政治・経済

中古ブランド品買い取り・販売大手の「大黒屋」が急成長している。中古ブランド品を取り扱う店は多いが、同社の特徴は質店を併営していること。商品の目利きには絶対的な自信があり、アジアへの進出も見えてきた。(文=本誌・編集委員/清水克久)

大黒屋の特徴は質屋で培った目利き力

062_2014422_02

アジアからの観光客が多数訪れる新宿本店

 東京都内の繁華街で中古ブランド品を取り扱う店は連日、多数の顧客で賑わっている。客層の半分はアジアからの観光客で、故郷へのお土産で買っていく人もいれば、中には日本で・仕入れ・て、母国で販売する目的で買い付ける人も多いという。

 外国人が日本の中古ブランドに目を付けているのは、商品への信頼性が高いからだ。大黒屋の小川浩平社長は「日本人が鑑定し、値付けしていることへの信頼性もありますが、アジアでは・大黒屋が1つのブランドともなっており、うちの販売タグが付いていれば、それだけで信用されます。万が一にも偽物だったら、買い戻しの保証もあります」という。

 現在は東京都の7店舗をはじめ大阪府、愛知県など、全国の主要大都市に19カ店を出店しているが、いずれも好調で、この先、更なる出店やM&Aを通じた拡大を検討している。

 中古ブランド品を取り扱う会社は他にもあるが、1946年創業の大黒屋はもともと、質屋が発祥という特徴がある。質屋とは、顧客が持ち込んでくる商品を担保に現金を融資するサービスであるが、それだけ目利きの力が必要になる。偽物を見破ることはもちろんだが、その商品を売る場合の適性な値付けも大事だ。

 「買い取り価格は市場価格でもありますが、利益を出すために在庫回転率を高める努力をしています。同業他社と比較して、在庫回転率は30日程度違うと思います。うちの商品が売れているのは、他社より割安、つまりお買い得感があるからですが、決して薄利多売ではありません。適正な粗利益と在庫回転率を掛けた交差比率にはいつも注意しており、販売管理費も抑えているので、売上高では業界2位ですが、利益面では決して負けていません」(小川社長)

 同社のビジネスは顧客からの買い取りが先なのでCtoBのビジネスモデルである。流通業としては大変珍しい形であるが、取扱商品がブランド品や貴金属などで換金性、流動性は高い。問題は、買い手のニーズはあっても売り手があるかどうかだ。

 「これまで、多くの消費者の方々は、ブランド品や貴金属を・買う・ことが主眼だったわけですが、貴金属バブルを経験して、近年では一般の人でも・売る・ことに抵抗感はなくなってきました。さらに、多くのブランド品を保有する中高年層の方々は、今後、・モノ・を保有し続けるよりも、それを売ることで、子や孫の世代への投資や夫婦での旅行などの・コト・に対してお金を有意義に使おうとしています。そのような方々が増えていますので、買い取りが減るとは思っていません。日本は世界3大ブランド品市場の1つであり、その規模も大きい。質屋が売るのですから目利きもしっかりしています。だから訪日外国人も安心してエルメスの高級バッグや、ロレックスなどの高級時計を・日本ブランド・として買っていくのです」(小川氏)

 

大黒屋親会社のアジアグロースキャピタルはアジアナンバーワン目指す

 

062_20140422_01

小川浩平・アジアグロースキャピタル社長

 大黒屋の親会社はアジアグロースキャピタル(東証2部)。35年に森電機として設立され、産業用照明機器などを製造販売してきた。

 その後、時代の変遷に合わせて業態を変え、投資事業を主力事業とすることで一昨年12月に現社名に変更。同社の社長でもある小川氏は、8年前に買収した大黒屋を、より大きな企業に成長させることを現在の最大の使命としているが、もともとは総合商社や外資系証券会社に勤務してきた。コロンビア大学経営大学院を修了後、米国ゴールドマン・サックスに勤務し、インベストメントバンカーとして80年代後半のLBO(相手先企業の資産を活用した買収)を駆使した大型M&Aなどの現場を経験してきた。

 その後、香港に上場する財閥系の不動産開発・投資事業会社の代表に就任。その投資先企業の1つが旧森電機で、その関係で小川氏が社長になり、業態を変えながら経営してきた。旧森電機の買収とそれに続く大黒屋の買収スキームがやや複雑だったこともあり一部に誤解が広まったが、東証などからの指摘は一切なかった。

 「投資事業というと、それだけで誤解を招きかねない部分もありますが、私がやりたいのはデット(銀行借り入れ)やエクイティ(株式)をバランスよく活用しながら企業の成長を促し、お客さまはもとより、従業員など関係するステークホルダーにとっての価値の最大化を目指すという企業再生の王道を行くことです。ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが大きな目標です」(同)

 アジアグロースキャピタルが成長する鍵は持ち分法子会社の大黒屋の業績が欠かせない。

 「大黒屋のもう1つの財産は、若手の店長クラスに人材がそろっていることです。彼らには厳しい交渉をやり遂げる・胆力・が備わっています」(同)

 全社員の力が結集すれば日本一はもちろん、アジアナンバーワンも見えてくると小川氏は自信をみなぎらせている。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

Eコマースを中心に成長を続けるBEENOS。その創業者である佐藤輝英氏は、5年前に社長を退任。4年前には取締役を辞任し、経営から退いた。それまで起業家として生きてきた佐藤氏が次に選んだのは起業家支援。BEENEXTを設立し、新しいイノベーションを起こそうとしている起業家への投資を始めた。その中でも投資の中心と…

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る