文化・ライフ

 修学旅行と言えば、京都・奈良の定番から一時期に流行った海外まで時代によって変化があるが、最近では一般家庭に宿泊して生活を共にする「民泊」が脚光を浴びているようだ。その民泊が一大産業となり、元気の源になっている場所が今回の舞台、沖縄県の伊江島だ。

 沖縄本島の真ん中、本部港から船で30分、1年間に2万2千人の子どもがこの島にやって来る。

 ゲストの立教大学で異文化コミュニケーションを教えていた米・カリフォルニア州出身のジョセフ・ショールズさんは、米国では個人でキャンプに参加するので、修学旅行のような集団での移動がないそうで、知ったときには驚いたそうだ。

 さて、今回訪れたのは兵庫県宝塚市の中学生総勢187人。この中学校は9年連続で伊江島を訪れている。伊江島に到着後、島の受け入れ家族ごとに分かれて2泊3日の滞在を行う。伊江島で伝統の潜り漁を行う古堅幸一さんも野球部仲間6人を受け入れた。大事なことは「お客さま扱いしないこと」。さっそく、料理を少年たちに任せたり一緒に釣りに出掛けたりするなど、まるで田舎に帰省した親戚の子どもと接しているようだ。

 しかし、そこは現代っ子、伊江島で民泊が始まった当初は生徒たちの振る舞いにトラブルが多発。しかし、子どもたちの話を聞いていくうちに生徒たちの抱える現代の家庭事情が浮き彫りになり、島の人たちが努めて理解しようとしたそうだ。

 島のお母さんの1人は、ある女の子の想い出を語る。その子は髪を染め、身なりも派手な子で、うまく接することができるか不安だったそうだ。しかしその子が毎朝泣くという。彼女は、こんなに人にかまってもらったことがなく、毎朝食卓にお金が置いてあるのだという。最終日「帰りたくない」とお母さんに訴えたのだそうだ。

 都会では希薄な人の触れ合いが濃厚に残るこの島で、子どもたちは新しい何かを得て帰っていく。もちろん、島のおじい・おばあにとっても子どもたちは「生きがい」になっている。柱に書き込んだ子どもたちの身長やメッセージは再会の約束でもある。また、台風などで作物の出来が不安定なこの地では、安定的な収入のひとつになった。

 民泊をきっかけに島に移住した若者も生まれた。島のダイビングショップで働く17歳の小松原豪二(かつじ)君は、中学校の修学旅行で訪れた海の美しさに衝撃を受け、卒業後この島にやってきた。「人生変わりましたもん」という小松原君の言葉がこの民泊の魅力を表す。

「おかえり」で迎え「いってらっしゃい」で送りだすこの島が子どもたちの第2の故郷になったことは間違いない。

 ジョセフさんも「From Local to Global……ローカルな土地で発見や出会いを重ねることで視野が広がり、新たな自分を発見できる。両親についても、住んでいる地域も新たな見方ができるはず。『お客さま扱いしない』伊江島での体験から生まれた深い絆が、子どもたちの心を大きく動かしていますね」と感心しきりだった。

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