文化・ライフ

 江戸時代は、幕府を頂点に地方ごとに藩で構成された各地の大名が、それぞれの領地を支配する幕藩体制のもと社会のしくみが確立されていました。

 現代と比べてみても、地方ごとに話す言葉や生活習慣の違いは大きかったため、江戸に来た人々は、お互いにまるで外国を訪れ外国人と接するかのような文化の違いを感じたことでしょう。

 異文化のるつぼと化した江戸の町で、皆が気持ちよく稼ぎ、どんな身分(立場)の人も安全に心地よく暮らせるようにと生みだされた暗黙のルールと知恵、心遣いが江戸しぐさなのです。その数多ある教えの言葉を通して伝えている最大のテーマは「異文化との共生」です。

 江戸しぐさでは、これを「外つ国付き合い(とつくにつきあい)」といい、争いやトラブルを避け、平和な社会を保つための手立てと人づきあいの仕方を説いています。

 外つ国は、江戸の外(外国)、そこで暮らす外つ国人は江戸の外で暮らす人や外国人の意。

 そこから、外つ国付き合いとは、外国人も含めて初対面の人やまだ親しくない相手、さらには考え方の異なる〝あらゆる他人との付き合い方〟を示しているのです。

 つまり、身近な人を気遣うのはもちろんですが、〝知らない相手とどう付き合うか〟が江戸しぐさの極意。ある意味、とても商人道らしいリーダーの行動哲学なのです。

 江戸に共生(きょうせい)という言葉こそなくとも、その思想は人々に浸透していました。

 人は自然と共に生き、社会の中で生かされている。どんな立場の者もひとりきりで生きているのではなく、家族や仲間たちに見守られ、多くの他人とかかわり合いながら、皆共に生きているという考え方から、後に「共生(ともいき)」と言われました。

 江戸しぐさの掲げる共生の基本は、自立した者同士の互角の付き合い。

 まずは、共倒れしない危機管理能力が条件となります。経験から学び体感を通して得た教訓を糧に、自らが主体的な生き方を示すことで、人を導き自立した人材を育てることが重要でした。

 人の上に立つ者のごく当たり前の丁寧な生き方が自らの身を立て、その結果として他人をも潤うこととなり、社会全体を発展させることが共生につながると、一人ひとりが考え実行したのです。

 そうして築きあげた、自立した他人同士が互角に向き合い、互角に言い合い、互角に付き合える関係を良好に保つことが、小さな外交とも言える「外つ国付き合い」である異文化との共生の真意なのです。

 ふだんの何気ない〝他人への思草〟にこそ、リーダーとしてのセンスが垣間見えたりしますね。

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