国際

オバマ大統領の英語 より良い父に

 オバマの父親はケニアから米国の大学への留学生で、カンザスから来ていた白人女子大生を妊娠させてからほどなくして、母と子を捨ててケニアに帰ってしまった。実はケニアにも妻がいたのである。この捨てられた子はやがてオバマ大統領になるわけだが、こうして父親に捨てられた記憶は長くトラウマになっており、オバマを苦しめ、彼の最初の著書『マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝(Dreams from My Father: A Story of Race and Inheritance)』の大きなテーマの1つにもなった。

 オバマは繰り返し、黒人男性をはじめとする父親全般に「父親としての自覚と責任感を持つように」と訴えてきた。

 先日、オバマはモアハウス大学で卒業生を前にスピーチをしたが、その内容は、「これからは、もう黒人であるということを言い訳にしてはいけない」という厳しいメッセージをユーモアたっぷりに説いたものだった。モアハウス大はジョージア州アトランタ市にある屈指の名門私立大学で多くの著名人を輩出している。設立当初は満足な教育を受ける権利を認められていなかった黒人男子のためだけの大学であったが、現在では人種にかかわらず、志願をし審査を通った男性であれば入学できる。ただし、現在でも在籍する学生は99%が黒人。要は、黒人卒業生を前に初の黒人大統領であるオバマが心を込めた卒業の言葉を贈ったということになる。

“We know that too many young men in our community continue to make bad choices,

〈われわれ黒人コミュニティーに属する多くの若者が、間違った選択をしていることが明らかになってきております〉

Growing up, I made quite a few myself.

〈成長する過程において、私も多くの間違いを犯しました〉

Sometimes I wrote off my own failings as just another example of the world trying to keep a black man down.

〈時に私は、自分の失敗を、あたかもこの世界が仕組んだ黒人男性を陥れる罠のためだ、というように書き置いたりしたものです〉

I had a tendency sometimes to make excuses for me not doing the right thing.”

〈私にも時に、正しきことができなかった場合、言い訳に走ってしまう傾向がありました〉

“Not because racism and discrimination no longer exist; we know those are still out there,

〈これは何も人種差別がもはや存在しないということではありません。そういうものがいまだ存在することは皆分かっております〉

It’s just that in today’s hyper-connected, hyper-competitive world, with millions of young people from China and India and Brazil, many of whom started with a whole lot less than all of you did, all of them entering the global workforce alongside you, nobody is going to give you anything that you haven’t earned.

〈現在、あなたたちほど恵まれた環境にないところから這い上がろうとしている何百万という、中国やインドやブラジルの若者が、このハイパーにつながっている社会、ハイパーに世界レベルで競争している社会で、世界的な労働市場に向けて群がってきており、そんな彼らには、彼ら独自の力で得たもの以外のものを、誰か他人が差し出してくれたりはしない厳しい世界なのです〉

And moreover you have to remember that whatever you’ve gone through pales in comparison to the hardships previous generations endured – and they overcame, and if they overcame them, you can overcome them too.”

〈それでも君たちの経験していることは君たちの先祖が受けて来た困難な状況に比べれば色褪せて見えるのだということは覚えておいてほしいのです。しかもわれわれの先祖はそれらを乗り越えてきたのであり、彼らに乗り越えられたのならば、君たちだってきっと乗り越えられることなのです〉

 世界には70億人という人間が住んでおり、それぞれが必死で生きようとしている。だから文句を垂れたり、言い訳をしている場合ではないのだよ、諸君! というのがオバマの言いたいことだ。

 

[今号の英語]break the cycle
 break the cycleというのは、連鎖を断つ、という意味で、a vicious cycle 悪循環、を断ちたいなら、break the vicious cycleとなる。
 卒業したら、それぞれ社会に貢献してほしいと言ったオバマは自分の父親の行動に関することに言及している。
“Everything else is unfulfilled if we fail at family,
〈しかし、家族を守れなかったら、すべては中途半端になってしまいます〉
I still wish I had a father who was not only present, but involved,
〈今でも私は、いつでもそばにいてくれる父親、それも、家族にかかわってくれる父親がいたら、どれだけ良かったろうかと強く望んでいることがあります〉
“And so my whole life, I’ve tried to be for Michelle and my girls what my father wasn’t for my mother and me. ”
〈私はこれまでの半生を、妻ミシェルと2人の娘のために、私の父が私と私の母にしてやれなかったことをしようと努めてきました〉
“I want to break that cycle. ”
〈私はこうした連鎖を断ち切りたいのです〉
“I want to be a better father, a better husband and a better man.”
〈私はより良い父に、より良い夫に、そしてより良い人間になりたいのです〉
 オバマは自分たちを捨てた父親のトラウマを敢えて自分の中から消し去らないようにしているようだ。

 

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