政治・経済

 あらためて議論しよう。デフレ脱却とは、文字通りに解釈すれば、デフレからインフレになるということだ。デフレとは、物価が継続的に下落することであり、インフレは物価が継続的に上昇するということだ。

 なぜ物価は上昇するのか。オーソドックスなマクロ経済理論では、日本経済の実力である潜在成長率を現実のGDP成長率が上回れば、短期的に過熱しているわけだから物価は上昇するはずだ。不況を脱すれば物価は上がるはずであり、物価が上がれば不況を脱するわけではない。

 過熱していれば物価が上がるというのは自明ではない。過熱すれば物価が上がる理由は2つ。普通のマクロ理論では、供給サイドで考え、過熱とは、資本と労働という2つの生産要素が完全雇用を上回って利用され、資本へのリターン、労働への賃金を引き上げないと持続不可能になるため、これらの生産コストが上がり、物価が上がるというメカニズムだ。

 しかし現実には賃金は上がっていないし利子率も上がっていない。どういうことか。

 それはもう1つのメカニズムである需要の話である。価格は需要と供給のバランスで決まる。原油やCPUのように100%輸入されるものでドル価格が決まっていれば、供給サイドで価格が決まるが、それ以外のものは需要で価格は決まる。

 今は実は、需要は強い。だから失業率も低い。全体の失業率は3・8%、女性は3・3%で15年ぶりの低い水準だ。だから、マクロ的には景気が良いのだ。

 それなのに、なぜ賃金は上がらないのか。それは、これまでの正規雇用の中高所得者の賃金水準が高過ぎたからであり、団塊世代の退職に伴い、彼らが若年層などに置き換わるから、単価が安いので、平均で見ると下がり続けるのだ。また、金利は、国債市場の動きだけで決まっていて、実際の資金ニーズは強まってきている。

 したがって、日本の景気の現状は短期的にはものすごく良く、賃金なども質的には上昇傾向にあり、物価もコスト増の面とともに、上がる可能性がある。つまり、物価は貨幣的現象でも金融的現象でもなく、需要によるのであり、また金融市場は日銀の政策に歪められているので、実体経済を反映しない。だから、物価、賃金、金利などの本来はシグナルとしての機能を持つ価格が情報価値を失っているのだ。したがって、この機能不全の物価に注目することは誤りで、今後も失業率と雇用に注目して日本経済を見ることが必要だ。

 

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