政治・経済

投資信託協会は、投資信託市場の健全な発展を目的に活動を展開している。目下のテーマは、NISA開始を追い風にした投資の裾野拡大。白川真会長は、「少額で分散投資ができる投信は初心者にとって魅力的な商品」と説明。「今年1年間が勝負の年」として、業界を挙げた普及拡大に努める。

待機資金が投信市場へ順調に流入

-- 最近の投資信託市場をどのようにご覧になっていますか。

白川真(しらかわ・まこと)
1978年中央大学理工学部卒業、大和証券入社。2009年大和証券グループ本社副社長、12年大和証券投資信託委託社長に就任。昨年6月より現職。

白川 2013年末における国内公募投信の純資産残高は、前年比27・3%増の81兆5232億円となりました。資金は9兆9千億円が流入し、内訳は株式投信4・6兆円、公社債投信5・3兆円となっています。

 公社債投信の資金流入額の約90%はマネーリザーブファンド(MRF)が占めています。昨年末の証券優遇税制終了を受け、投資家が一旦利益を確定したことによって待機資金が集まっています。

 今年に入ってその資金が再び株式や投信に流れ込み、旺盛な投資意欲が鮮明になっています。まさにアベノミクス効果と言えるでしょう。3月に入って株式市場はこう着状態が続いていますが、以前と比較すると投資マインドはかなり前向きになっています。

-- 改めて投資信託の魅力を教えてください。

白川 ほとんどの投信が1万円から購入できるなど、少額から始められるのが特徴です。さまざまな投資対象に運用しているため、少額でもリスクの分散効果が期待できます。ローリスク・ローリターンから、ハイリスク・ハイリターンまで、さまざまなニーズに即した商品が揃っているのも魅力ですね。投資信託には、不動産に投資して、賃貸収入などを得るREITやさまざまな国や企業の債券に投資している商品もあります。

-- デフレ時代と比べて、投信の売れ筋に変化はあるのでしょうか。

白川 毎月分配型投信は、現在でも変わらず多くの支持を集めています。高齢者が年金代わりとして購入するケースは今後も続くでしょう。一方で市況が活発化すると、キャピタルゲイン(値上がり益)狙いのアクティブな投資ニーズが増えるはずです。

 現在、NISA向けファンドをはじめ、多様なニーズに対応した新商品が続々登場しており、毎月分配型に代わって、分配頻度が低い商品も増えております。

「貯蓄から投資へ」の流れを業界全体で推進

-- 投資環境が整備される中で、金融機関の果たすべき役割は。

白川 証券会社しか取り扱うことができない株式と違い、投信は証券会社、メガバンクやゆうちょ銀行をはじめとする全国の金融機関でも販売しています。アクセスポイントの多さでは、株式の比ではありません。特に投信は株式に比べて対面での購入率が高いため、販売担当者に求められる役割は大変大きなものがあります。

 全国の銀行や信金・信組には、預貯金でしか資産を運用していない顧客に、投資の重要性を丁寧に説くことが求められます。金融緩和は今後も継続するでしょうから、当面は預貯金も低金利が続くでしょう。投資になじみの薄い20~50代を中心とした現役世代に、資産形成の大切さを啓蒙していただきたいと考えています。

 また、結婚、マイホーム購入、定年といったライフイベントを乗り越えるために、お金自体に働いてもらうという意識が必要です。「資産に余裕がない」「投資商品は怖くて手が出せない」という方にこそ、積極的に働きかけていくべきです。

-- 投資家の裾野拡大を促すために協会ではどのような取り組みをしていますか。

白川 今年も昨年に引き続いて、NISAの啓蒙活動に力を入れていきます。当協会などの業界団体や証券、銀行等の金融機関各社が積極的な周知活動を行っていますが、認知度が十分とは言えない状態です。講演会やセミナー、刊行物、マスコミへの登場をとおしてより多くの方に知っていただくための努力を続けていきます。

 確かに市況は良くなりましたし、投資に対する国民の理解は深まりました。ただ、NISAを開始しただけで、「貯蓄から投資へ」の流れが加速度的に進むわけではありません。NISA制度の利便性向上に向け、制度改正を働きかける提言活動を行っていきます。

 もちろん販売会社が顧客への最適な商品提案を行い、普及のために努力をする必要があります。制度を改正してもらうためにも、業界を挙げて実績を積み上げていく考えです。初年度である今年1年間が力の入れどころです。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る