マネジメント

筆者プロフィール

松嶋洋(まつしま・よう) 元国税調査官・税理士。2002年東京大学卒業後、金融機関勤務を経て東京国税局に入局。07年退官後は税理士として活動する傍ら、国税調査官の経験を生かし、税務調査対策のコンサルタントや執筆活動も行う。

 

 税務調査の厳しさが納税者や地域によって異なることは、「課税の公平」という税金の大前提からはあってはならないことですが、実際のところ、その厳しさは納税者や地域によって異なります。納税者の観点から言えば、会社規模などによる差があり、地域差という観点から言えば、都心よりも原則として地方のほうが厳しい、と言われています。

税務調査の注意点①―会社規模

 会社規模による差として押さえていただきたいのは、資本金1億円という基準です。1億円以上となると、原則として税務署ではなく、その上位組織である国税局が税務調査を実施することになります。言うまでもなく、税務署よりも国税局のほうが税務調査官の能力やマンパワーに優れていますので、その分税務調査は厳しくなります。

 国税局の調査となると、その厳しさだけではなく、税務調査の争点も変わることが通例です。法律上、何ら見返りのない支出は「寄付金」として、経費となる金額が制限されますので、税務署が行う税務調査においては経費を制限するために、幅広い支出を「寄付金」にしようとします。

 半面、国税局の税務調査においては、「寄附金」とすべき支出であっても、とにかく「交際費」にしようとします。これは、「寄付金」の経費の制限が資本金と会社の所得金額によって決まるため、国税局が税務調査を担当する大きな会社では、おのずと経費とされる金額が大きくなり、税金が取れなくなってしまうからです。

 一方、「交際費」は、資本金が1億円を超える会社についてはその全額が経費になりませんので、国税局の税務調査にとっては都合がいいのです。税務署が担当する会社の資本金は基本的には1億円未満ですので、「交際費」は一定の金額までは原則として経費とされますから、計上した経費を「交際費」としても、税務調査官にうまみがありません。このため、税務署が行う税務調査において「交際費」とされることは多くありません。

 会社の規模が変わっても、適用される法律は同じですから、税務署が担当する会社と国税局が担当する会社で、法律の解釈が異なる、といったことは許されません。しかし、税金を取りたいという税務調査官の感覚によって、適用される法律の解釈は大きく異なってしまうのが現実です。

税務調査注意点②―地域差

 次に、地域差ですが、地方の方が都心に比べて、会社の数も法人税の税収も少ないですから、厳しい税務調査を実施しなければ、税金を追徴することが難しい、という事情があります。このため、東京の会社の税務調査では考えられないような、少額で軽微な問題点に対しても、地方の会社に対しては厳しい追及が行われる傾向があります。

 その他、地方とは言い難いですが、「怒声を発し、一部事実と異なる供述を引き出した」という、違法としか言いようのない税務調査を本当に実施した大阪国税局は、ずば抜けて税務調査が厳しいといわれています。事実、現職時代の筆者の経験を申しますと、大阪国税局は税務行政をリードしている、といった自覚が強いところから、「大阪国税庁」と揶揄されていました。このため、大阪国税局管内の会社は税務調査のリスクが極めて大きいのです。

 言うまでもなく、税務行政も行政である以上、どの会社も公平に取り扱うべきなので、地域差によって税務調査の厳しさが異なる、というのは許されるべきではありません。日本の税制は法律に則っていると言われるものの、それを担保するはずの税務調査によって捻じ曲げられているのが正直なところなのです。

 だからこそ、税務調査対策には、法律に書いていない税務署の内情や税務調査官の事情を押さえておく必要があるのです。

 本連載のように、近年はOB税理士を中心に、このあたりの情報についてもかなり公開されていますので、調べてみてください。本来は法律だけですべて解決すべき、というのがあるべき税務調査の姿なのですが……。

 

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