政治・経済

エンターテインメント事業とライフスタイルサポート事業が柱

 —— 現在の主力サービスは。

 林 エンターテインメント系のアプリケーション事業、それとライフスタイルサポート事業の2本柱になります。

 もともとは私の個人事業としてビジネスを始めたのですが、最初は、いわゆる受託事業、プログラム開発を受託しているだけでした。仕事はあったのですが、むちゃくちゃな納期、発注の仕方さえまともではなくて、報酬も安い。今思えば酷い時期でした。これで社員も私も疲れきってしまい、もう止めようと思ったくらいです。そんなとき、経営コンサルタントの神田昌典さんの著書のなかに「どんなふうになりたいかは誰しも、よく分からない。でも、何が嫌かははっきりしている」という言葉があったのです。そこで、私自身、何が嫌かを書き出しました。そのなかでハッキリしたのが「下請は嫌」ということ。そこで、自社の製品、サービスを作らなければダメだと気が付きました。

 —— 競合も多かったと思いますが。

 林 当時の携帯電話は機能がまだ低く、ゲームも容量が小さく、小規模の開発でも対応できたという側面もあります。最初に出したゲームからヒットしたのですが、これは当時の携帯ゲームにはなかったクオリティのものを出したという点が大きいと思います。まだパケホーダイもなかった時代なので、当時ゲームをされていた方はパケット代が大変だったかもしれません。

 シナリオと絵を変えれば、別のゲームになるという汎用性が高いシステムにしたこともポイントです。おかげで立て続けに6作ものゲームをリリースできました。その後、待ち受け画像サイト、着うたサイトなども展開しましたが、これも汎用性が高いシステムで水平展開し、一気に売り上げが伸びました。

 —— 現在はマーケットがスマートフォン中心に変わり、人的リソースの確保など、大変ではないでしょうか。

  正直、その点での苦労は感じていません。当社はガラケー時代からゲームアプリの開発をしてきており、新たにスマホで参入する会社に比べて、経験値があるからです。

 —— 新たな事業として、ライフスタイルサポート事業がありますが。

 林 事業をスタートした頃は、ガラケーのアプリ全盛期でしたが、「このビジネスは長く続かない」と感じていました。そこで第2の柱を作ろうと考えたのがきっかけです。流行り廃りのないビジネス、しかもPCをベースとして生活に密着したものを作ろうと思いました。

 —— 引っ越し比較サイトの「引越し侍」ですが、引っ越し希望日や荷物などの条件を入力すると、引っ越し業者の見積り価格が並んでいて、比較ができます。類似サイトとの違いは。

  このサイトは各業者からの手数料をいただき、顧客情報をお送りしています。お客様から1回の見積依頼で10社を紹介するので、1案件で数千円の売り上げになります。

 このようなビジネスモデルに大きな違いはありませんが、重要なのは、契約している引越業者の数です。最初は20社しか契約できていなかったのですが、今では200社以上の業者と契約しています。また、引っ越し業者との連携も強化し、共に業界を盛り上げていく姿勢を強くもっています。エンターテインメント事業で得た利益をこちらに投資し続けて、3年目でようやく単年黒字の事業になりました。お陰様で、今、日本中の引っ越しのうち1割は当社のサイト経由の契約で動いています。

 —— 他のライフスタイルサポート事業は。

  中古車買取価格を比較する「ナビクル」、中古車販売サイト「なびくる+」、結婚式場情報サービス「すぐ婚navi」などがあります。これらも「引越し侍」のモデルを水平展開したものです。今、売り上げの約4割がこのライフスタイルサポート事業が占めています。

 —— 2012年に東証マザーズ上場、同年に最短記録で東証一部上場を果たしました。

  その効果として一番大きいのは、社員に自信が付いたことです。対外的な信用なども大きいのですが、やはり社員の意識が大きく変わりました。同時期に世界的なヒットゲームもリリースでき、「やればできる」ことが証明できたと思います。

様々なライフサポート事業を展開するエイチーム、東京進出はいかに

 —— 東京進出の予定は?

  今は考えていません。まず名古屋で働きたいという人が一定数以上いますし、名古屋には当社のような会社が他にないので、自然と人材が集まってきます。採用面でものすごく有利なのです。

 今、社内の合言葉は「名古屋から世界へ」です。スマホが登場し、これが世界共通のプラットフォームであることが大きい。ガラケーは日本でしか通用しませんが、スマホなら世界共通です。PCよりスマホの数の方が多くなると東京にこだわる必要はなくて、名古屋から世界に挑戦できるのです。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る