政治・経済

日本郵政グループが今年2月26日、「中期経営計画」を発表した。2014年度から16年度の3年間で、不動産開発などに総額1兆3千億円を投資。連結純利益3500億円を達成し、15年春の上場を目指すとしているが、目標達成にはさまざまな懸念材料がある。文=ジャーナリスト/木村正直

 日本郵政代が代理店に成り下がる

西室泰三・日本郵政社長(Photo:時事)

西室泰三・日本郵政社長(Photo:時事)

 日本郵政グループ稼ぎ頭はゆうちょ銀行である。だが、融資解禁は認められず、縮小均衡にあるかんぽ生命保険も危険水域にある。さらに消費増税での郵便料金の引き上げが上場計画に暗い影を落としている。

 日本郵政と米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)は昨年7月、がん保険の販売で提携した。西室泰三社長は「2015年の上場を目指す中で、最も必要とされているのは経営を上向かせるためのスピード」とアフラックとの提携で上場を早めると強調した。

 日本郵政は簡易局を除く全国2万の郵便局でアフラックのがん保険を販売するほか、かんぽ生命と販売代理店契約を結び、かんぽ生命の79の直営店でも取り扱うという。

 昨年6月に日本郵政の社長に就任した西室氏は、アフラックとの提携を機に株式上場を計画より半年早め、15年春とする方針を表明した。そのためにはかんぽ生命単独の利益よりもグループの核となる郵便局の手数料収入増加を優先し、グループ全体の資産評価を高める必要があった。が、郵便局ばかりか、かんぽ生命もアフラックの代理店に成り下がる。

 政府の規制で新規の保険商品を発売することができないかんぽ生命の総資産額は民営化した07年度の115兆円から20兆円強も減り、現在では100兆円の大台を割っている。かんぽ生命の生命保険限度額は最大1300万円に制限され、死亡補償希望額の男性平均約4千万円、女性約2千万円の要求を満たせない上、拡大するがん保険など第三分野市場に参入できないからだ。

 民営化されたかんぽ生命は当初、がん保険など第三分野への参入を10年度に予定していたが、米保険業界は日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加をめぐり「政府の経営への関与が残る同グループが業務を拡大するのは遺憾」と非難していた。西室氏自身も郵政民営化委員長時代、米国に配慮してがん保険参入を認めなかったのだ。

 注目すべきは、かんぽ生命と日本法人アフラックとの提携ではなく、西室氏が社長を務める持ち株会社の日本郵政と米アフラック本社との提携であることだ。米政府とアフラック、米国通の西室氏との密約説が取りざたされるのもこの点にある。

露呈した日本郵政上場への準備不足

 こうした状況に追い打ちをかけるのが、株式上場の準備不足だ。見かけ上は巨額な利益が出ているが、実際はシステム更新などかけるべき投資を削減してきたツケが回っている。

 貯金残高が177兆円を超える超メガバンクのゆうちょ銀だが、自前で住宅ローンや企業貸し付け業務に参入する計画も米国や国内の民間銀行、農協などの反発で頓挫している。西室氏は当時、新規業務をチェックする政府の民営化委員会委員長だった。今は当の郵政社長なのも皮肉な縁だ。

 グループ経営の屋台骨を支えるゆうちょ銀の貯金残高は1999年の約260兆円をピークに年々減少している。金融資産の7割以上を利回りが低い国債で運用しているゆうちょ銀は、貯金残高が150兆円を割ると赤字に転落する危険性をはらむ。

 バブル期の高金利定額貯金の満期に伴う資金の流出に加え、郵貯預入限度額は1千万円に制限されている。身内の郵政グループの正職員の退職金の受け入れすらできないのだ。20万人もいる郵政職員の退職金は都銀や地銀、信金や信組、そしてJAバンクに持って行かれるばかりだ。

 全国にネットワークを持つ郵便局において、郵便や「ゆうパック」などの取り次ぎで受け取る窓口手数料収入は年間1千億円程度にすぎない。ゆうちょ銀からの銀行代理店手数料収入は年間約3千億円、かんぽ生命保険からの代理業務手数料収入は2千億円である。経営を支えているのは金融2社だが、手足を縛られている状況で、ますます国債偏重の資金運用になっている。

 郵便事業も苦しい。コンビニ大手のサークルKサンクスは宅配便の取り次ぎを「ゆうパック」からヤマト運輸の「宅急便」に切り替えた。コンビニ業界では最大手のセブン-イレブン・ジャパンと同3位のファミリーマートはヤマトの宅急便を扱う。全国に約6200店の店舗を持つサークルKの拠点を失ったことは、郵便事業にとって大きな痛手だ。

 10年7月に日本通運の旧「ペリカン便」を吸収したゆうパックだが、am/pmもファミマとの統合で宅急便に移行している。コンビニでのゆうパック取り扱いは大手ではローソンとミニストップの2社に減り、全国4万6千店あるコンビニのうちゆうパックの扱い店は1万4千店まで縮小。国内宅配便のシェアは1割強にすぎず、ヤマト、佐川急便との差は開くばかりだ。

 西室社長は「来年4月以降、いつでも上場できる体制になっていると思う。今年前半には上場計画をつくる」と強気な姿勢を崩していない。しかし、株価純資産倍率(PBR)、経費率(OHR)が示されないまま上場が認可されることはない。PBRは1倍を切っているとされる。東京証券取引所会長だった西室氏がそのことを知らないはずはないのだが……。

 

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