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タイを拠点に、新たにカンボジアやラオスに分工場を設ける日本企業が増加している。

タイでは人件費が高騰し、ワーカーを確保するのが厳しくなっている上、洪水リスクなどもあるため、同国での一極集中を避けて、隣国に工場を分散している。

こうしたタイプラスワンの動きは今後、加速しそうだ。

(アジアジャーナリスト/山川 裕隆)

 

賃金上昇とワーカーの確保難

 タイでは最低賃金が上昇しており、2013年1月からは全国一律日額300バーツとなった。日本円で日額約900円、月額では約2万7千円だ。これはあくまでも最低賃金であって、月額4万円台や5万円台の企業もある。

 タイの失業率は1%を切っており、バンコクなど都市部ではワーカーの確保は容易ではない。特に、衣料品や靴などを生産する労働集約型企業はワーカー確保に苦労しており、カンボジア人やラオス人、ミャンマー人などを雇って、何とか工場を操業しているメーカーもある。また、自動車関連メーカーの中にはロボットを導入したり、工場の人員を削減したりする動きも出始めている。

 11年秋にはタイ中部地域で大洪水が発生し、ホンダなど日本企業は大きな被害を受けた。また、13年も東部地域で洪水があり、ワーカーが工場に出勤できず、数日間、工場の操業を停止した日系企業もあった。タイに進出する企業は洪水リスクも念頭に入れ、適切な場所を選ぶ必要がある。

 さらに、13年12月からは、反政府勢力がタクシン元首相に対する政府の対応を不満として、バンコクなどで大規模なデモなどを行っている。今年2月2日に総選挙が行われる予定だが、事態収拾の見通しは立っていない。

 このようにタイでは賃金の大幅上昇、ワーカーの確保難、洪水リスク、政治リスクがあるため、同国に進出している日本企業の中にはカンボジアやラオスに工場を分散する動きが活発になっている。カンボジアやラオスの賃金はタイの約3分の1と安い上、タイなどの工場からカンボジアやラオスの工場に人材を派遣して、ワーカーの研修ができるのがメリットだ。また、タイ政府が労働集約型企業ではなく、高度技術型企業の誘致を呼び掛けていることも、労働集約型企業の隣国への工場分散に拍車を掛けているようだ。

 カンボジアでは小型モーター製造のミネベアが11年12月に、首都プノンペン郊外にあるプノンペン経済特区で同モーターの本格生産を開始した。同経済特区はプノンペン中心部から西へ24㌔の場所にある。同社はタイ、マレーシア、中国からモーターの部品を輸入し、カンボジアで組み立て、タイに輸出している。ワーカーは現在、3千人を超えており、5千人まで増員する計画だ。カンボジアのフン・セン首相はミネベアが精密・電気機器メーカーで最初に同国に進出したことから、最大のサポートを約束したそうだ。同社はミャンマーやラオス、バングラデシュ、カンボジアの4カ国を検討したが、消却法でカンボジアに決めた。

 ミネベアのカンボジア進出をきっかけに、タイに工場がある住友電装や日本電産、矢崎総業などもカンボジアに工場を設けた。工場は住友電装がミネベアと同じプノンペン経済特区に、日本電産と矢崎総業はタイ国境沿いに建設。住友電装と矢崎総業は自動車用のワイヤーハーネスを製造している。日本電産はハードディスク駆動装置(HDD)用モーターの関連製品を生産している。同社はタイの工場が11年の洪水で浸水し、生産活動が影響を受けたことから、製造拠点をカンボジアに分散したという。

 

進出しやすい条件が整う

 大手自動車部品メーカーのデンソーもプノンペン経済特区で、昨年7月から二輪車用部品工場を稼働させた。同社はタイプラスワンとしてカンボジアを選んだそうだ。

 その理由として①労務費を低減できる②タイなどで使っている中古の機械を活用できる③タイ人がカンボジア人を研修できることを挙げている。タイ人が教育しているため、カンボジア工場には日本人の出向者はいないという。

 現在、使用している工場はレンタルで、コスト低減を図っている。カンボジアでは識字率が低いため、デンソーは現地のワーカーに、クメール語や英語、算数の教育も行っている。

 ラオスにも分工場を設ける動きが出ている。ニコンは同国に進出し、13年9月からデジタル一眼レフカメラの製造工程の一部を移管した。

 同社は11年のタイ洪水で大きな被害を受けたことから、ラオスに工場を分散した。このほか、トヨタ紡織が自動車用シートカバーを、自動車部品製造の旭テック(静岡県菊川市)がアルミダイカスト部品をそれぞれ製造する工場をラオスに設けることを決定、今年中の稼働を目指している。両社とも、ラオス工場をタイの分工場と位置付け、ラオスで生産した製品をタイに輸出する計画だ。

 ラオスはタイに電力を供給していることからも分かるように電力が豊富な国であり、法人税は最長10年間免除されるというメリットもある。さらに、タイ語とラオス語は似ているため、タイ人がラオス人を教育できる。このように、カンボジアやラオスはタイに進出している日本メーカーにとって、利点があるため、今後さらに、両国に工場を分散する動きは加速しそうだ。

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