政治・経済

少子化と若年層のアルコール離れを背景に前年割れが常態化しているビール系市場。限られたパイを食い合うという厳しい状況の中にあってサントリー酒類は、例外的に元気がいい。 (本誌/大和賢治)

ビール系飲料市場を牽引するサントリー酒類

 8月15日、ビール酒造組合が発表した7月のビール系飲料の市場動向は、猛暑の影響もあり、課税数量で対前年比103・3%の4437万ケース(1ケースは大瓶20本換算)となった。その内訳をみるとビールが対前年105・6%、発泡酒が同97・4%、新ジャンルが102%と、これまで唯一元気だった新ジャンルに加え、今回、ビールも健闘したことは業界にとって久方ぶりに明るい話題を提供することとなった。

 中でもサントリー酒類の業績が際立っている。特にプレミアム市場の拡大に大きく寄与してきた「ザ・プレミアム・モルツ」と新ジャンル「金麦」は、依然として好調に推移する。

 7月の「ザ・プレミアム・モルツ」の販売数量は対前年比112・8%の207万ケースと総市場をはるかに上回る数字を叩きだした。さらに「金麦」も同117・6%と、最近、市場の伸び悩みが顕著となっていた新ジャンル市場の中で高い存在感を示している。

 両製品の好調の要因を同社広報部では、「両製品とも牽引しているのが缶の需要です。特に『ザ・プレミアム・モルツ』は、震災以降、定着した〝家飲み傾向〟を背景にギフト需要も拡大し、さらにはオリジナルサーバーのプレゼント等、実施してきたキャンペーンが需要にうまくマッチしたと考えています」と分析する。

 また、一方でアベノミクス効果による好況感がプレミアムビール市場への追い風となっていることもプラス要因だ。

 「ザ・プレミアム・モルツ」以上に健闘しているのが「金麦」。総市場の縮小に歯止めがかからないビール系飲料の中で、唯一の成長分野と位置付けている新ジャンル市場には、ビール各社が、既存ブランドに加え、もう1つの柱を育てたいという意向を持つ。実際、キリンビールは「澄みきり」、アサヒビールは「クリアアサヒプライムリッチ」、サッポロビールも「極ZERO」といった大型商品を昨年来、続々と投入するなど限られたパイの争奪戦が繰り広げられている。

 激戦の中にあっても「金麦」は、キリンビールのトップブランド「のどごし〈生〉」やアサヒビールの「クリアアサヒ」といった強豪がひしめく中で、消費者から定番商品として広く認知されたことが大きい。昨年の出荷量では、アサヒビールの「クリアアサヒ」を抑え、新ジャンル市場でシェア2位に躍り出たことが、何よりそれを証明している。

 「『金麦』の昨年のシェアは25%と『のどごし〈生〉』の36・4%には10%以上の差がありますが、前年割れとなった『のどごし〈生〉』に対し『金麦』はプラスに推移しました。さらには派生商品の『金麦〈糖質70%オフ〉』も目標値の40%増を記録するなど新ジャンルで消費者の支持を拡大しています」(業界関係者)

 さらに「金麦〈糖質70%オフ〉」は7月も前年比で130・5%を記録するなどその勢いは依然として衰えを見せない。

サントリー酒類の戦略 既存ブランドへ資源を集中

 新ジャンル市場には続々と新製品が投入されていることは前述したが、〝1度は飲んでみよう〟というトライアル層により、発売直後はそこそこの売れ行きを示すが、その多くは定着しないまま棚から姿を消すケースがほとんどだ。

 そんな状況を考慮すれば、同社の「金麦〈糖質70%オフ〉」が一定の支持を得ていることの意義は小さくない。

 「『金麦〈糖質70%オフ〉』の成功は、既存ブランドとして認知度の高い『金麦』の派生商品とした点も大きいでしょう。商品特性の違いを新ブランドで訴求しようとしても、認知されるまでには非常に時間がかかる。一方で、新製品が続々と発売される中で、差別化を謳うには、もはや機能性を訴求する以外には難しい。しかし、小売りがポスレジで売れ筋を管理している現状では、売れ行きが落ちれば、たちまち棚落ちのターゲットにされるのです。短期間で商品を育てられないという環境にある以上、新製品には高いリスクが伴うことは避けられない。そういう観点からも認知度が高い既存ブランドを使用するということは大変に有効なのです」(業界関係者)

 確かにここ数年のサントリー酒類のマーケティング戦略を見ると、他社が新製品の開発に躍起になっているのを横目に、既存の「ザ・プレミアム・モルツ」や「金麦」のブラッシュアップに注力してきた。

 昨年3月には順調に売り上げを伸ばしてきた「ザ・プレミアム・モルツ」の中身をあえて大幅に刷新、昨年はシェアを14・2%まで伸ばし過去最高を記録した。新ジャンルにしても同様に「金麦」という既存ブランドにマーケティング活動を集中したことが勝因と言ってもいいだろう。

 ここ数年、縮小し続けるビール系市場に危機感を抱いてきたビール各社は、大手流通とコラボしたプライベートブランド(PB)の開発にも積極的に乗り出している。しかし、これは下手をすると自社製品とのカニバリを誘発するもろ刃の剣にもなりかねない。ビール各社にとって、強い自社ブランドを定着させることが盤石な地盤を築く前提となる。そういう意味からすると、サントリー酒類のとってきた既存ブランドのブラッシュアップ戦略は理想的な施策なのかもしれない。

 8月に入っても猛暑は続いており、ビール系飲料の販売数量は前年を上回ることが予想される。そんな中で、サントリー酒類がこの好調を維持し続けるのか注目したい。

 

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