政治・経済

土建国家を復活させる重要性とは

 2013年9月7日。アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会において、20年のオリンピック、パラリンピックの東京開催が決定された。IOCのロゲ会長が「TOKYO-2020」の紙を示した瞬間、多くの日本国民が歓喜の叫びを上げたことだろう。

 筆者も歓喜の思いに浸ったが、1つ、深刻な懸念が頭をかすめたのも事実である。わが国の建設サービスの供給能力が大きく毀損してしまった現状で、東北の復興、インフラのメンテナンスや耐震化などの国土強靭化、そして東京五輪に向けたインフラ整備を同時並行的に進められるのか、という懸念である。

 国土交通省によると、12年4月から13年1月までの期間において、公共事業の落札業者が決まらない「入札不調」が、岩手県で15%、宮城県では38%に上っている。宮城県では、入札のおよそ4割が「落札者なし」という事態になってしまっているのだ。

 入札不調は中小規模の工事のほうが深刻だ。12年の1年間を通した被災三県発注の土木工事のうち、1億円未満の中小規模の事業が入札不調の約76・3%を占めている。特に、福島県では入札不調の90%超が1億円未満の中小規模である。

 わが国の建設業許可業者数は99年に60万社でピークを打った。その後は業者数が減る一方で、12年には47万社にまで減少してしまった。99年以降、何と10万社以上の業者が倒産、廃業してしまったのである。消滅した企業の多くは、中小規模の事業を請け負う中小企業だった。ゼネコンはいまだ健在だが、中小規模の事業者が姿を消し、被災地の入札不調に拍車を掛けている。

 建設サービス従事者も100万人以上少なくなり、存続している企業も、完全に人手不足状態に陥っている。人手確保のために、建設企業が賃金を引き上げれば、「工事量が増えても利益が確保できない」有り様だ。

 すなわち、現在の日本はもはや土建国家でも何でもないのである。結果的に、土木・建設サービスの供給能力が需要を満たせない状況に至っている。こんな有り様で、果たして東北の復興、国土強靭化、そして東京五輪という3つの巨大な需要を賄うことができるというのだろうか。

 最近、日本全体の失業率はアベノミクス効果で改善している。ところが、信じ難いことに建設サービス従事者は、5月から7月にかけて、3カ月連続で減少している。建設企業は失われた供給能力を取り戻すどころか、いまだに「失われつつある」というのが現実である。ならば、どうしたらいいのか?

土建国家復活に向けた技術面、制度面の施策とは

 解決策は日本の土建企業に、投資や雇用拡大により「人材」を育成してもらうしかない。とはいえ、土建企業はバブル崩壊後、特に橋本政権以降の公共投資削減と規制緩和(公共事業の一般競争入札化)により痛めつけられ、「需要」に対する信頼が失われている。多くの企業が、

「現在はたまたま需要が大きいが、各事業が終わればまたもや仕事不足に陥り、再度のリストラを迫られるのでは」

 と、疑っている限り、わが国の建設サービスの供給能力は復活しない。本問題の解決には、政府が技術的、法律的、制度的な手を打つ必要がある。具体的には、

○国土交通省が労務単価を改め、現場にきちんと適用する

○公共事業のB/C(費用便益分析)のB(便益)に、防災や経済成長などを加える

○公共事業に際し、工事現場所在地の都道府県内に本店がある地元業者との契約を促す(指名競争入札の復活と拡大)

○国土強靭化プロジェクト等で、複数年度予算を実現する

○独占禁止法を緩和する(「過度な談合取締」等を中止させる)

 などだ。政府が率先して建設企業の体力を強化し、設備や人材への投資拡大のインセンティブを向上させる施策を打たなければ、企業側の疑心暗鬼を解きほぐすことは不可能だろう。

土建国家の復活を促進するために大切な課題

 とはいえ、それ以上に大切な課題が1つある。この課題を達成しなければ、技術的に、法律的に、制度的に土建企業復活を促進しても、恐らく失敗に終わる。

 課題とは、国民が「築土構木(土木の語源)」や建設サービスに対する尊敬の念を取り戻すことだ。13年9月16日に台風18号が本州に上陸し、各地で多大な被害をもたらした。あのとき、真っ先に現場に駆け付け、被災者の救助のために尽力してくれたのは、地元の土建企業である。世界屈指の自然災害大国であるわが国では、土建企業の供給能力とは、まさに「国民の安全保障」と直結する問題なのである。政府や自治体に「予算」があったとしても、地元を知る土建企業が存在しなければ、自然災害の猛威に抗するすべはなく、国民の生命や安全に危険が及ぶ。

 日本国民は今こそ自国の国土的条件に基づき、土建企業に対する尊敬の念を取り戻さなければならない。いざというとき、自分たちの生命や安全を守ってくれるのが「誰なのか」を理解すれば、さして難しくはないはずだ。

 そして、今後の大手メディアで展開される公共事業批判論、土建批判論に対し、真っ向から反発する必要がある。朝日新聞などが「土建国家復活か!」などと印象操作の報道をしてきた際に、「国民の生命と安全を守るために、土建国家復活だ!」と堂々と返せる「空気」にならなければ、予定されている各プロジェクトは失敗に終わるだろう。

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