政治・経済

昨年、創立65周年を迎えた福岡倉庫は、地域最大規模の倉庫会社である。業務は主力の倉庫業やトラック輸送のほか、珍しいサービスとして海外引っ越しを戦後直後から手掛けており、年間で9千件を取り扱い、2カ国に4拠点を持っている。景気に左右されがちな業界であるが、その現状と将来展望を聞いた。

福岡倉庫・富永太郎氏は語る 海外引っ越しその現状と将来展望

 —— 事業内容と特色は。

 富永 年間の売上高は前年度98億円で、内訳では倉庫業と海外引っ越しがそれぞれ25%で、トラック輸送が50%の割合です。県内に7カ所の営業倉庫があり、地場では最大。主に九州、沖縄、中国地方における物流拠点となっています。海外引っ越しは戦後、在日米軍から仕事を委託されたことをきっかけに始めたもので、年々取扱件数も増えています。長距離のトラック輸送については自社で車両を保有せず、運送会社との提携で1日250台程度のトラックで幹線輸送の仕事をしています。

 —— 海外引っ越しとは珍しいですが、どのような経緯で始めたのですか。

 富永 創業者(故・富永シズ氏)が設立したグループ会社の1つである福岡運輸は戦後、在日米軍からいろいろな仕事を委託され、その1つが日本初の冷凍車の製造であり、海外引っ越し業務だったのです。以来、海外引っ越しが大きな業務になっており、現在は中国に3つ、ベトナムに1つの計4つの拠点があります。この業務は他社が簡単には真似できないノウハウがあり、かつマーケットとして大きな成長が期待できます。

 —— 倉庫業は、景気動向に業績が大きく左右されるのではないですか。

 富永 そうですね、ただし最近よく言われるアベノミクス効果による恩恵はあまり実感できていません。福岡県内の百貨店などでは高額商品の売り上げが伸びているようですが、九州全体として貨物量が特段増えてはいません。景気の回復はありがたいことですが、われわれの業界にとっては、逆に労働者の確保が難しくなったという反作用もあります。加えてトラック業界からは、運賃値上げの強い要請が来ている状況です。

 —— 成熟産業といわれる業界ですが、差別化戦略は。

 富永 われわれ中小企業が生き残るためには、狭い範囲でもいいので、自社でしかできない強みを持つしかありません。当社でいえば地場で最大の倉庫会社である信用力、海外引っ越し60年の経験と年間9千件の取り扱い実績は強みです。自社のサービスには自信がありますが、それを取引先に理解してもらうのは難しい。そこで品質管理システム規格の「ISO9001」、「ISO14001」や「プライバシーマーク」を取得したり、7人のシステムエンジニアを抱えて物流システムを強化していることなどを強調しています。

 —— 今後の経営目標は。

 富永 社員やその家族が幸福になることが1番で、同時にそれが自分自身の幸福にもつながると思っています。創業者の経営理念は「社会の役に立つ」というものですが、私はこの理念を守りつつ、当社を未来永劫継続させていくことを大きな目標としています。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年5月号
[特集]
進化するチーム

  • ・総論 姿を変える日本の組織 個人とチームが互いに磨き合う時代へ
  • ・小笹芳央(リンクアンドモチベーション会長)
  • ・稲垣裕介(ユーザベース社長)
  • ・山田 理(サイボウズ副社長)
  • ・鈴木 良(オズビジョン社長)

[Special Interview]

 南場智子(ディー・エヌ・エー会長)

 「社会変革の今こそ、組織を開き、挑戦を加速する」

[NEWS REPORT]

◆社長になれなかった松下家3代目がパナソニック取締役を去る日

◆DeNAとSOMPOが提案する新たなクルマの使い方

◆ここまできたがん治療 日の丸製薬かく戦えり

◆ブレグジット目前!自動車各社は英国とどう向き合うか

[特集2]九州から未来へ

 九州一丸の取り組みで生まれる新しい産業

ページ上部へ戻る