政治・経済

台湾大手の中国信託商業銀行が、東京スター銀行の買収を目指している。東京スター銀は前身である東京相和銀行の破綻から、投資ファンドの下で再建を進めてきた。安定株主の獲得で業績の浮揚が期待されるが、収益性強化の点で課題が残る。 (本誌/鈴木健広)

株主変遷の歴史に幕は下りるのか

 かねてから取り沙汰されてきた中国信託商業銀による東京スター銀の買収構想。東京スター銀は「株主の異動に関しては公式なコメントを出せない」(広報)としており、現株主に対して情報提供を要請しているが、「現段階で開示できる情報はない」(同)という。

 中国信託商業銀も「報道に関するすべての質問にお答えできない」(東京支店)と回答する。ローンスターや新生銀行、クレディ・アグルコルといった主要株主もコメントを控えているが、金融業界関係者からは「何らかの交渉が進んでいるのは確か」と事実を認める声も挙がっている。東京スター銀の株主変遷の歴史に、新たな1ページが刻まれる可能性が出てきた。

 東京スター銀の前身は、第二地銀でトップクラスの資金量を誇っていた東京相和銀行だ。同行は創業者の長田庄一氏によるずさんな経営と乱脈融資がたたり、1999年6月に経営破綻した。

 主要株主は、米国系投資ファンドのローンスターを経て、国内ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)に異動。APはローンスターから買収資金を借り受けていた。APは東京スター銀からの年間100億円に及ぶ配当を返済に充てる計画だったが、東京スター銀が金融危機の影響で2009~10年度は2期連続で最終赤字に転落。あてにしていた配当の停止でAPは借金を返済できなくなり、ローンスターを中心とする融資団に株式を譲渡していた。

 これらの経緯があり、「ローンスターが株主に留まるのは一時的」(地銀関係者)とみられてきたが、中国信託商業銀による買収が実現すれば、投資ファンドではなく、営業基盤を持ったれっきとした商業銀行の傘下に入ることになる。

 さて、次は中国信託商業銀の概況を見てみよう。同行は、台湾国内に百数十の営業店と幅広いATM網を有している。「強みはクレジットカードやローンといった個人事業で、法人融資にも一層力を注いでいる」(東京支店)という。海外支店は米国や中国を始めとしたアジア各国にまたがっている。

 ゆうちょ財団の調査によると、台湾には約40の商業銀行が存在するものの、人口が減少基調にあるため、金融再編が進む可能性があるという。台湾の金融機関には、日本以上に海外進出に活路を見出す必要性が生じている。そんな中、中国信託商業銀は「台湾の5倍もの人口を持つ日本の広大な市場に非常に強い関心を抱いている」(銀行関係者)という。

銀行傘下に入っても収益面の課題は残る

 東京スター銀は相次ぐ買収報道にも、「仮に株主が変わっても、業績拡充に向けて取り組む姿勢に変更はない」(広報)と静観の構えだ。

 今期第1四半期決算では、貸出金利息の伸長と、不良債権処理が進んだことによる与信コストの低下が奏功。経常収益が前年同期比18・6%増の202億6700万円、経常利益は59・6%増の76億4100万円と増収増益を果たした。

 一方で、同行が強みとする不動産・船舶向けファイナンスは、市況の変動に左右されやすいというデメリットがある。日本格付研究所の炭谷健志氏は、「景気が傾くことで、好業績に水を差される可能性は否定できない」と指摘する。これに対して、東京スター銀は不動産、船舶ともに融資実行を抑えるなど、リスク対策を進めてきた。同時に同行は「ビジネス機会の創出」を掲げ、中小企業向け融資の強化を始めとして、収益源の多様化を進めている最中だ。

 とはいえ、不動産融資と比較すれば、安定した需要が期待される法人融資の強化も、たやすくはない。「地域金融機関は各地の顧客との強固なリレーションシップを築いてきた。競合しながら収益を上げるのは至難の業」(炭谷氏)だという。もともと各地での取引基盤が十分ではなかったからこそ、不動産を始めとするニッチ市場に活路を見出した経緯もある。需要の伸びが期待できる住宅ローンも、金利競争の激化で収益性が一層低下し、〝採算割れ〟のリスクが高まっている状態だ。

 炭谷氏は中国信託の傘下に入るメリットを「台湾企業が日本で不動産を取得する際のファイナンスに参画できる可能性がある」と推測する。それに加え、安定株主を得ることで中計に基づいた施策を着実に実行できる可能性は高まりそうだ。

 ただ首都圏では、メガバンクを交えた金融機関の間での競争が一層激化している。東京都民銀行と八千代銀行が統合への協議を進めるなど、金融再編の加速もささやかれ始めた。地方銀行としてのプレゼンスを高めるのは簡単ではない。

 炭谷氏は東京スター銀の現状を「競争が加速するといっても経営が急に苦しくなるということはない。好況が続けば業績は堅調に推移する可能性はある」と説明する。売掛債権を担保にしたローンなど、競合が少ないとされる〝独自色〟の強いサービスの推進で、どれだけ経営基盤を強化できるか。経営の真価が問われるのはこれからだ。

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