政治・経済

小泉進次郎、河野太郎の「脱原発」に自民党内は警戒感

棋士・小沢一郎が読む「脱原発」野党再編

イラスト/のり

 伊吹文明衆院議長は3月11日、東京都内で行われた「東日本大震災3周年追悼式」の式辞で、こう述べた。

 「エネルギーの在り方について、現実社会を混乱させることなく、将来の脱原発を見据えて議論を尽くして参りたいと存じます」

 伊吹氏は、当選10回を重ねる自民党の重鎮。議長就任で自民党会派を離脱しているが、「脱原発は無責任」(安倍晋三首相)という“党の主張”とは一線を画し、官邸周辺からは「4月から消費税増税が実施される。これからが正念場なのに、あまりにも無責任な発言」といった怒りの声が聞こえてくる。

 脱原発——。東日本大震災の福島第1原発事故以降、議論されてきた問題だが、2012年12月の衆院選で自民党が政権を奪還し、安倍首相が原発輸出に精力的に乗り出してから、再稼働を期待する声も多い。

 そんな自民党内で反原発の声を挙げてきたのは、河野太郎衆院議員。12年3月に発足した超党派の「原発ゼロの会」の共同代表を務めている。

 そして、もうひとり。震災後、足繁く被災地に通い、被災者の声を汲み上げ、寄り添ってきた小泉進次郎衆院議員。これまで、演説などで「自民党は原発推進政党ではありません」と言ってきたため、「彼は“隠れ脱原発”だ。親子だから、それも当然だろう」(自民党中堅衆院議員)などと言われてきた。父親は言わずと知れた小泉純一郎元首相。今年2月の都知事選で、細川護熙元首相との“元首相コンビ”で脱原発を掲げ、訴えた。

 政界きっての発言力を持つこの2人が今後、脱原発の声を高めることに党内では警戒感を示している。その中での伊吹発言に神経質になるのは当然だろう。この伊吹発言をかき消すように、3月13日には菅義偉官房長官が「方向性が出たものについては政府として稼働させていく」と、原発再稼働の方針をあらためて強調。原子力規制委員会が、九州電力川内原発1、2号機について優先的に審査を進めることを決定したのだ。

 自民党ベテラン議員は語る。

 「増税実施以降、内閣支持率が、もし、危険水域と言われる30%を切るレベルになれば、党内で“安倍降ろし”も出てくる。加えて、原発再稼働問題の議論が盛んになれば、一気に政局になりかねない。自民党にとって幸いなことは、野党が軒並みだらしない状態に陥っていることだ」

 この言葉どおり、野党再編が囁かれる中、依然としてその機運が見られない。しかし、その自民党ベテラン議員の懸念が現実化する可能性がある。かつての輝きを失い、「もう終わった」と永田町では言われている小沢一郎・生活の党代表だ。

 

「脱原発」を対立軸に野党再編を狙う小沢一郎

 小沢氏は3月5日、東京・有楽町の外国特派員協会で側近の松崎哲久前衆院議員の著書『リーダーのための歴史に学ぶ決断の技術』(朝日新書)の刊行記念のトークイベントに出演。その席上、小沢氏は、野党再編への意欲を口にしたのだ。

 「原発などで対立軸が出ている。グループ化がはっきりできる状況だ」「来年は統一地方選がある。それを考えれば、今年中にめどを付けなければならない」

 後日、松崎氏は地元・埼玉県坂戸市の事務所で、小沢氏の胸中をこう読み解いた。

 「今年終盤、11月から12月にかけて、福島と沖縄の県知事選が行われます。日本の国論を二分するテーマとなる『原発』『基地』を抱えた首長選です。ここで野党再編というより、現政権のままでいいのか、違う方向性を野党が示すことができるのかを問うことになるのではないでしょうか。その上で、統一地方選の結果を見て、再来年の衆参W選挙を前に本格的な野党再編に向けて動き出すものと思われます」

 ある自民党ベテラン秘書の解説はちょっと洒落ている。

 「09年の政権交代選挙後、当時は小沢氏の中押し勝ちかと思った。しかし、その後3年間を見て、逆に小沢氏の中押し負けで、いつ投了するかと見ていたが、どうも違うようだ。どうやら、ようやく終盤に入った感じで、まだコミ以上の差で負けているようでも、小沢氏の読みではヨセの手筋で逆転の可能性があると睨んでいるのではないか」

 中押し、コミ、ヨセは囲碁用語。というのも、小沢氏は政界きっての囲碁の名手で、ベテラン秘書はその囲碁の名手ならではの解説をしてくれたのだ。さらに今後の最大のポイントは、福島県知事選ではないかと推測。

 「県知事選で小泉氏と小沢氏が脱原発候補を応援し、勝てば脱原発勢力の結集が見えてくる。それは野党再編にとどまらず、自民党の崩壊も意味する」

 果たして、長い長い“小沢氏の対局”は、脱原発が“逆転の勝負手”になるのだろうか。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

「消費者が電力の供給者を自由に選択できる時代へ」―― 再エネ主体の「顔の見えるでんき」をコンセプトに掲げるみんな電力が目指すのは、富が一部の人々に独占されないフェアな世界だ。法人顧客を中心に、同社への支持が集まっている理由を大石英司社長に聞いた。(吉田浩)大石英司・みんな電力社長プロフィール 消費者が発電事業…

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る