政治・経済

ナラ林で催す「工人まつり」2万人超す来場者が交流

  過疎化、高齢化に悩む福島県奥会津で、芸術文化を核にした町興しが粘り強く取り組まれている。売りは奥会津の魅力、狙いは交流人口の拡大である。編み組細工や漆器、木工などの生活工芸品づくりを町ぐるみで進める三島町は、職人技で生み出す工芸品で都市住民を誘客し、地域再生につなげようとしている。隣接する西会津町は廃校した中学校の木造校舎をアトリエに活用、内外の芸術家が集う国際芸術村づくりに励んでいる。

 磐越自動車道の会津坂下ICから国道252号を南西へ20分、只見川沿いの16の集落で構成する三島町は、面積の86%が森林で覆われる中山間地だ。高齢化率は45%を超え、一頃は7千人以上もあった人口が今や、1880人。過疎化の悩みは深く、町民の表情は厳しい。

 普段はひっそりとした同町で毎年6月、都市住民を惹き付ける催しが2日間、開かれる。「ふるさと会津工人まつり」である。会場は西方地区の生活工芸館前のナラ林。ここにテントを張り、町内外の職人(工人)が手仕事で生み出した工芸品を展示即売するのがまつりの趣旨だ。

 展示品は木工や陶磁器、漆器、皮革加工など多数並ぶ。だが、呼び物は何といっても自然素材を活用した会津編み組細工である。使われる素材は山野で採った山ブドウ、ヒロロ(かんすげ)、マタタビなどで、独自の技法で編んだり組んだりして仕上げたカバン、カゴ、小物雑貨はお洒落で、独特の気品が漂う。

 かつては町民が生活に必要な用具として雪の季節に作ってきたものだが、素材の肌ざわりや美しさを生かすデザインと手技が親から子へと受け継がれ、美的価値を備えた工芸品に昇華させた。2003年には国の伝統的工芸品に指定されたほど。

 始まった当初はわずか20ほどだった出展ブースが年々数を増し、13年度は172となった。過去に購入した編み組細工を持参して顧客同士で自慢し合ったり、店頭で工人と対話したりと交流の輪が広がる。11年度に1万8千人だったまつりの来場者は、「12年度が2万3千人、13年度が2万6千人に増えた」と地域政策課の小柴謙係長は、手応えを感じている様子だ。

経済波及効果は1億円 素材の確保は喫緊の課題

  町の発案で1986年に立ち上げた工人まつりは13年度で27回を重ね、県内外に名が知られる会津有数のイベントに成長した。来場者の3割は首都圏からのリピーターといわれ、周辺市町村に泊まり込んでまつりに参加するファンが多い。「宿泊代や食事代を含め、2日間で1億円以上のおカネが周辺に落ちる」(小柴係長)というから、経済波及効果も結構、大きい。

 同町には自然素材を使ってものづくりに励む工人が現在、100人以上もいる。これら工人をまとめ支援するため、奥会津三島編組品振興協議会を設立し、官民共同で奥会津のモノづくりへの理解を深めてもらう活動を繰り広げている。同時に、工芸品を普及させ、販売する体制整備も協議会の大きな仕事だ。

 その一環として、機会をとらえてはイベントを開催するよう心掛けている。例えば、工人まつりの期間中、町の中心部で開く「てわっさ(手技)の里まつり」がそれだ。地域住民が制作した絵画、写真、書などを軒下や玄関脇に飾って公開し、販売にも応じるという一種の街ナカ美術館運動だ。まつりに訪れた顧客をもてなす効果があり、町のイメージアップにもつながる。

 そして、3月には全国編み組工芸品展と三島町生活工芸品展を催し、10月には会津の編み組工芸品展を開いている。イベントを連発することで町の名を極力、露出し、都市住民を呼び込む契機にしようとの作戦だ。

 問題は工人の高齢化と素材の確保である。特に、山ブドウやマタタビは町内での採集が難しくなっており、その確保策は喫緊の課題と言える。

廃校舎に西会津国際芸術村 公募展、応募増えて188点も

  過疎の悩みが深いのは、新潟県と接する西会津町も同じだ。若者の流出と少子高齢化で人口が減り、最盛期に1万9千人もあった人口は今や、7300人余り。5校あった中学校は02年春に1校に統合され、小学校も5校から1校に集約された。

 そんな廃校舎に国際芸術村が開村したのが04年4月。運営するのは東京の画廊経営者、安藤壽美子さんが理事長を務めるNPO「西会津国際芸術村」である。廃校舎をアトリエに内外の芸術家が創作活動を競う「アーティスト・イン・レジデンス」が、安藤さんの考えだ。

 まず、招いたのがリトアニアの2人の画家と彫刻家。芸術家は廃校舎に1年間、滞在して作品を作りつつ、地域住民や近隣の小学生と交流するのがルールだ。町は年400万円の委託費をNPOに払い、その中から芸術家の招待費や生活費を賄う。

 招いた外国人芸術家は09年度まででポルトガル、ドイツ、ブルガリアなど6カ国、10人に及ぶ。それらの芸術家の作品が2階建ての木造校舎の教室や廊下に常時、展示されており、年間1200人ほどの観光客を迎え入れている。

 芸術村の運営方針は09年夏の町長選を境に軌道修正された。外国人芸術家の町費招待は中止し、自費による内外の芸術家を受け入れるというものだ。現在はオーストラリアや国内のアーティストが滞在している。

 とはいえ、芸術で町の活力を掘り起こそうとの目標は変えていない。今、力を入れるのが年1回開催の国際芸術村公募展だ。応募者は年々増え、8回目の13年度は応募点数が188点に上った。芸術家を目指す若者の優秀作品が木造校舎を飾り、県内外から多くの観光客を呼び込みたい――それが町民の期待だ。

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