている。

 タイの失業率は低く、労働力の確保が非常に困難になってきている。熟練労働者や中間管理職層、例えば日本語ができたり、日本企業の生産プロセスを理解したりしている人材はひっぱりダコで、奪い合いが起きている状況だ。日本と違ってジョブホッピングが盛んなので、ロイヤリティの高い従業員をどう確保するかという問題もある。

タイの状況変化に応じたビジネスを構築する必要性

 投資の中身が変わってきた背景として、既にタイへの進出が終わった大手製造業に代わって、周辺のサービス産業の進出が増えていることが挙げられる。自動車以外にも、小売りや食料品といった分野の企業進出が激しい。

 これらの事業者は、タイの現地資本を50%以上にしなければならないことが外国人事業法で決められているが、こうした部分の規制緩和についても要望が強い。AECの誕生によって、ASEAN各国の関税障壁は取り除かれるが、国内法など非関税障壁の規制緩和がどれだけ進むのかにも注目したい。

 BOIによる投資奨励策の変更は、発表された当初は非常に心配された。外資系企業にとっては、これまで行ってきた投資が無駄になる恐れがあるからだ。ASEANの中心国になったタイが、付加価値の高い産業を育成する狙いは理解できるが、あまりにも急に変えられるのは困るので徐々に進めてほしいと要望した。

 まず、われわれとしては、既存の投資の恩典については既存の法律で認めてほしいと主張してきた。最終的に、BOIに既存の投資についてチェックしてもらった結果、恩典の対象から排除されるものはほとんどなくなった。

 これ以外にも、R&D投資を行いやすくする措置を取っていただくことなどで、商工会議所メンバーの納得が得られた。

 今までやってきたことの繰り返しでは、今後タイで成功するとは思えない。労働者の賃金上昇と労働者不足の問題、競争の状況、新たな投資奨励策の恩典の内容などを考慮しながら、それらに沿った格好でビジネスを構築することが必要だ。そして、タイだけでなくASEAN全体とのコネクティビティも考えなければならない。タイ周辺国との間の関税障壁や非関税障壁がどれだけ下がるかという点も注視すべきポイントだ。 (談)

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る