文化・ライフ

  秋田県の南北を約100㌔に渡って縦断するローカル鉄道「秋田内陸線」は、東北の大自然を走る鉄道路線だ。

 全線開通した1989年には、年間100万人を超える利用客があったが、少子高齢化によって2012年度には36万人にまで減少していた。長大な路線は、整備や維持のコストがかさみ、経常損失額を地方自治体が負担するなど、まさに存続の危機であった。ところが、08年に2億4千万円もの赤字が出ていたのが、4年後の12年には一気に4500万円も赤字縮小に成功したのだ。秋田内陸線のどこが変わったのだろうか?

 アメリカンスクールで演劇を教えるゲストのデイヴィッド・ニールさんは、青森在住の経験もあり、自らも乗車経験のある内陸線が存続危機であることにびっくり。その解決に地元の人たちの奮闘があったと聞いて、「とてもシャイ、でもとっても温かい東北の人たちだから分かります」と納得の顔。

 今年で5年目のイベント列車「ごっつお玉手箱列車」は、チケットが数カ月前に売り切れる内陸線の人気イベントだ。

 ごっつおとは、地元の言葉でごちそうの意味。角館の駅を出た列車に途中から地元のお母さん7人がつくった料理がそれぞれ途中の駅から持ち込まれるのだ。

 例えば73歳の高橋さんが西明寺から持ち込んだのは、自分の畑で採れた8種類の野菜の漬物。色合いを大事にする高橋さんは大根の葡萄漬けやニンジンの塩麹漬け、カリフラワーのカレー粉漬けなどバリエーション豊か。

 もうひとり、おかず担当の中島さんも地元産の食材にこだわる。フキやゼンマイの白和えなど田舎料理に、お客さんも「(見た目が)カワイイ。葡萄漬けがおいしい」や「自然の味だね」と大好評。東京や横浜からやって来たお客さんたちも大満足であった。実は中島さんにはかわいい孫がいる。将来高校に行くときに秋田内陸線が無くなっていては困ると、せっせと頑張っている。多くの人も生活の足である列車が必要だ。つまり、復活の原動力は周辺住民の力なのだ。

 駅構内のベンチにはお母さんたちが作った座布団が置かれ、夏には沿線の田んぼをキャンパスにアート作品が目を楽しませてくれる。今では、沿線の住民が内陸線を見掛けたら老いも若きも鉄道に向かって手を振るようになった。みんなの小さな努力が輪になって鉄道が地域住民をつなぐ絆になったようだ。

 さらに、阿仁合駅には東京からスカウトされてやってきた麻木シェフが腕を振るうレストラン「こぐま亭」もオープンした。

 こぐまだけに熊肉かと思いきや、馬肉シチューや馬肉ラーメンなどの馬肉料理が県外からもお客さんを呼びよせる。秋田内陸線は運賃以外にも収入を確保した。

 デイビッドさんいわく大事なことは「人と人のふれあい」。自分自身もさっそく秋田内陸線のために何かできないかと考え始めていた。

 愛されるから応援される。秋田内陸線は今日も走っている。

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