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キング牧師の行進から50年、差別撤廃は「道半ば」という事実とは

黒人が多く住むニューヨーク・ハーレムのスープキッチン。貧困率の高さ、所得の低さは未だに黒人が抱える問題だ(撮影/津山恵子)

黒人が多く住むニューヨーク・ハーレムのスープキッチン。貧困率の高さ、所得の低さは未だに黒人が抱える問題だ(撮影/津山恵子)

 公民権運動を率いたマーティン・ルーサー・キング牧師が、「アイ・ハブ・ア・ドリーム」と差別撤廃を訴えた1963年のワシントン行進から、8月28日、半世紀がたった。

 50年前のこの日、ワシントンにあるワシントン記念塔前を25万人が埋め尽くし、公民権運動はピークを迎える。その結晶として、翌64年、リンドン・ジョンソン大統領が「公民権法」に署名。州法のもと公然となっていた、人種、宗教、女性などに対する差別を撤廃する連邦法が生まれた。65年には、有権者登録や投票の妨害を禁止する「投票権法」も成立している。

 8月24日は、アフリカ系米国人(黒人)の権利団体などが呼び掛け、ワシントン記念塔前に、約10万人が集結。キング牧師のたどった運動の道筋や、公民権法・投票権法といった彼の「遺産」に思いを馳せた。

 一方で、50周年記念行進は、差別撤廃は「道半ば」という事実も浮き彫りにした。

 1つは、人権団体などが「投票妨害」と批判する「有権者ID法」という州法だ。テキサス州やノースカロライナ州など共和党が強い20州で、既に有効となっているか、あるいは実施に向けた手続きが進んでいる。

 有権者ID法は、投票のために有権者登録をする際、連邦・州政府発行のIDの提示を義務付ける。しかし、 所得が低い黒人やヒスパニック、移民、高齢者、学生などは、有効となる運転免許証やパスポートを持たない率が高い。しかもこれらの有権者層は、民主党の支持層とも重なる。このため、オバマ政権や民主党は有権者ID法を「差別による投票妨害」として反対している。

 24日の50周年記念行進に先立つ22日、エリック・ホルダー司法長官は、テキサス州の有権者ID法は、連邦の投票権法に違反するとして、同州を訴える訴訟を起こした。

 ホルダー長官は24日、記念行進参加者から大声援で迎えられて演台に上り、

 「キング牧師の苦闘は、すべての米国人が投票権を行使できるまで続けなくてはならない。差別から解放され、不必要な手続きや規則に縛られなくなるまでだ」と強調した。

 このほか、いまだに続く差別の象徴として、白人のジョージ・ジマーマンが、黒人青年トレイボン・マーティンを銃殺したものの、自己防衛として無罪となったフロリダ州の事件も、焦点になった。行進では、マーティンの写真のプラカードが多く掲げられ、ジャケットのフードをかぶっていたのをジマーマンが「不審人物」と思ったという証言をもとに、多くの参加者がフードをかぶって練り歩いた。

 マーティンの母サブリナ・フルトンは、行進に際し、英BBCのインタビューに応じ、こう指摘した。

「道は遠いです。なぜなら、10代の子が安全に道を歩くこともできず、誰かの命を奪ってもいいという(自己防衛に銃器を使ってもいいというフロリダ州の)法律があるからです」

差別と偏見の撤廃達成には、まだ時間がかかる米国の動き

 調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、米国民の約半数は、肌の色による差別撤廃は「まだ道半ば」と感じている。同センターは、50周年を迎えるにあたり、8月上旬に成人を対象に調査を実施。キング牧師が演説で「夢」として描いた「人種偏見のない社会」の達成には、まだ多くの問題が残されているという回答は全体の49%に上った。

 また、67年から2011年にかけて、黒人の世帯所得の中央値は約2万4千㌦から約4万㌦に増加した。しかし、白人世帯の所得と比べると、2011年時点で白人世帯の59%で、67年時点の55%から小幅に上昇したに過ぎず、「所得格差」はいまだに歴然としている。

 一方で、キング牧師の「夢」には含まれていなかったものの、彼の「遺産」の最大の成果は、バラク・オバマという黒人初の大統領を生んだことだろう。彼の2回の当選には、今まで大統領選挙に投票をしたこともない多くの黒人や移民、学生、高齢者、女性が投票所に向かった。まさに、公民権法と投票権法のお陰だ。

 オバマ大統領の2選で、女性初、あるいはヒスパニック初という大統領の誕生への道筋もついた。

 しかし、リベラルと保守の間の分断が深い米国では、いまだにこうした流れや、日本では当たり前の投票権といった権利が危うくされる動きが続いている。有権者ID法がその例だ。

 また、人種偏見による「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」も延々と続いている。その犠牲者は黒人だけでなく、アジア人も多く含まれる。米国に住む日本人も、アジア人である限り例外ではなく、常に警戒が必要だ。

 キング牧師の遺産を、すべての米国人と米国に住む外国人が100%引き継げるようになるまで、まだ時間がかかる。

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