テクノロジー

ソフトバンクは世界戦略を本格展開 日本の携帯機器メーカーは淘汰

 2013年の携帯電話業界のビッグニュースは、ソフトバンクの米スプリント・ネクステル買収とNTTドコモのiPhone販売だろう。iPhoneを武器に成長したソフトバンクは世界進出を果たした。一方、ドコモはiPhoneを手に入れるまでの迷走が目立ち、日本の携帯機器メーカーの再編を促すことになった。

 

ソフトバンクが日本を飛び越え世界へ

「10年以内にNTTドコモを抜く」

 ソフトバンクの孫正義社長は2006年にボーダフォンジャパンを買収した時にこう宣言した。13年はそれが現実になった年だった。

 年度初めの段階で、13年度の営業利益が初めて1兆円の大台を超え、ドコモが見込んでいる8400億円を上回ることを示唆。13年度上期決算では、売上高、営業利益、純利益のすべての数値で初めてドコモを上回った。上期の決算会見において、「ついに一番になった」と孫社長は感慨深げに語った。

 ソフトバンクモバイル(SBM)の快進撃を支えたのは、言うまでもなく、08年から販売を開始した米アップルのスマートフォン「iPhone」だ。対するauは12年秋発売の「iPhone5」から、ドコモは13年秋発売の「iPhone5s」および「iPhone5c」から、iPhoneの販売を開始。発売前にはそれぞれ、SBMから他社への顧客流出が懸念されたが、結果的には、想定されたほどの顧客流出は見られず、SBMのiPhone独り勝ちの構図は変わっていない。

「iPhoneのオペレーションは容易ではなく、われわれにはiPhoneを5年間扱ってきた実績がある」とSBM副社長兼COOの宮内謙氏が語るように、これまでのノウハウが強みとなっているようだ。

 各キャリアが揃ってiPhoneを扱うようになり、今後はネットワークの品質が鍵となる。具体的にはiPhone5から対応している高速通信規格LTEへの取り組みが今後のシェアを左右すると思われる。LTEのつながりやすさということでは、現時点のプラチナバンドでLTEを展開するauが有利とされているが、SBMも来年4月からプラチナバンドを含む3つの周波数による「トリプルLTE」で対抗する予定で、当面は大きなシェアの変動はない模様だ。

 ソフトバンクとしては「国内No.1は通過点」と位置付けている。「No.1」を達成したもう1つの要因が、米通信会社スプリント・ネクステル社の買収だ。今回の買収により世界3位規模となった。7月に買収手続きを完了し、9月には米国シリコンバレーにオフィスを開設。世界戦略を本格的に開始した。

 米国市場は、スマートフォンおよびLTEが主流になるという点で日本市場との類似性が高いため、基本的には日本で培ったノウハウを米国でも導入する方針。「モバイルインターネット世界No.1」の目標を掲げ、当面は米市場首位のベライゾン・ワイヤレスと同2位のAT&Tを追撃する構えだ。

ドコモの迷走が日本の携帯機器メーカーに引導

 ソフトバンクの事業拡大の一方で、日本の携帯機器メーカーにとっては、ドコモに振り回された1年となった。

 iPhoneを提供するアップルはキャリアに販売ノルマを課しており、SBMやauはどうしてもiPhoneの販売に注力せざるをえない。このため、日本の携帯機器メーカーにとっては、iPhoneを扱っていなかったドコモこそファーストプライオリティーのキャリアであり、フラッグシップモデルをドコモに優先的に提供してきた。

 例えば、シャープは独自の液晶技術「IGZO」搭載スマートフォン「AQUOS PHONE ZETA」を12年末にドコモ向けに販売。また、ソニーは平井一夫社長の改革「One Sony」の象徴的な製品である「Xperia Z」の日本モデルを13年2月にドコモ向けに販売した。

 AQUOS PHONE ZETA、Xperia Zともにシャープとソニーの携帯電話事業の牽引役となり、それぞれのシェア回復に寄与したが、ドコモの業績を回復させるまでには至らなかった。

 そこでドコモが13年夏モデル販売で打ち出したのが、「ツートップ戦略」。これまでの総花的な販売展開を見直し、大幅な割引サービスを特定機種にのみ適用することで、1点突破を図ろうとした。このツートップに選ばれたのは、ソニーの「Xperia A」と韓国サムスン電子の「GALAXY S4」で、ツートップから漏れたメーカーはさらに苦戦を強いられた。結果的に、このツートップから漏れたことが引導を渡す形となり、NECとパナソニックは個人向けスマートフォン事業から撤退を決めた。

 ツートップ戦略では、サムスンのGALAXY S4の売り上げが想定したほど伸びなかったこともあり、13年冬〜14年春モデルでは早くもツートップ戦略を撤回。サムスンを外し、ソニー、シャープ、富士通の製品を「スリートップ」として注力することとなった。スリートップ戦略を進める一方で、ドコモはiPhone5s/cの販売を発表、9月に販売を開始した。ドコモにとっては、SBMやauへの対抗上、iPhoneの販売は数年来の懸案事項だったが、日本の携帯電話メーカーにとっては梯子を外された格好となった。

 10月になって、ドコモはソニーの「Xperia Z1」、シャープの「AQUOS PHONE ZETA」、富士通の「ARROWS NX」の3機種を「おすすめ機種」として販売したが、iPhone5s/c発売の後だけに、ドコモの迷走感は否めない。

 ソニーのXperiaシリーズはグローバルモデルであり、海外のキャリアにも採用されているが、シャープのAQUOS PHONEシリーズ、富士通のARROWSシリーズは日本市場向けのローカルモデル。最大のキャリアであったドコモの迷走を考えると、ローカルモデルだけの展開は厳しい。14年は日本の携帯機器メーカーの淘汰・再編がさらに進むだろう。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る