文化・ライフ

 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック招致の最終プレゼンテーションでは、滝川クリステルさんが、日本人が今日まで大切にしてきた「お・も・て・な・し」の心を素敵なジェスチャーを付けて世界に発信してくれましたね。

 日本人が感謝の気持ちを伝える際に用いる、胸の前で手を合わせるしぐさは、外国人から見てもとても美しく、多くの人の心に訴えかける力が伝わったのでしょう。

 真の国際化とは、自国が先人より受け継いできた尊い習慣や文化を堂々と語れることも重要な要素ですよね。日本人が江戸時代から大切に築きあげた人付き合いの知恵と心遣いの習慣である「江戸しぐさ」もまた、世界にアピールし次世代に継承していきたい日本人の心の文化の1つだと思っています。

 そもそも、おもてなしの心は江戸時代の人付き合いから生まれたようです。当時の町方では庶民の生活が豊かになり始めると、さまざまな立場の人が各々の考えを持ち寄って集う「講」の場が増えてきました。講は現代で言うところの会合や勉強会、1つの目的のために行う公のイベントごとと同じです。

 規模の大小にかかわらず、会を成功に導くために自らが中心となり〝気配り気遣い気働き〟をもって参加者をもてなすことが必要です。その係の人を「お梭がかり(おひがかり)」と呼び、円滑な運営のために重要な役割ととらえられていました。現代でいう主催者であり幹事役にあたります。

 「梭」とは機織りをする時、緯糸(よこいと)を経糸(たていと)の間にくぐらせるための大事な道具です。人が集まって何かをしようとするとき、誰かがこの「梭」の役目を果たさなければ、物事はスムーズに進行しません。

 常に周囲を見渡して臨機応変に対応し、参加者が心をひとつにその時間と空間を快適に過ごせるよう心を配る。会が大盛況を遂げたときは、必ずと言っていいほどこの名幹事役である「お梭がかり」が活躍したと言われたそうです。幹事次第でその会の充実度が決まるのは、江戸も現代も同じですね。

 江戸しぐさでは、縁の下の力持ちでありリーダーとしての資質が試される、この「お梭がかり」の役割は自ら〝買って出よ〟と説いています。

 まさに日本は、7年後の五輪に向けて異文化の懸け橋となる、この責任ある大役を自ら買って出たことは誇らしく、震災の復興と共に経済の発展にも大きな希望をもたらしてくれました。

 時間をかけて1本1本の糸をつなぎ、最終的に1枚の美しく頑丈な織物を完成させる「梭」のように、今こそ世のため人のため、社会のためにひと肌脱ぎたいものですね。

 

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