国際

 日本企業の成長戦略の1つに新興国市場の成長の取り込みがある。特に社会インフラ関連ビジネスは、対企業や対政府相手となるだけに、ビジネスの波及効果は大きく、大きな成長が期待できる。実際にASEAN諸国では、経済の成長に伴い、社会インフラの高度化が進んでおり、ビジネスチャンスが拡大している。これを受けて、NECはASEAN地域でのインフラソリューションの展開に積極的だ。

社会インフラ事業でASEANへのコミットメントを深めるNEC

 NECは2013年度から開始した中期経営計画において、社会ソリューション事業への注力と、アジアへの注力、現地主導型ビジネスの推進を掲げており、海外売上比率25%の実現を目指している。このため、社会インフラ高度化需要の旺盛なアジアへ最注力する方針だ。

 NECとしては、安全・安心な社会を支える高機能・高性能なセンシング、ビッグデータによる予知・予兆分析、ネットワーク、バイオメトリクス照合などの技術ノウハウを有する強みを展開。ASEAN諸国において、セーフティー、エネルギーなどの社会インフラ分野で積極的に事業拡大を進めていく。

 遠藤信博・NEC社長は次のように語る。

「新興国は先進国よりも高度な社会インフラの重要性を認識している。保守要員などのマンパワーは不足しており、効率的な良いインフラを入れたいというニーズが高い。その意味で、NECにとって、ASEANは重要な戦略地域になる」

 14年1月には、企業向け基幹業務システム大手の独SAPとクラウドサービスで協業を発表。インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムの6カ国向けに、税制度や商慣習など各国固有の情報を反映させたシステムを開発し、現地に進出する日系企業や現地企業に販売するという。

 この1年を振り返ってみても、NECはASEAN地域へのコミットメントを強めている。

 セーフティー事業については、シンガポールを戦略拠点と位置付けている。NECは12年末に国際刑事警察機構(インターポール)とサイバーセキュリティー対策で協業を発表するなど、セーフティー事業をグローバルで展開している。そのための新体系「Safer Cities」を確立し、世界共通のソリューションの提供を開始しているが、事業遂行にあたって、13年4月には「グローバルセーフティ事業部(GSD)」を設置。同社が本社以外で海外に事業部を置くのは初めてだという。これにより、現地主導型でセーフティー事業を推進していく。

 13年6月にはシンガポール内務省とシンガポール経済開発庁(EDB)による戦略的機関「セキュリティ産業プログラムオフィス(SSIPO)」のパブリックセーフティ分野の実証実験にも参画。インターポールが14年にシンガポールに新設する「インターポール・デジタル犯罪捜査支援センター」において、最先端のサイバーセキュリティー対策の共同開発も行う。

 さらにシンガポールでの拠点も拡充させている。13年9月には、NECとしては5地域目となる海外研究所として、シンガポールにNECラボラトリーズシンガポール(NLS)を開設した。シンガポールでは、政府機関や大学などが都市問題を解決するためのプロジェクトを立ち上げている。NLSはこうした政府機関、団体、企業と柔軟な共同研究体制を組み、NECのデータマイニング技術や画像・音声解析技術を用いて、問題解決のソリューションを開発する。特にセキュリティー、ビッグデータ、セーフティー、スマートエネルギーの4つの領域の開発を重点的に行っている。

NECはASEANで拡大する小売業市場にに向けた取り組みも強化

 また、小売業向けの展開も積極的だ。ASEAN諸国では経済発展に伴い小売業市場が拡大している一方、急速な店舗拡大に合わせた店舗オペレーションの効率化が課題となっている。

 これに対してNECは、日本で大手小売業向けに販売時点情報管理(POS)システムなどを手掛けてきた豊富なノウハウを移転。戦略立案や営業・技術支援、人材育成などの機能を持たせ、現地法人と連携しながら市場を開拓し、ASEAN地域での事業展開を強化する方針。

 13年5月にはマレーシアに「リテールビジネスサポートセンター(RBSC)」を設立。日系企業や現地資本の企業が展開するコンビニエンスストア(CVS)などの多店舗展開型小売業に対して、システムの企画・開発から保守・運用に至るサービスを現地主導で展開する。ハードウエアだけでなく、ソフトウエアやシステム開発、展開・保守までトータルソリューションを提供することで、多店舗展開型小売業の売り上げ拡大・業務効率化に貢献していく。

 加えて、サービス体制の充実も図る。RBSCや各現地法人の小売業向けソリューションに関する営業力や技術力を継続的強化するため、「Global Training Curriculum(GTC)」を開始。GTCでは、新規顧客アプローチ手法、販売チャネル管理、店舗・本部システム導入方法、製品概要など、営業、SE、保守要員に必要なスキルやノウハウを体系化したトレーニングコースを提供する。

 具体的なビジネス展開としては、マレーシアのハラリンク・ワールドワイド社にCVS向け本部・店舗システムを提供した。POSや商品管理、通信などの各機能を海外小売業向けにパッケージ化した「DCMスター・チェーンストア」などを活用してシステムを構築。3カ月という短期間でのシステム構築を実現した。ハラリンクはイスラム教の戒律に基づいた「ハラール」製品の販売店を展開しており、13年にCVS事業を始めた。今後3年間で300店舗の展開が目標で、現地子会社などを通じて新規出店に伴うシステム導入を支援する。

 NECとしては、こうした取り組みを通じて、成長市場での事業拡大を進めていく。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年8月号
[特集]
パナソニック新世紀

  • ・総論 家電事業でもB2Bでも根底に流れる「お役立ち」
  • ・樋口泰行(コネクティッドソリューションズ社社長)
  • ・B2Bに舵を切るパナソニック
  • ・パナソニックのDNA 家電事業の次の100年
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・パナソニックの家電を支えた“街の電気屋”の昨日・今日・明日
  • ・テスラ向け電池は量産へ 成長のカギ握る自動車事業
  • ・パナソニックとオリンピック・パラリンピック

[Special Interview]

 津賀一宏(パナソニック社長)

 変化し進化し続けることでパナソニックの未来を創る

[NEWS REPORT]

◆商品開発に続き環境対策で競い合うコンビニチェーン

◆サムスンを追撃できるか? ようやく船出する東芝メモリの前途

◆スバル・吉永泰之社長はなぜ「裸の王様」になったのか

◆「ニーハオトイレ」は遠い昔 中国を席巻するトイレ革命

[政知巡礼]

 木原誠二(衆議院議員)

 「政治が気合を持って、今のやり方を変えていく覚悟を」

ページ上部へ戻る