
「毎年20万人の移民受け入れ 政府が本格検討開始」--政府が、少子高齢化に伴って激減する労働力人口の穴埋め策として、移民の大量受け入れの本格的な検討に入った。内閣府は毎年20万人を受け入れることで、合計特殊出生率が人口を維持できる2・07に回復すれば、今後100年間は人口の大幅減を避けられると試算している。経済財政諮問会議の専門調査会を中心に議論を進め、年内に報告書をまとめる方針。ただ、大量受け入れには単純労働者を認めることが不可欠で、反対論も強まりそうだ。日本で働く外国人の届け出数(昨年10月末)は72万人弱で、前年より約3万5千人増えた。20万人はその6倍近い数だ。(後略)(産経新聞2014年3月13日付)
人手不足が貧困化を打開する
連載第1回からとんでもない「経済ニュース」をご紹介する。政府が人手不足の解決策として、最も採ってはならない「安易な手段」、すなわち移民の大量受け入れを検討していると産経新聞が報じたのだ。
記事中には「今後100年間の人口の云々」が書かれているが、単なるお題目にすぎない。外国人労働者を増やそうとする「勢力」は、グローバル企業などの人件費が上昇し、利益が減ることを嫌う構造改革主義者たちだ。無条件の法人税減税を推進しているのと、同じ人々である。 現在のわが国は「デフレーション」から「インフレーション」へと移行する過渡期にある。結果的に、人手不足であるにもかかわらず、実質賃金が下がるという極めて奇妙な現象が発生しているのだ。
意外だろうが、2012年12月に第2次安倍政権が発足して以降も、13年第1四半期を例外に、わが国の労働者の実質賃金は下落を続けた。13年の第1四半期は、円安進行で輸出が増え、さらに株価上昇を受け、民間の消費も拡大した。確かに、この時期のわが国の国民経済は好調で、働き手の実質的な賃金が対前年比で上向いたのである。
ところが、GDP成長率を見ても明らかなように、その後の日本経済は次第に失速していき、実質賃金も再び対前年比マイナスで推移するようになってしまった、13年を通してさえ、わが国の国民は貧困化したというのが現実なのである。
国民が貧困化していくという、この状況を打開してくれそうなソリューション(解決策)が、何を隠そう「人手不足」である。何しろ、東北の復興や各地の耐震化、防災対策、老朽インフラのメンテナンス、さらには東京五輪に向けたインフラ整備は、「やらなければならないから、やらなければならない」のである。今後のわが国で土木や建設、さらには運送などの派生産業の需要が拡大していくことは確実で、現在の人手不足問題はさらに深刻化していく。結果的に、労働者は「同じ労働を提供しても、以前よりも所得が上がる」状況になるのである。
技術とノウハウ蓄積が不可能に
実のところ、人手不足ほど「働き手」にとってありがたい環境はない。日本国の需要を満たすために、日本国民が働き、所得を増やしていく。所得が増えた国民は消費、投資を拡大し、内需が増えていき、所得の上昇は次第にさまざまな産業に波及していく。人手不足の環境下で、国民(働いていない国民)が一人、また一人と職を得ていき、自らの中にさまざまな技術、スキル、ノウハウ等を蓄積していく。人手不足こそが、わが国の国民の所得上昇と「経済力(=国民経済の供給能力)」の強化の「始まり」になる可能性が高いのだ。
ところが、この状況で人手不足を外国人労働者の導入で補おうとすると、当たり前だが実質賃金は上向かない。人件費を削減でき、利益を増やせる経営者や株主はうれしいかもしれないが、日本の「国民経済」にとっては最悪だ。
日本が完全雇用状態ならともかく、失業率はいまだ4%弱程度で、若年層失業率はその2倍、生活保護受給者が史上最高を更新している国において、なぜに雇用の供給を外国人に依存しなければならないのか。意味が分からない。
また、外国人労働者の力により、現在の土建の人手不足を解消しようとすると、「日本国民」の中に技術やノウハウが蓄積される機会を逸してしまう。
さらに、外国からの移民で人手不足を補おうとした欧州諸国がどうなったか、ぜひとも知ってほしい。
現在、元からの国民と、社会保障にフリーライド(ただ乗り)しようとする移民との軋轢が高まり、各国で紛争が発生。死人も出ている。現時点での外国からの移民の大量受け入れは、日本国の将来に大きな禍根を残す可能性が高い。
好評連載
深読み経済ニュース
一覧へ2015年の経済見通し
[連載] 深読み経済ニュース解説

[連載] 深読み経済ニュース解説
再デフレ化に突入し始めた日本経済
[連載] 深読み経済ニュース解説
消費税率引き上げ見送りの評価と影響
[連載] 深読み経済ニュース解説
安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由
[連載] 深読み経済ニュース解説
日銀による追加緩和決定の影響は!?
霞が関番記者レポート
一覧へ財務省が仮想通貨の規制に二の足を踏む本当の理由――財務省
[霞が関番記者レポート]

[霞が関番記者レポート]
加熱式たばこ増税に最後まで反対した1社――財務省
[霞が関番記者レポート]
下水道におむつ処分流す仕組み検討開始 介護子育て負担軽減――国土交通省
[霞が関番記者レポート]
NEMの大量流出で異例のスピード対応 批判をかわす狙いも――金融庁
[霞が関番記者レポート]
バイオ技術活用提言 遺伝子の組み換えで新素材や医薬品開発――経済産業省
永田町ウォッチング
一覧へ流行語大賞に見る2017年の政界
[永田町ウォッチング]

永田町ウォッチング
堅実路線にシフトした安倍改造内閣の落とし穴
[永田町ウォッチング]
政治評論家、浅川博忠さんの「しなやかな反骨心」
[永田町ウォッチング]
無党派層がカギを握る東京都議選の行方
[永田町ウォッチング]
東京都議選は“小池時代”到来の分岐点か
地域が変えるニッポン
一覧へ科学を目玉に集客合戦 恐竜博物館に70万人超(福井県勝山市、福井県立恐竜博物館)
[連載] 地域が変えるニッポン(第20回)

[連載] 地域が変えるニッポン(第19回)
コウノトリで豊かな里山 自然と共生する町づくり(福井県越前市、里地里山推進室)
[連載] 地域が変えるニッポン(第17回)
植物工場、震災地で威力 雇用創出や活性化に効果(岩手県陸前高田市、グランパ)
[連載] 地域が変えるニッポン(第16回)
道の駅を拠点に村づくり(群馬県川場村、田園プラザ川場)
[連載] 地域が変えるニッポン(第15回)
好評ぐんぐん、「アメーラ」地域に活気、雇用を創出(静岡市、サンファーマーズ)
実録! 関西の勇士たち
一覧へワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)
ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)
ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)
ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)
ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄
ビジネストレンド新着記事
注目企業
一覧へワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)
昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

新社長登場
一覧へ「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡
創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

イノベーターズ
一覧へ老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治
フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

大学の挑戦
一覧へ専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長
2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

企業eye
一覧へ不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事
ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…
