マネジメント

上司のパワハラを恐れるのは税務調査官も同じ

 前回、税務調査においては法令よりも人柄の問題が大きい、と解説しましたが、この点で踏まえておくべきことが、税務調査官が脅威を覚えるものについてです。税務調査官が恐れているもの、それは上司からのパワハラと審理担当のチェックの2つです。

 税務署においては、非常に多くのパワハラが見て見ぬ振りをされています。私の現職時代の経験を申し上げますと、精神的に病んだ同期職員は数知れず、ひどいときには出勤することすらできなくなる、というケースも散見しました。

 このようなパワハラが行われるのは、税務署の職員が基本的に職員気質だからです。税務調査にはマニュアルがあるとは言っても、やはり税務調査官がケースバイケースで判断しなければならない部分も大きく、結果として経験則が重要になってきます。こうなると、税務調査は職人芸のようになるわけで、職人となれば上下関係が厳格になることも致し方ないでしょう。厳格な職人の世界を考えていただければお分かりになるとおり、パワハラと職人の技術指導の境目は非常にあいまいですから、周囲のブロックも働きにくいのが現状であり、往々にしてパワハラが見過ごされています。

 その他、税務署の人事は1年に1回必ずありますので、どんな状況でも1年間我慢すれば解放される、という側面があります。パワハラを組織的に防止するとなれば事実関係を把握するなど非常に手間がかかりますから、ことを荒立てず1年間辛抱することが奨励されており、幹部職員もパワハラを看過する傾向があります。

 税務調査官もサラリーマンですから、上司を自分で選ぶことはできません。このため、異動の時期の税務調査官の関心事は次の上司がどんな人間か、ということです。仮に異動後の上司がパワハラを行うような人間であれば、非常に憂鬱になるものです。

 このように、税務署ではパワハラがかなり平然と行われるわけですが、パワハラを受けたことがある身から申し上げますと、このようなパワハラを行う上司に仕える税務調査官は、むしろ納税者の味方になりやすい、という側面があります。

 と言いますのも、このようなパワハラを行う上司は、税務調査で一生懸命実績を挙げても、些細なミスを取り上げて怒鳴ったり、ひどいときには事績を泥棒したりすることもあるからです。このため、このような上司のためにあえて一生懸命税務調査を行うよりも、できるだけ簡単に税務調査を終えたいと考えるのが人情でしょう。このため、税務調査の最中に、「上司はどのような方ですか?」と話題を向けると、上司への不満が大きい税務調査官であれば、いろいろとしゃべりだすと思います。

 仮に、このような税務調査官に遭遇すれば、上司への復命がやりやすいようにあえて協力をしてあげたり、復命の手間を掛けないよう、直接皆さま方がその上司と交渉します、と申し出たりすれば、有利な譲歩を得ることも不可能ではありません。

パワハラ以外に税務調査官が恐れるものとは?

 次に、審理担当のチェックですが、税務署において法令の適用に誤りがないかをチェックする担当者を審理といい、彼らは税務調査の結果についても厳しくチェックします。税務調査官には法令の知識がないので、審理担当の審査を受ける段階で、法令の適用誤りを指導されることも散見されます。

 こういうわけで、税務調査官は拙い法律知識に対し、審理担当者のプレッシャーを受けているわけです。この点を踏まえて、根拠が法律的に甘い税務調査官の指摘に対しては、「これで審理担当のチェックを通るの?」と開き直ってみてください。かなりドギマギすると思います。

 このように、目の前では強権的に見える税務調査官も、さまざまなプレッシャーを受けているからこそ、税務調査官も税務調査が怖いわけです。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
この夏飲みたい日本の酒

  • ・総論 量から質へ“こだわり”が求められる時代へ
  • ・埼玉・秩父から世界一へ イチローズモルトの奇跡
  • ・家庭でも酒場でもレモンサワーが飲まれる理由
  • ・幕末からよみがえった都心の酒蔵 東京港酒造
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・伊豆で愉しむ野趣なワインと夏の富士
  • ・トップが薦めるこの夏のビール

[Special Interview]

 宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)

 「トップの器以上に会社は大きくならない」

[NEWS REPORT]

◆ヨーロッパに続け! 動き始めた日本の再エネ事業

◆東芝のPC事業を買収し8年ぶりに参入するシャープの勝算

◆日産―ルノー経営統合問題に苦慮するカルロス・ゴーン

◆大阪がエンタメで仕掛けるインバウンドと夜の経済

働きがいのある会社を総力取材

 人材育成企業20

 企業の成長戦略をクローズアップ

ページ上部へ戻る