政治・経済

アベノミクスの効果もあり、九州経済は長い不況を脱し、復活に向けて確実に動き出した。とりわけ個人消費や公共投資は、顕著に回復している。製造業は力強さに欠けるものの、近年官民を挙げて取り組んでいる観光においては、アジアからの観光客がめざましく増えている。九州経済の現状と今後の展望について石原進・九州経済同友会代表委員に聞いた。

 

全国レベルと同じく好調な九州経済

 —— 九州経済の現状はどうですか。

 石原 九州の景気は着実に回復しています。景気ウオッチャー調査の現状判断DI(景気動向指数)をみると、九州は1月に55・3と、昨年2月から12カ月連続で50のラインを上回っています。日銀短観は昨年12月に+11とバブル期以降、最高の数値を記録しています。

 アベノミクスの第1の矢、第2の矢は効果大でした。第1の矢である金融緩和は円安と株高につながり、個人消費を刺激しています。大型小売店の販売額や乗用車販売台数は、全国と同程度に伸びています。また円安の進展により、2013年の九州の訪日外国人は過去最高の125・3万人を記録しました。外国人観光客は旅行中に多額の消費をしますから、外国人観光客が増えることは大きな経済効果があります。

 第2の矢である機動的な財政出動は公共投資を増大させており、公共事業への依存度の高い九州経済を下支えしています。

 —— 九州も全国レベルと同等に好調ですね。

 石原 製造業は持ち直し傾向にはありますが、力強さに欠けます。また、民間企業の設備投資は回復の勢いが弱く、特に中小企業は低水準のままです。

 九州経済をさらなる成長軌道に乗せるためには、アベノミクス第3の矢である成長戦略を早期かつ強力に実施して、民間設備投資を刺激することが必要です。設備投資の拡大が賃上げ・雇用拡大、消費の刺激につながり、それが企業の業績回復、そして再び設備投資の拡大をもたらすという自立的な好循環を生み出すことを期待しています。

 

九州経済の懸念材料は?

 —— 観光振興への取り組みはどうですか。

 石原 05年に全国で初めて、地域ブロック単位で官民が連携して観光振興に取り組む「九州観光推進機構」が設立。14年度からは、「観光産業を九州の基幹産業にする」ことを目標に、アジアを中心とした外国人観光客の拡大に注力します。

 10年の九州への訪日外国人数は100・1万人でしたが、23年には440・6万人まで引き上げる目標を掲げています。九州は、温泉も豊富で、食材も美味しいし、歴史的観光資源も充実しています。しかし、海外における「九州」の認知度はまだ低いので、温泉を柱に九州を世界へPRしたいと思います。また、観光ガイドが不足していますので、その育成を図ります。さらに、国などへ働きかけ、ノービザ化の実現や免税手続きの簡素化などにも取り組みます。

 —— 14年のトピックス、注目イベントは。

 石原 東九州自動車道開通が大きいですね。14年度中に北九州市〜宮崎市間がすべて開通する見通しであり、九州を一周する高速道ネットワークが実現します。これを九州経済の発展に活かす必要があります。

 —— 東九州は医療機器産業も盛んですね。

 石原 大分県と宮崎県を合わせた医療機器生産額は全国第3位です。この地域に工場を構える旭化成メディカル㈱は人工腎臓の国内シェアトップ、川澄化学工業㈱は血液回路、血液バッグ製品の国内シェアトップ、メディキット㈱は血管用カテーテル、透析用留置針、静脈用留置針の国内シェアトップを、誇っています。また、徳器技研工業㈱は世界初の「自動痰吸引器」を開発して注目を集めています。

 —— 九州経済は全体として好調なようですが、懸念材料は。

 石原 消費税が上がり、景気回復に水をさすでしょうが、それも、一時的なもので、また成長に転じると思います。ただし、電力料金の値上げは経済全般に打撃を与えますので、何としても原子力発電所の早期再稼働が必要です。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る