国際

(1)日本が協力し15年6月開業目指すティラワ経済特区

東京ドーム500個分の広さ

 日本とミャンマーの両国が共同で同国に計画している大規模な工業団地「ティラワ経済特区」の起工式が昨年11月30日に行われ、開業に向け動き出した。第1期の造成工事は2015年6月に完了する予定で、早ければほぼ同時期に一部のメーカーの工場が稼働する。ミャンマー政府が計画している経済特区は3カ所で、ティラワが最初にスタートする。これを契機に、「アジア最後のフロンティア」として注目を集めるミャンマーへの日本のメーカーの進出は一気に加速しそうだ。

 ミャンマーには、電力や下水施設などインフラが完備している工業団地はヤンゴン近郊にあるミンガラドン工業団地だけだ。同工業団地は満杯状態で、入居したくても入居できない。このほか、ヤンゴン近郊には工業団地が20カ所弱あるが、インフラが不十分だ。このため、ミャンマー政府はティラワ、ダウェイ、チャオピューの3つの経済特区をつくる計画を打ち出した。3カ所の経済特区に外資企業を誘致して雇用拡大を図るのが狙いだ。

 ティラワは日本、ダウェイはタイ、チャオピューは中国がそれぞれ協力して開発する予定。ダウェイ経済特区はタイの首都バンコクから西方約370キロの場所に開発する計画だ。チャオピュー経済特区はミャンマー北部の海に面したところに開発される。

 ミャンマーと日本が共同開発するティラワ経済特区はミャンマーの最大都市ヤンゴン市から南東に約23キロの場所にあり、ティラワ港に隣接している。ヤンゴン中心街から車では約1時間だ。総面積は約2400ヘクタールで、東京ドーム約500個分の広さだ。そこに、工場が入居する区域や商業区域、住宅区域などを開発する。早期開発区域は396ヘクタールで、そのうち第1期の開発は189ヘクタール、第2期は138ヘクタール、第3期は69ヘクタールとなっている。早期開発の総事業費は約170億円。そこに入居する企業は免税措置など優遇策が受けられる。

 

大手商社3社が出資

 共同開発会社「ミャンマー・ジャパン・ティラワ・ディベロップメント」(資本金1億ドル)はミャンマー側が51%(ミャンマー政府10%、投資会社41%)、日本側が49%出資。日本側は三菱商事、丸紅、住友商事の大手商社3社が出資しているほか、大手銀行や国際協力機構(JICA)も出資する方向で検討している。

 早期開発区域内には下水処理場や浄水場、雨水・排水調整水路、送水管、道路、街路灯などを整備する。また、日本政府は200億円の円借款をミャンマーに供与して、周辺のインフラ整備を支援する。具体的には50メガワット規模の発電設備やガスパイプライン、変電所、高圧送電線、配電線、新規の港湾などだ。さらに、安倍晋三首相が昨年12月にミャンマーのテイン・セイン大統領に表明した630億円の円借款の一部がヤンゴンからティラワ経済特区までの道路拡張などに充てられる。

 第1期の開発地には自動車メーカーのスズキが入居することは確実だ。

 安倍首相が13年5月にミャンマーを訪問した時に、日本企業の会長や社長ら約40人も同行、その中にスズキの鈴木修社長もいた。日本のテレビ局がティラワ経済特区を視察した安倍首相を映していたが、首相の隣に鈴木社長の姿もあった。ミャンマーのテイン・セイン大統領は作年12月に東京で行われた日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会談に出席するため来日。日本に滞在中、スズキの本社がある静岡県浜松市まで足を運び、同社の工場などを視察した。こうした状況から見て、スズキがティラワ経済特区に本格的な工場を新設することは間違いない。

 ティラワ経済特区には自動車関連企業のほか、縫製メーカーや靴メーカー、機械・電子部品メーカー、食品(乳製品や即席めんなど)メーカー、飲料メーカー、電機・電子メーカー、スーパーなども進出しそうだ。

 

総選挙前に実績をアピール?

 問題は第1期開発区域の造成が予定どおり完了して、入居する企業が15年6月頃から工場を稼働させられるかどうかだ。ミャンマー政府は同月頃からの操業を期待している。同国では15年後半に総選挙が予定されており、テイン・セイン大統領はその前にティラワ経済特区の第1期開発区域の開業にこぎ着け、実績をアピールしたいようだ。

 しかし、あと約1年半しかない。ミャンマーは雨季が長いだけに、電力や下水施設などインフラ整備が計画どおり進むかどうか予断を許さない。また、いつ満杯になるかだ。日本側関係者は「できるだけ早く、日本企業に入居してもらい、満杯にさせたい」と語っている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)が今年1月中旬に、東京と大阪でティラワ経済特区の進ちょく状況や今後の開発スケジュール、受け入れ態勢、入居企業の恩典などの説明会を開催、3月にはティラワ経済特区視察ミッションの派遣も計画している。視察を希望する企業がどの程度あるのか、それによって、第1期開発区域に入居する企業数を予測できそうだ。

 また、ティラワ経済特区に入居する企業がワーカーを計画どおり集めることができるのだろうか。同特区周辺には現在、ほとんど人が住んでいないからだ。このため、進出する企業はバスなどを利用して、近隣の町村からワーカーに通勤してもらうか、または寮を設けるかのいずれかの方法でワーカーを確保するものとみられる。工場で働いた経験のない人が多いことから、ワーカーに対する教育や技術指導なども必要になる。そうした課題を1年余で果たしてできるのか。いずれにしても残された時間は少ない。

(アジアジャーナリスト/山川裕隆)

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