文化・ライフ

睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病との因果関係も未解明

 事故の原因が何かの病気と関係があると推測されたとき、どうもメディアは一方的で冷静な分析を忘れがちになる。

 例えば、ドライバーが運転中に寝てしまい、事故を起こすと、すぐに「睡眠時無呼吸症候群」が原因ではないかと騒ぎ立てる。

 分かりやすさをウリにするテレビとしては、事故の原因を、特定の病気にひも付けたくなるのだろう。だが、問題なのは、日中に眠気の発作が出る病気はさまざまであり、睡眠発作イコール睡眠時無呼吸症候群ではないことだ。

 実のところ、日中に出る病的な眠気の診断は難しい。難しいというより、検査に手間がかかる。

 例えば日中、発作的に眠気が出る病気に「ナルコレプシー」という病気がある。これは、笑った後などに急に眠気が出て眠り込んでしまうといったものだ。

 ナルコレプシーは薬による治療もある程度できる。しかし、この病気の専門家は少なく、医者であっても、実際の患者に遭遇することはめったにない。ゆえに、運転中の睡眠発作がナルコレプシーであると推測されることも少ない。

 てんかんが原因でも、けいれんがなく、意識消失が突然起こるタイプがあり、それが「日中の発作的な眠気」と誤って診断されることもある。結果、「運転中に寝てしまう」という表現になる。

 このように、運転中に睡眠発作を起こす病気はいろいろあり、睡眠時無呼吸症候群にすべての原因を求めるのは短絡的であり、危険だ。さまざまな原因が考えられる病気では、その診断も難しく、本当の原因が分からないケースも少なくないのである。

 睡眠時無呼吸症候群については、それを「生活習慣病の危険因子」とする論調もある。ただし、睡眠時無呼吸症候群が疫学的に、本当にいろいろな病気の危険因子になるのかについても信頼性の高い答えがまだないのが現状である。

睡眠時無呼吸症候群の診断に営業上のバイアスがかかりやすい理由とは

 睡眠時無呼吸症候群には、もう1つの問題がある。それは、睡眠時に無呼吸の発作が起きると、すべてが睡眠時無呼吸症候群と診断されてしまう危険性だ。

 もちろん、診断基準があるので、無呼吸発作があるだけで、睡眠時無呼吸症候群とは単純に断定されないだろう。とはいえ、この病気を確実に診断するには、専門の医療施設に宿泊し、睡眠に関する詳しい検査を受けなければならない。

 本来、そうした専門の医療施設は、客観的で精度の高い診断を行うべきである。ところが、そこに利益追求(患者数を増やすこと)の思惑が絡まると、実際の病的な意味を持たないような「オーバーダイアグノーシス(過剰な診断)」がなされる可能性がある。

 医療機器の購入には相応の出費が必要で、それで利益を上げられなければ、医者もやっていけない。結果、過剰な検査や診断に走ってしまうおそれがあるということだ。

 しかも、睡眠時無呼吸症候群と一度診断されると、定期的に医療機関に通わなければならなくなる。これは逆に言えば、睡眠時無呼吸症候群と診断することは、医療機関の利益に直結することなのである。ゆえに、睡眠時無呼吸症候群の診断に営業上のバイアスがかかりやすいことは否定できない。

問われる睡眠時無呼吸症候群の診断の中立性

 医学で診療する側は、客観的で利益とは無関係の立場にあるのが理想だ。しかし現実には、利益度外視で診断治療をしていくのはなかなか難しい。

 例えば、血液検査で血液中の悪玉コレステロールが、基準値よりも1つ多いだけで、診断では異常と出る。営利に走る医者ならば、そこから薬を使って治療を開始することになるだろう。

 しかし、同じ異常値でも、年齢や他のリスクを考慮して、治療薬を出さない医者もいる。極論すれば、検査結果が同じでも、医者の裁量で、病気になったり、ならなかったりするケースもあり得るということだ。

 どんな病気にも診断基準があり、それを元にした診断が行われる。しかし、いかなる診断基準があろうとも、最終的な診断を下すのは医者であり、そこには必ず人為的な要素が入り込む。

 そんなふうに、さまざまな要素を取り込み、診断を行うからこそ、本当の医療が成立すると言えるのだが、それが利益追求に結び付いてしまうのも、また医療である。

 睡眠時無呼吸症候群にしても、数値による診断が基本とはいえ、最終的な診断をするのは、やはり医者だ。そこに利益追求の思惑が入り込む余地がないとは言い切れない。だからこそ、メディアの報道を鵜呑みにすることなく、多角的な視点で物事をとらえていくことが肝心なのである。

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