政治・経済

調達出身の社長として生産性向上を推進

田中久雄・東芝社長

田中久雄・東芝社長

 東芝の田中久雄社長が、就任後初めてとなる経営方針説明会で今後の戦略を語った。

 前社長の佐々木則夫副会長は、リーマンショック以降の立て直しを進めたが、在任中の売上高は減少傾向にあった。このため、田中社長には東芝を再び成長軌道に乗せることが期待されている。今回発表した3カ年の中期計画では、2015年度に売上高を7兆円、営業利益を4千億円まで拡大する。田中社長としても、「今年度を起点として成長への回帰を図る」とし、目標達成への決意をうかがわせた。

 田中社長は、東芝社長としては異例の調達部門の出身。資材調達や生産管理におけるコスト低減などで手腕を発揮してきた。今回の経営方針にも、そのキャリアの強みが表れている。売り上げの増大を掲げながらも、リソース再配置や収益性向上を意識した施策を展開する。

 中期計画では、「ニューコンセプトイノベーション」として、社内外の幅広いリソースを活用して新たな価値を創造していく方針を示した。新たな価値創造という意味では、原子力発電を中心とするエネルギー、半導体を中心とするストレージに続く第3の柱としてヘルスケアに注力する。ヘルスケア分野は、画像周辺医療領域と予防・予後ビジネスで事業拡大を図る。

 リソースの活用は、REGZAで培った画像処理技術を道路インフラの老朽化診断に活用、またグラスレス3Dテレビの技術とCTスキャナ技術を組み合わせて医療用グラスレス3D製品を商品化することなどを想定。高度なディスプレー技術は民生用ではハイスペックの場合もあり、収益を悪化させる一因となっているが、産業用製品への展開ならば採算が合う。ニューコンセプトイノベーションに限らず、こうしたBtoBへの展開を積極的に図る方針。

 さらに今年10月をめどに現行の4つの事業セグメントを5つの事業部門に再編する。そして、すべての領域・業務で現状のプロセスをゼロベースから見直し、拠点の最適化や調達・物流費の削減を行い、生産性の向上をさらに進める。2本柱についても、半導体は四日市工場の次世代NANDフラッシュメモリの設備投資を積極的に行う方針で、「他社を凌駕する製品を出せる」と自信をのぞかせる。また、原子力発電は「脱CO2の有効なオプション」と位置付け、工期短縮やコスト削減を進め、天然ガスに負けない提案を行う方針。

 ここまで見ると、田中社長らしさが前面に出た格好の経営計画という印象を受ける。懸念は電機メーカーの中でも比較的好調な業績を上げている同社がドラスティックに変わり過ぎることだろうか。特に事業再編は04年以来というだけに、今そこまでの必要があるのか、一抹の不安は残る。 (本誌/村田晋一郎)

 
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