マネジメント

 税務調査の厳しさが納税者や地域によって異なることは、「課税の公平」という税金の大前提からはあってはならないことですが、実際のところ、その厳しさは納税者や地域によって異なります。納税者の観点から言えば、会社規模などによる差があり、地域差という観点から言えば、都心よりも原則として地方のほうが厳しい、と言われています。

 会社規模による差として押さえていただきたいのは、資本金1億円という基準です。1億円以上となると、原則として税務署ではなく、その上位組織である国税局が税務調査を実施することになります。言うまでもなく、税務署よりも国税局のほうが税務調査官の能力やマンパワーに優れていますので、その分税務調査は厳しくなります。

 国税局の調査となると、その厳しさだけではなく、税務調査の争点も変わることが通例です。法律上、何ら見返りのない支出は「寄付金」として、経費となる金額が制限されますので、税務署が行う税務調査においては経費を制限するために、幅広い支出を「寄付金」にしようとします。半面、国税局の税務調査においては、「寄附金」とすべき支出であっても、とにかく「交際費」にしようとします。これは、「寄付金」の経費の制限が資本金と会社の所得金額によって決まるため、国税局が税務調査を担当する大きな会社では、おのずと経費とされる金額が大きくなり、税金が取れなくなってしまうからです。

 一方、「交際費」は、資本金が1億円を超える会社についてはその全額が経費になりませんので、国税局の税務調査にとっては都合がいいのです。税務署が担当する会社の資本金は基本的には1億円未満ですので、「交際費」は一定の金額までは原則として経費とされますから、計上した経費を「交際費」としても、税務調査官にうまみがありません。このため、税務署が行う税務調査において「交際費」とされることは多くありません。

 会社の規模が変わっても、適用される法律は同じですから、税務署が担当する会社と国税局が担当する会社で、法律の解釈が異なる、といったことは許されません。しかし、税金を取りたいという税務調査官の感覚によって、適用される法律の解釈は大きく異なってしまうのが現実です。

 次に、地域差ですが、地方の方が都心に比べて、会社の数も法人税の税収も少ないですから、厳しい税務調査を実施しなければ、税金を追徴することが難しい、という事情があります。このため、東京の会社の税務調査では考えられないような、少額で軽微な問題点に対しても、地方の会社に対しては厳しい追及が行われる傾向があります。

 その他、地方とは言い難いですが、「怒声を発し、一部事実と異なる供述を引き出した」という、違法としか言いようのない税務調査を本当に実施した大阪国税局は、ずば抜けて税務調査が厳しいといわれています。事実、現職時代の筆者の経験を申しますと、大阪国税局は税務行政をリードしている、といった自覚が強いところから、「大阪国税庁」と揶揄されていました。このため、大阪国税局管内の会社は税務調査のリスクが極めて大きいのです。

 言うまでもなく、税務行政も行政である以上、どの会社も公平に取り扱うべきなので、地域差によって税務調査の厳しさが異なる、というのは許されるべきではありません。日本の税制は法律に則っていると言われるものの、それを担保するはずの税務調査によって捻じ曲げられているのが正直なところなのです。

 だからこそ、税務調査対策には、法律に書いていない税務署の内情や税務調査官の事情を押さえておく必要があるのです。本連載のように、近年はOB税理士を中心に、このあたりの情報についてもかなり公開されていますので、調べてみてください。本来は法律だけですべて解決すべき、というのがあるべき税務調査の姿なのですが……。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メーン銀行との付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

金利引き上げの口実とその対処法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

所得税の節税ポイント

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

固定資産税の取り戻し方

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

部下の感情とどうつきあうか

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

“将来有望”な社員の育て方

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年7月号
[特集]
社会課題で儲ける!

  • ・総論 グローバリズムとどう折り合いをつけるのか
  • ・なぜ、よしもとは社会課題と向き合うのか 大﨑 洋(吉本興業共同代表取締役CEO)
  • ・茶葉から茶殻までバリューチェーン全体で価値を創造する 笹谷秀光(伊藤園顧問)
  • ・持続可能な経営は、持続可能な地域が支えている キリンホールディングス
  • ・人生100年時代の健康問題に取り組む ファンケル
  • ・世の中に貢献する中で商売を広げていく ヤマト運輸
  • ・社会課題を解決する金融モデルは、懐かしい過去に学ぶべき 吉澤保幸 場所文化フォーラム名誉理事

[Special Interview]

 芳井敬一(大和ハウス工業社長)

 創業のDNAに立ち戻り、オーナーの教えを伝承・実践

[NEWS REPORT]

◆史上最高益でも原価低減 豊田章男の「原点回帰」

◆成長戦略再考を迫られた富士通の苦境

◆市場規模はバブル前に逆戻り 規模より知恵を問われるビール商戦

◆7兆円M&Aを仕掛けた武田薬品の野望とリスク

[特集2]

 オフィス革命 仕事場を変える、働き方が変わる

ページ上部へ戻る