政治・経済

日本が抱える課題を一気に解決し再成長へと舵を切る起爆剤に

 2013年に日本中を明るくしたニュースのひとつは20年の東京オリンピック・パラリンピック招致決定だろう。7年後に国民が共有できる目標が設定されたことは明るい希望となる。2回目の東京オリンピックは経済効果だけでなく、今後の日本の行く末を決める可能性がある。その期待の一方で早速問題も起きている。

アベノミクスを後押しし日本の近未来を規定

物議を醸している新国立競技場 (C)日本スポーツ振興センター

物議を醸している新国立競技場 (C)日本スポーツ振興センター

 9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年の東京での夏季オリンピックおよびパラリンピック開催が決定した。東京への2回目の夏季オリンピック招致は、まず16年の開催を目指したが失敗。20年の招致活動は前回の反省に基づき、ノウハウをそのまま継続すると同時に、政界、財界、スポーツ界を中心に各界が連携し、極めて戦略的に展開した。この招致活動そのものが1つの成功体験として明るいニュースとなった。

 もちろんオリンピックには経済効果が期待されている。東京都の単純な積み上げ方式による試算では3兆円と言われているが、さまざまな波及効果を考えると、実際には13兆円とも20兆円とも言われている。

 特にインフラ整備と観光業への影響が大きい。インフラ整備については建設業で、改修される新国立競技場をはじめ競技施設建築の需要が大きい。また、関連施設が集中する臨海部の開発も進む。そして建設業だけでなく、その川上となる鉄鋼やセメント産業にも需要増が期待できる。

 また、観光業については、観戦目当ての訪日だけではなく、オリンピックを契機に東京および日本への注目が高まることから、海外からの観光客の増加が見込まれる。外国人対応の接客のほか、通訳・翻訳関連業界の需要も増加すると思われる。

 さらにオリンピックを機にスポーツへの関心が高まり、実際にスポーツを楽しむ愛好家も増えることが予想され、スポーツ用品メーカーなどへの影響も期待できる。

 7年後にオリンピックの開催が決まったことで、近未来に明確な目標が設定されたことも、今後の日本にとっては非常に有意義なことと言える。現在の日本が抱える問題には、数年をかけて取り組むべきものがあり、それらは7年後には解決しておくべき問題だからだ。経済効果が特に期待されているインフラ整備はアベノミクスの第二の矢(財政出動)を、観光業の需要増は第三の矢(成長戦略)をそれぞれ後押しする可能性がある。

 アベノミクスの第二の矢である財政出動に伴う国土強靭化については、東日本大震災への復興や社会インフラの老朽化対策が喫緊の課題だが、建設労働者不足をはじめ多くの問題を抱えている。ここに東京オリンピックのためのインフラ整備が加わることで、社会インフラ整備に向けた体制を抜本的に見直す必要が出てくる。このため、オリンピックを契機に一気に問題を解決できるかもしれない。

 アベノミクスの第三の矢である成長戦略については、観光業に限らず、さまざまな規制緩和を必要とし、実現までに長い時間を要するものが多い。これが、オリンピックを契機に一気に進む可能性がある。カジノ合法化についても、オリンピック目当ての訪日外国人への「おもてなし」の1つとして考えると実現しやすくなる。

 オリンピックを起爆剤として実現できる政策および経済的課題は多い。これらを解決できるかできないかで、将来の日本の在り方が変わってくる。オリンピックは日本の行く末を決める側面を持っている。

計画見直しや都知事の金銭問題で開催準備に物言い

 一方で、オリンピックの準備については早速問題が起きている。まずは国立競技場の改築が物議を醸している。

 現在の国立競技場は、64年の東京オリンピック開催時に建設されたもので、現在ではさまざまなスポーツの国際規格を満たしていない。このため改築が決まり、収容人員8万人、全天候型スタジアムを実現する開閉式の屋根などの条件を満たすスタジアムのコンペが行われ、イギリスの建築家のザハ・ハディド氏の改築案が採用された。

 ハディド氏のデザイン案は、IOC総会での最終プレゼンテーションでも紹介された。しかし、その斬新なデザインゆえに、絵画館などを含めた明治神宮外苑の周辺の景観を損なうとして、多くの建築家が異を唱え、さらに新国立競技場の建設費が明らかになると、その是非を問う声が高まっている。

 当初予定していた建設費は1338億円。しかし実際の見積もりでは、最大3千億円の試算が出た。このため、会場周辺の関連施設や立体通路を縮小する修正案が出され、1852億円に圧縮。それでも当初の1300億円を上回ることから、国が全額負担することになっていた建設費の一部を東京都に負担することを求めてきた。これには猪瀬直樹・東京都知事が難色を示しているが、国に押し切られると、東京都の予算配分も変わってきて、全体の計画が変更を余儀なくされる可能性がある。

 また、猪瀬都知事の徳洲会からの金銭借入問題が開催準備にも水を差す形となっている。目下の問題は、組織委員会の人事だ。開催都市は開催決定から5カ月以内に組織委員会を立ち上げることになっており、これを持って実質的にオリンピックの準備を開始する。遅くとも14年2月までには組織委員会が立ち上がる予定だが、会長人事が混沌としている。

 組織委員会の会長は開催都市の首長が務めることが多いため、猪瀬知事は就任に意欲を見せている。官邸サイドから招致に尽力した森喜朗氏を推す声が上がった際に、猪瀬知事は「人選の権限は東京都と日本オリンピック委員会(JOC)にある」と不快感を露わにした。森氏は19年のラグビーワールドカップの運営に注力するため、森氏の就任は現実的ではない。ただし、猪瀬知事もここに来て、金銭問題での追求が激しいため、会長人事は不透明な状況だ。会長が決まらなければ、スタートの切りようがない。

 オリンピックへの期待が高まる一方で、開催準備では最初から躓いた格好だ。

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