文化・ライフ

 印刷された文字の中に、ほんのひと言、

「お元気ですか?」

 とあるだけでも、手書きの筆跡から伝わるその人の温もりは、とてもいいものです。同じ年賀状でも、メールと葉書では受け取る側の印象が全く違うから不思議ですね。

「わざわざ書いてくれた」という思いは、もう何年も年賀状だけのお付き合いという相手でも、日常がデジタル化していく中、郵便受けに届くアナログ感との対比で、親しみやうれしさを倍増させてくれるのかもしれません。

 日本独自の文化である「年賀状」は、いつの頃から始まったのでしょうか。親戚や知人宅に新年の挨拶をしてまわる「回礼」(年始まわり)という、古来からの風習としてはありましたが、その後、年賀の書状を送る習慣が一般に浸透するようになったのは、庶民文化が花開いた江戸時代も後期になってからのようです。

 道路や町全体が整備され飛脚制度が充実し、より早く手紙や荷物が届けられるようになったのもちょうどその頃。東京︱大阪間など遠距離を行く高額な飛脚便だけでなく、江戸市中を配達してくれる「町飛脚」が多く現れたことにより、武家や豪商など一部の裕福な人たちに限らず、町の商家や庶民であっても、お得意さんへの挨拶や友人に宛てて手紙を活用しやすくなったのです。

 また、世界でも識字率の高い江戸の町を象徴するかのように、寺子屋では子どもたちも、読み・書き=手紙の読み方書き方を習うため、ふだんから自然と書には親しんでいました。

 このようにして、現代の郵便制度の基礎となるシステムは江戸で発達を遂げ、年賀状もいつしか人々にとって身近な存在になっていったのです。

 さらに、商人の生き方である江戸しぐさでは〝年賀状は生きている証し〟として、格別の意味を込めていました。

 友人、知人へ。離れて暮らす家族・親戚へ。そして重要なのは商売相手とお客さん宛てのものです。親しい人や世話になっている相手へはもちろん、些細なトラブルや行き違いからお互いに気まずくなってしまったままの相手やいつしか疎遠になってしまった人にこそ、「あなたとのお付き合いはまだありますよ」という思いを込めて、真っ先に書いたそうです。

 関係を修復したい、今年はもっと親しくなりたいなど、面と向かっては言いにくい心の内を、年賀状を差し出すことで暗に知らせているというわけです。

 好機は逸すべからず。新春の便りは、さりげなく自分の存在と近況を伝えるよい手立てとなるでしょう。年賀状を出していない方は今からでも遅くはありません。挨拶はとても気持ちよく、会うことばかりが〝お付き合い〟ではありませんからね。

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