政治・経済

今や大手小売りが仕掛けるプライベートブランド(PB)は、定番商品として消費者に広く認知され、売り上げを大きく伸ばしている。しかし、これを実現するにはスケールメリットが必須要件。共同開発PBの販売を開始したライフコーポレーションとヤオコーのPB戦略を検証する。 (本誌/大和賢治)

満を持しての発売!?

川野澄人・ヤオコー社長(左)と岩崎高治・ライフコーポレーション社長

川野澄人・ヤオコー社長(左)と岩崎高治・ライフコーポレーション社長

 9月2日に、食品スーパー最大手のライフコーポレーションと埼玉県を地盤に強固な店舗網を有するヤオコーが共同開発したPB「star select」(スターセレクト)の販売開始を発表した。

 両社は昨年5月15日に資材共同調達、商品共同開発、プロセスセンターの相互活用を骨子とする「業務提携検討に関する覚書」を締結、1年以上を経てようやく共同開発PBの販売にこぎ着けた格好だ。

 「スターセレクト」は8月27日から既に「ロースハム使い切り4パック」(40㌘×4)、「ハーフベーコン使い切り4パック」(38㌘×4)298円を販売開始しており、年内20アイテムを逐次発売する。NBに比べ価格を1〜2割抑えることで、依然として衰えない低価格志向の消費者の取り込みを狙うという。

 両社にとっては、満を持しての販売開始といったところだろうが、どうしてもインパクトに欠ける感は否めない。

 セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」やイオンの「トップバリュ」といった大手小売りの独壇場となっているPB市場だが、両PBがここまで認知度を高めた背景にあるのは価格や品質はもちろん、大きいのは圧倒的な商品数だ。先を行く大手2社は、それぞれ次のステップとして「セブンゴールド」、「トップバリュ セレクト」など高品質・高価格帯のPBを開発するなど、消費者の選択購買の喚起にも成功している。

 今回、食品スーパー首位のライフコーポレーションと24期連続増数増益を達成したヤオコーの両雄がタッグを組むということで注目していたが、アイテム数等、スタートは意外に地味な印象。

 提携を発表して以来1年余、これまでの成果をライフコーポレーションの岩崎高治社長は、

 「ヤオコーさんの愚直に仕事を突き詰める姿勢に刺激を受けたことが大きい」

 一方、ヤオコーの川野澄人社長は、「ライフさんと組んだことで、1社ではできない商品開発が実現した。現状でも非常にいい距離感が保たれている」とそれぞれ述べるが、何やら具体性に欠け、今後、両社の提携が積極化するのだろかという疑念を感じざるを得ない。

 「ライフとヤオコーの共同開発PBといっても、両社ともここに軸足を置いているとは考えられません。そもそもライフは自社のPB『スマイルライフ』を来年度末まで1・3倍に引き上げる計画があります。さらには共同仕入れ会社の日本流通産業(ニチリウ)から仕入れる『くらしモア』というPBを扱っています。一方のヤオコーにしても今年4月に自社PBを刷新した「YES! YAOKO」3ブランドを展開するなど、両社とも自社PB販売の強化を打ち出しています。ここに『スターセレクト』を投入したところで埋没してしまう危険性もあります」(業界関係者)との指摘もある。

想定外の展開

 個人的見解にはなるが、提携発表時の両社の意気込みを感じられないのはなぜか。そこで指摘されるのが、両社のカルチャーの違い。

 大手スーパー幹部は「あくまでも推測ですが」と前置きしながら次のように語る。

 「ライフは食品スーパー最大手だけあってメーカーに対する交渉力を背景にした価格訴求型のイメージが強い。しかし、ヤオコーはデリカ・生鮮で強みを存分に発揮してきたことでも分かるとおり、価格よりも品質に重点を置いてきた。そういう意味では、お互いの相いれない領域が想定以上に広かったのかもしれません」

 昨年の提携発表時、業界関係者が注目したのは共同開発PBよりむしろも生鮮品の仕入れ・加工・配送を一括し行うプロセスセンターの相互活用とデリカの共同開発だ。

 ライフの狙いは、スケールメリット以上に、ヤオコー最大の強味である生鮮管理やデリカのノウハウの享受にあったのではないかと推測するが、前提となるのは、〝品質へのこだわり〟。前述、大手スーパー幹部は「提携に積極性が感じられないのは、〝品質〟に対する意見の相違」を上げる。

 会見時、岩崎社長は、PCセンターの相互活用およびデリカ共同開発の進捗状況に関し、「両項目は弊社から申し入れました。PCセンターを再編して行く中で、一緒に何かできないだろうかということで入れさせていただいた。現在、情報交換はしているが具体的な共同作業までは進んでいません」と述べるにとどまった。

 一方の川野社長も「デリカ業績はこれまで良かったが、ここ数年、他社のキャッチアップもあり苦戦している。現在、品ぞろえや、オペレーションの見直しを行っており、それが一段落した後で今後の議論に入りたい。アイデアとしては一緒にできることがあると思っていますが、具体的にはもう少し先になります」とトーンダウン。

 提携の本丸とも言える、PCセンターの相互活用とデリカの共同開発はひとまず棚上げになった格好だ。

「過去の例から見て、資本関係のない提携では、責任の所在があいまいになりがちですし、緊張感を持続するのは非常に難しい」(業界関係者)

 両社が、これら厳しい指摘をいかに覆していくのか注目だ。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年1月号
[特集]
敗者復活戦

  • ・負けから何を学び、糧にしていくか
  • ・存亡の危機を乗り越えた「熱海」の逆転ストーリー
  • ・あの名門ブランドが、帰って来た(アイワ、ビクター)
  • ・「なるほど家電」を牽引する大手家電メーカーの早期退職組(アイリスオーヤマ)
  • ・関ケ原で敗れた立花宗茂はなぜ、返り咲くことができたのか
  • ・市江正彦(スカイマーク社長)
  • ・加藤智治(ゼビオ社長)

[Special Interview]

 三毛兼承(三菱東京UFJ銀行頭取)

 「旧来の商業銀行は構造不況業種 大変革で信頼と強さを持ち続ける」

[NEWS REPORT]

◆カードローン規制で稼ぎ頭を失う地方銀行の明日

◆12年ぶりのアイボ復活 名実ともにソニー再生は成るか

◆終身権力者も視野に入った習近平が恐れるクーデター

[特集]クルマが変わる、社会を変える

・これから始まる全自動運転 OSを制するのは誰だ!?

・車載電池の性能が左右するEV時代の覇権戦争

・冷える鉄鋼、潤う化学 クルマが変える産業構造

・トヨタ・日産・ホンダ・マツダ 主要4社「わが社の戦略」

ページ上部へ戻る