政治・経済

 企業戦略論の大御所、マイケル・ポーター教授の講演会に行った。講演後、質問をしたかったが、司会者に当ててもらえず、議論することはできなかった。

 日本の競争力の復活の鍵がテーマだったのだが、私の疑問は、日本の競争力とは何かということだ。日本政府の効率性、日本政府の政策の質の向上ということなら分かる。一方、日本という場所に本社を置く企業の競争力ということでもよく分かる。しかし、ポーター教授の議論は、そしてその議論を当然のこととして受け止めていた多くの聴衆の考えは、日本の競争力に関して、企業はまあまあうまくやっているが、政府の効率性、政策が悪いから、日本の競争力が削がれている。だから、政府を改革し、政策を改善し、成長戦略を長期的視野で考えろ、というものであった。

 それなら、日本を主語にすることの意味はない。日本政府が悪いのだから、日本政府の改革案、政府の政策の改善案を考えれば済むのであって、企業戦略論の議論の出番はない。あるとすれば、企業の競争力を高めるための政策とは何かという視点で考えることである。

 ポーター教授はそんなことを考えていないかもしれないし、多くの人々は、そして読者の多くも、そうだよ、何を今さら議論しているのだ、ということだろう。しかし、私は、それと「日本の競争力」とは違うと考える。

 孤独な私が考えているのは、政府、企業、人々の有機的な関係である。国の競争力というのは論理的に考えていくとパーツに分かれる。それぞれのパーツを強化すればいいという話であって、企業にも問題はあるが、ほとんどは政府の問題で、政府を何とかしろ、ということになる。

 しかし、本当にそうだろうか。社会とは有機的であり、政府と企業と人々、その根底に何か、パーツには還元されない日本、というものが存在するのではないだろうか。それが文化であり、歴史であり、それを現在に体現しているのが社会である。

 だから、日本の競争力と言った時には、それは日本社会の力、と言い換えるべきであり、それを強化するためには、企業にとっての環境を整えることではなく、企業という箱を生み出す人々を社会の中で有機的に育てるということである。

 社会を考えずして経済はないのであり、望ましい社会を考えることがまず必要で、その中で、経済をその社会を実現するための手段としてとらえ、妥当な手段は何か議論すべきなのである。それは、政府の経済政策ではないのだ。

 
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