政治・経済

「大阪都構想はNO」。9月に行われる大阪・堺市長選で、再選を目指す竹山修身・堺市長が日本維新の会共同代表、橋下徹・大阪市長に〝反旗〟を翻した。府市統合の同構想に専念する橋下市長だが、効果が低く実現に赤信号が点滅する。 (ジャーナリスト/宮城健一)

都構想効果は970億円

橋本大阪市長(中央)と松井大阪府知事(右)

橋本大阪市長(中央)と松井大阪府知事(右)

 7月の参議院議員選挙で敗北感に近い思いを感じた橋下大阪市長に、さらに危機感を与えたのが竹山堺市長だった。9月の市長選挙(15日告示、29日投票)に向け竹山市長はさる7月、自民、民主系会派の堺市議や関係者と共にこう訴えた。「堺市を廃止し三分割する都構想は、堺市を新大阪府に吸収し、地方分権に反する」「大阪都構想はいらない、堺市は1つだ」。

 竹山市長は63歳、静岡大学卒業後、1975年から大阪府庁に勤め、商工労働部長、政策企画部長を歴任し09年9月、堺市長選に初当選。この時応援したのが当時の橋下知事だった。橋下知事が街頭に繰り出すなど当時の「維新旋風」の風に乗って自民、民主、公明の相乗りの現職を破り当選した。

 竹山発言に直ちに「裏切り者」と反撃した橋下市長。だが、竹山市長はこう言う。「確かに、前回の選挙で橋下知事に支援を受けた。しかし、橋下知事が大阪都構想を提唱したのは、10年1月、大阪維新の会を結成したのは同年4月。どちらも私が当選後のことです」。

 府と大阪市の二重行政を廃止し効率的な行政で大阪を再生しようと提唱した都構想は、橋下知事の最大の政治公約。その中に組み込まれた隣接の堺市は、人口84万人の政令都市で7区がある。

 竹山市長は反対の理由をはっきり言う。「大阪府と堺市の間には、大阪市のように水道問題や府立と市立の大学や他の公的施設などの二重行政は存在しない。逆に都構想が導入されれば、堺市が分断され財源や権限が奪われ活力が削がれる。私はそれに危機感を持つ」。

 竹山市長には今回強い味方が現れた。アンチ都構想の自民、民主党など地元勢力が結集、共産党までもが支援する体制が固まっている。共産などでつくる市民団体「住みよい堺市をつくる会」は、8月初め竹山市長の支援を決め「具体的な政策への賛否はあるが、市民のためにならない都構想は実現させない」とメッセージを放つ。

 さらにもう1つの市民団体「堺はひとつ市民の会」は「堺は割らない、堺はなくさない、堺はひとつだ」とアピールする。竹山市長は再選された場合、最終的には住民投票で意思を確認したいとしている。

 これに対して怒り心頭の橋下市長。「竹山市長には完全に裏切られた。揚げ句は相乗りなのか」と不満をぶつける。橋下市長が反撃に出たのが、竹山市長との公開討論会の提案。しかし、「この問題は堺市の議員団とするのが筋だ」と、事実上拒否された。そして候補者選びまですっきりとは決まらなかった。

 大阪維新の会は対立候補を擁立しようと、読売TVのアナウンサーを説得したが断られたのが、選挙約1カ月前の8月初め。その数日後に大阪維新の会で堺市議の西林克敏氏が立候補を表明した。

 堺市には府や大阪市に比べ大阪維新の会の市議は52人中11人と少ない。「各党が都構想反対で結束されると、維新の会側には厳しい状態になることは間違いない」と堺市幹部は語る。今回の市長選は、事実上この2人に絞られ「大阪都構想」の是非を問う一騎打ちの戦いになるようだ。

 しかし、先の参院選の比例区の得票からみると、「まだまだ分からない要素もある」というのが現実のようだ。そこで注目されるのが公明党の動向。7月の参院選での比例代表の得票は日本維新の会が約10万900票に対して自民約8万1100票、公明約6万8800票、共産約4万1700票、そして民主2万4800票となっている。自民、民主、共産の3党の票は維新の会を上回るが、決定権は公明票次第だ。

 また、公明は国政では自民と協力し、府と大阪市では維新の会と協調路線を歩んでいる。現在の堺市議会52人の議員の内訳は、公明12人をトップに大阪維新の会11人、民主諸派10人、共産8人、自民7人などとなっている。

 大阪都構想の区割り案と都構想の効果がこのほど、作業部会である法定協議会から提出された。都構想の設計図といえるもので、267万人の大阪市24区を5区あるいは7区に再編する4つの区割り案とその導入効果などだ。

 それによると効果は最大で976億円と意外に小さく、都に移行するための初期コストが最大640億円掛かる上に、効果額とする中には市営地下鉄の民営化275億円やバス民営化17億6900万円、市民サービスなど都構想とは直接関係のない一般改革による額も含まれている。橋下市長が当初掲げていた「最低でも4千億円」とは大きく懸け離れた結果となった。

イメージ崩す公募区長の失態

 同構想に悪いイメージを与えたのが、昨年夏スタートし、構想の前段ともなる「公募区長制」だ。選ばれた24人の公募区長は市長、副市長に次ぐポストで、論文と面接試験を経て昨年、民間人から18人、職員から6人が選ばれた。

 その区長から資格を疑う言動やトラブルを起こす人物が続出した。批判的なツイッターで橋下市長から「区長職の信用を傷つけた」として注意された区長や特定の宗教団体との関係が指摘された区長、「公用車はないのか、自転車では回れない」とクレームをつけ市議会で取り上げられた区長。果てはわずか8カ月で更迭された区長まで。さらにはインターネットに関係する不祥事で市議団の処分を受けた維新の会の市議まで続いた。

 もう1つは維新の会の退潮の流れ。大阪市議会でも二重行政の象徴とされた水道行政の府市統合が5月の市議会で公明、自民、民主、共産の4会派の反対で否決され、地下鉄、市バスの民間への売却はこれまた「NO」だった。

 11年11月の府知事、大阪市長選で公約となった都構想実現が、橋下市長にとって「果たすべき最大のテーマ」だ。失敗すれば政治生命すら失いかねない。参院選後は、おとなしい橋下市長だが、9月告示の堺市長選前に、夏の充電期間を利用してどんな手を打ち出すのか、いよいよ正念場を迎えた。

 

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