政治・経済

孫正義・ソフトバンク社長 「アメリカでの戦いは簡単ではない。メジャーリーグに挑んでいくようなもの」

孫正義・ソフトバンク社長
「アメリカでの戦いは簡単ではない。メジャーリーグに挑んでいくようなもの」

 1・8兆円を投じた米スプリント・ネクステルの買収が完了し、グローバル市場攻略の入口に立った孫正義・ソフトバンク社長。日米の売上高を合計すると、携帯電話事業で世界第3位のグループを率いることとなる。2006年に英ボーダフォンから日本法人を買収して国内携帯電話市場に参入した時と同じく、今回も大型買収によって米国市場に殴り込みをかける。視線の先に見据えるのは、世界ナンバーワンのポジションだ。

 リスクを恐れず大勝負を仕掛ける姿にはワクワクさせられるが、道のりは決して平坦ではない。ボーダフォンの時と違って、スプリントの携帯電話事業は、12年12月期までに6期連続の赤字。シェアも競合するベライゾン・ワイヤレスとAT&Tに引き離されており、立て直しは容易ではない。スプリントが抱える負債も含めると、ソフトバンク自身の有利子負債も9兆円近くに拡大することになる。果たして、この状況をいかに突破していくのか。

 一方、日本国内の競争においても試練が待っている。少子高齢化によって規模の拡大が望めない市場で、いかにNTTドコモとKDDIからシェアを奪い、収益を伸ばしていくのか。さらに、東日本大震災後に参入したエネルギー関連事業はどうするのか等々、多くの読者が知りたいところだろう。

 本インタビューではこうした疑問を率直にぶつけるとともに、攻めの経営を続ける理由、そしてはるか未来の世界像まで広く語って貰った。 (聞き手/本誌編集長・吉田浩)

収益を増やす余地はいくらでもある

-- 1カ月の半分は米国出張しているとのことですが、見えてきた課題はありますか。

 まず、スプリントのネットワークを世界一のものにするために、新しい設計や機器の調達などを全速力で行っています。日々の細かな課題は山ほどありますが、何か大きな問題が出てきているわけではありません。ただ、アメリカの携帯キャリアの中でスプリントは持っている電波も基地局も少なく、接続の速度が劣っている状況です。これを「倍返し」と言いますか、つながりやすさを一気に挽回して、一番よくつながるネットワークにしたい。日本では電波の許認可を得るためにわれわれは大変苦労したんですけれども、幸いなことにスプリントが50%出資していたクリアワイヤという子会社があって、今回当社がスプリントを買収するにあたって、スプリントの100%子会社にできました。これで世界一のネットワークを作れるめどが立ちました。

-- 現実問題としてスプリントの業績は芳しくないし、今後も設備投資の拡大が必要になるわけですが、ソフトバンクの有利子負債も増えています。これからも積極投資は続けていくのですか。

 負債の絶対額は基本的に問題ではなくて、償却前の営業利益に対して何倍まで借り入れるかが一番大事と思っています。格付け会社も稼いでいる営業キャッシュフローに対して、何倍まで借り入れがあるかを一番見ます。そういう意味で、稼ぎは確実に増やせる状況になっているので問題ありません。スプリントのネットワークを改善するのに資金が足りないため、ソフトバンクが新たに数千億円レベルの資本金をスプリントに入れたわけです。さらにクリアワイヤの電波を得られたので、資金と電波の両方のテコ入れができました。それさえあれば、顧客獲得はもともとソフトバンクのお家芸ですから、稼ぎを増やすことは可能だと思います。ただ、アメリカにおける競合の2社は圧倒的ポジションを持ち巨額の利益を稼いでいるので、日本での戦いよりはるかに大きな敵になります。だから決して簡単ではないです。

-- やること自体は変わらないが、日本の競合2社とはスケールが違うと。

 そうです。野球で言えばメジャーリーグに乗り込んでいくようなものですね。

-- 国内携帯市場は頭打ちなので、ある程度は現状維持で良しとするのですか。

 とは言っても、まだドコモさんのユーザーが一番多いし、KDDIさんのユーザーもいますから、マーケットシェアの拡大は徐々にでも進めていきたいと思いますね。ビジネスモデルとしても今までの単なる回線売りに加えて、グループ1300社と一緒に総合的なサービスを提供していくことによって、トータルで収益を稼げばまだシェア拡大の余地があります。さらに、まだスマホとタブレットの二刀流で使っている人の比率は小さいので、PCからタブレットへの移行を狙うという意味で、もう一回り回線数を増やすということは可能であると思います。もうひとつは自動車、自動販売機、家電製品などのマシンtoマシンの領域です。パイプとしての回線は、自動車や自動販売機などいろいろなものについてくるのでこれを増やし、1つの回線にゲームであったり、ヤフーであったり、中国ではアリババであったりと、さまざまなサービスを付加していきます。インターネットサービスをモバイルインターネットサービスへと進化させ、コンテンツやサービスとセットで回線を売ります。

-- 例えば最近フィンランドのゲーム会社スーパーセルを買収したりしたのも、その布石ということですか。

 スーパーセルの本社はフィンランドにありますが、彼らは世界140カ国で売り上げ1位を取っています。フィンランドのマーケットを攻めるのではなく、あくまでも世界市場を目指して拡張するのが目的です。

ページ:

1

2

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年1月号
[特集]
敗者復活戦

  • ・負けから何を学び、糧にしていくか
  • ・存亡の危機を乗り越えた「熱海」の逆転ストーリー
  • ・あの名門ブランドが、帰って来た(アイワ、ビクター)
  • ・「なるほど家電」を牽引する大手家電メーカーの早期退職組(アイリスオーヤマ)
  • ・関ケ原で敗れた立花宗茂はなぜ、返り咲くことができたのか
  • ・市江正彦(スカイマーク社長)
  • ・加藤智治(ゼビオ社長)

[Special Interview]

 三毛兼承(三菱東京UFJ銀行頭取)

 「旧来の商業銀行は構造不況業種 大変革で信頼と強さを持ち続ける」

[NEWS REPORT]

◆カードローン規制で稼ぎ頭を失う地方銀行の明日

◆12年ぶりのアイボ復活 名実ともにソニー再生は成るか

◆終身権力者も視野に入った習近平が恐れるクーデター

[特集]クルマが変わる、社会を変える

・これから始まる全自動運転 OSを制するのは誰だ!?

・車載電池の性能が左右するEV時代の覇権戦争

・冷える鉄鋼、潤う化学 クルマが変える産業構造

・トヨタ・日産・ホンダ・マツダ 主要4社「わが社の戦略」

ページ上部へ戻る