文化・ライフ

 江戸の商家では、一人前の主になると今度は人のために先立って皆の手本となるような生き方を示すように「年長者のしぐさ」という心得を掲げたそうです。

①人をどれだけ笑わせているか?

②人をどれだけ引き立てているか?

③人をどれだけ育てているか?

④人にどれだけ伝承しているか?

 江戸のスローガンは「世のため人のため」と掲げられていましたが、特に年長者になったら、自分さえ輝いていればいいという考え方は粋ではありませんでした。

 自分のために知識や教養を得て満足するだけではなく、今度は、これまでの経験を教訓に人を導く立場となって、自分を育ててくれた人達や社会への恩返しのために、はつらつと振る舞い、慈しみとユーモアの精神を忘れないように心掛け、文化的人道的に過ごしたそうです。

 そして、世の中に必要とされ、敬われるような人間を目指して切磋琢磨し、後輩の育成に尽力を注ぎました。

 職場では商家の主として、学びの場では江戸で発達した「講」の先生として、家庭なら父親、母親としてなど日常における年長者の役割は重要です。江戸の若者たちは、大人たちの背中を見て模倣し学び、その心映えを讃え、愛情を受け取り、隠居の老人や目上の年長者たちを自然と敬い、いつの間にか江戸に「年長者を敬う」心の文化が築かれていったのです。

 これは、江戸しぐさの最大のテーマでもある〝共生〟の精神が土壌にあり、若者たちは身近な年長者たちを敬うことで地域社会と共生し、次は自分もその立場になって人のために活躍しようという感性が身に付いていたのです。

 年長者は、単に年配者という意味ではなく、会社組織なら社長はもちろん、勤務年数や実務経験が多い人、その部署のリーダーなど人を導く立場として、誰にでも当てはまることになります。

 例えば、後輩が業績を伸ばしやすい環境をつくるのは先人の役目でもあると考え、ときにはユーモアで場を和ませる。一歩譲って相手を引き立て良いところは言葉にして誉めてみる。自分が得た知識や技術を分け与えて育成し、その精神も伝承していくのが年長者のあるべき姿だと思えること。その継続が会社の発展にもつながり、やがてその徳は自分にも返ってくることになると江戸商人のリーダーたちは考え実践していたのです。

 あなたは年長者の立場として、どんなしぐさを心掛けていますか? ちょっと視点を変えて先人たちの問い掛けに耳を傾けてみませんか?

「どれだけ人を笑わせているか?」なんて、江戸っ子らしい粋な商人道ですね。

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