政治・経済

日本全体の景気回復に伴い、自動車産業を中心とする主要産業が集積する名古屋の経済も活気を取り戻している。しかし、地方自治の仕組みを変えれば、もっと潜在能力を発揮できると考えているのが河村たかし市長。同市長に今後の名古屋と中京圏について、展望を聞いた。(聞き手/本誌編集長・吉田浩)

 

河村たかし市長の首長①名古屋市は日本で最大の担税都市だ

 

—— 名古屋の景況感は。

河村 名古屋を含めた日本全体で貧富の格差などが指摘されていますが、全体的に景気は良いと思います。ただし、お金には2種類ある。税金とそれ以外のお金です。

 税金の部分でいうと、名古屋市は、110億円の減税をしています。それでも、今年は100億円も市税収入が増えています。さらに、市民サービスも医療も保育園の待機児童の問題も、名古屋は全国的にもレベルが高いサービスを提供しています。

 税金以外のお金の話をすると、実は名古屋港だけで貿易黒字が6兆円もあります。日本全体で貿易赤字なのですが、名古屋港は黒字なのです。それだけのお金が入ってきているという事実があります。この黒字は、トヨタ自動車をはじめとする自動車関連企業、航空宇宙産業、工作機械産業など、世界でもトップレベルの企業が多いことが一因です。

 名古屋市は、今年、国からの交付税が50億円に減少します。一方、国税だけで年間1兆5千億円も国に納めています。名古屋市は日本でも最大の担税都市なのです。

—— 中京都構想について。

河村 名古屋という街は、戦争で焼け野原になった街です。そのマイナスからスタートしてここまでの都市に復興した、再興都市でもあります。税収も先ほど話したようにいい状況ですから、このままの名古屋で良いという人も少なからずいます。調子が良いときは変化を求めないものなのです。

 しかし、徴税権を与えてもらえれば、名古屋市だけでなく、愛知県全体で現状の3倍もの公共サービスが出来るようになる。名古屋が持つ担税力、ポテンシャルが今は活用されきっていないのです。だからこそ、中京都構想になるのですが、実現には法律から変えなければならない。これは困難ではありますが、中京都構想は掲げていきたいと思っています。

—— 中京都構想の具体化には何が必要ですか。

河村 実際には、財政自主権と立法権が必要ですが、これは難しい。そこまでしなくても、名古屋は現状で充分にいい状態なのですから、わざわざ難しいことをしなくても良いという考えはあります。

 

河村たかし市町の首長②商売しやすく住みやすい名古屋に

 

—— 現在の名古屋を変えていくには、どのようなことを考えておられるのでしょうか。

河村 名古屋は世界一と言っても良いくらいの産業都市です。これをもっと推し進めて国内外にアピールするためには、例えば上海以上の国際展示場を建設する、MITのような理工系の優秀な大学をつくるといったことに取り組んでいきたい。

 また、楽しいということも重要です。例えば、世界一の1千メートル級のタワーを建てる。話を聞くと1千億円もあればできるということで、入場料収入を見込めば充分にペイします。加えて、名古屋フィルハーモニー交響楽団もウィーンフィルやベルリンフィルと並ぶようなオーケストラに成長させていきたい。こうした文化的な取り組みも重要です。

—— リニア中央新幹線が開業すれば大きなインパクトがあると思います。

河村 ストロー効果で東京に人や知財が流出するという意見もありますが、私は逆ストロー効果を考えています。名古屋のポテンシャル、楽しさが伝われば、逆に東京からこれらが流入してくるはずなのです。

 そのためには先ほど述べたタワーだけではなく、熱田神宮を盛り上げたり、名古屋城天守閣の本物復元をしたりすることも考えていきたい。昔の名古屋城の図面が残っているので、再建は可能なのです。観光地としての名古屋を活性化させるだけではなく、地元の人々もプライドが持てるようになります。

—— 市民税は既に下げておられますが今後の方向性は。

河村 以前は地方自治体が勝手に市民税を下げることは出来なかったのですが、2006(平成18)年に法改正があって、市民税を下げられる仕組みになりました。ところが、自治体で市民税を下げたという話はほとんど聞かない。

 名古屋市では、毎年110億円の市民税減税をしています。100万世帯で割ると1万1千円。法人も含めてですけれど。各自治体で財政状況は違いますから、税金が日本中同じではおかしい。しかし、全国でこうした減税を実現したのは名古屋市だけです。

 これにより、年間110億円が地元経済に還元されていることになります。いま名古屋市の域内総生産(GRP)は11兆円あるのですが、その0・1%にあたります。中日ドラゴンズが優勝すると250億円の経済効果があるといわれていますから、それには及びません。しかし、この減税で、自治体の姿勢を示すことができます。少しでも良いサービスを、安く提供していく。それを実現して、なおかつ、少しでも減税ができるように工夫していかなければなりません。

 例えば、昔の織田信長の楽市楽座も減税政策で、商売を活性化させました。同じように名古屋市でも減税をして役人がいばらない、商売しやすい、住みやすい街にしていく。具体的には減税の他にも、市職員の人件費を大きく削減しています。こうした努力をもっと知っていただきたいと思います。

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