マネジメント

「メザシの土光さん」ともいわれ、その質素な生活は国民から好感をもたれ、その後のいわゆる土光臨調においても生活者の後押しを受けた。このインタビューはオイルショックの影響で長期不況に陥っていた時に掲載されたものだ。(1977.10.25号)

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土光敏夫(どこう・としお)
1896(明治29)年、岡山県生まれ。石川島播磨重工業(現・IHI)、東京芝浦電気(現・東芝)の社長、会長を歴任。経団連会長など公職も多く務めた。1988(昭和63)年没。

 当時、81歳の土光氏は、取締役相談役であった東芝に朝7時半には出社し、9時過ぎには大手町の経団連に入っていたそうだ。当時の本誌記者が東芝、経団連に取材を申し込んだが、向こう一カ月はアリの入る隙間もないと断られ、横浜・鶴見区の自宅に直撃したのがこのインタビューである。「遠路ご苦労だね」と招き入れてくれた土光氏は、「さぁ、なんでも聞いてくれ」とインタビューに臨んだ。

日本経済は産業構造の変革期

-- オイルショック以後、長期に渡って停滞している産業界の現状を、どのようにみておられますか?

土光 キミ、油ショックを、降ってわいたような禍みたいにいうけど、逆に油ショックがなかったとしたら、いまの日本はどうなっていたと思う? 48年までの高度成長が52年まで続いたと思うかね。油ショックは、そういう意味では“天の報い”でもあり“禍転じて福となす”といったキッカケで捉えなければ、まったくもって意味がないじゃないか。

-- そうしますと、オイルショック以後の長期不況も、単なる不況ではなく、日本全体が生まれ変わるための“陣痛”であり、“陣痛のない出産”はあり得ないということですね。

土光 そう、産業構造を変えるための“陣痛”だな。10年前には、日本にしかできなかったものが、繊維をはじめ、いまでは韓国あたりで、安くいいものがドンドンできている。

 ということは、日本は韓国等に譲らなければならない業種が、いっぱいできているんだ。そこに日本の産業構造を変えなければやっていけない、国際環境があるんだよ。

 ただ、世界経済の中で、日本だけが変わろうとしてもダメなんだ。ECが変わらないのが困っているんだが、早く変わる方向をみせてもらわないと……。

-- 日本だけで、日本の将来の方向付けは決められないし、動きも取れないということですね。

土光 だから油ショックを機会に、みんなが何とかしなければならないんだよ。徳川三百年を破り、日本の近代化を叫ぶには、明治維新が必要だったし、軍国主義から民主主義に転換するキッカケは敗戦だったように、みんなで何か新しいことをやろうとするときには、キッカケが必要なんだよ。いまは、日本民族が、世界を相手に優勝劣敗の戦いの中で真価を問われているときだ。

自分たちの社会は自分で切り開け

-- これからの日本を背負っていく若い人にひと言。

土光 年寄りは先に死んでいくんだから、どんどん若い人たちが中心にやってもらわなければダメだよ。

-- いまの若い人たちは、自分の将来を選択することが不可能だ、と言われていますが……。

土光 そんなこと言っていてどうするんだ。自分で考えて、自分で自分の将来を切り拓いていくしかないんだよ。若い人たちが、荷物を放り出そうとしたら、年寄りは、どんどん荷掛け役をやって背負わすんだよ。年寄りの出来ることはそれぐらいだよ……。

-- 若い人に賭けられますか?

土光 賭けられるも、賭けられないもないよ。賭けるしかないじゃないか? 歴史を見てみい。みんなそうして、今日があるんだよ。「いまの若い者は、よくやっている」と、言ってきた年寄りは、いつの時代だっておりゃしなかった。昔から「いまの世の中は悪くなった」と、年寄りはボヤいてきたんだ。

 しかし、悪くなった面も少しはあるが、良くなった方が多いだろう? そういうものだよ。

-- 最後に、土光会長は何を支えに、今日まで生きてこられましたか?

土光 バカなこと聞くなよ。支えなんかあって生きられるもんじゃないよ。毎日、毎日、生命があったから一生懸命生きてきただけ、それだけだよ。夢中になって生きてきた。石播も東芝も、それに経団連も、与えられた仕事に対して、それが自分の運命だと思って、ただ没頭してきただけだよ。

 

 対談後、記者に対し「遠いところ、ごくろうだったな。車代くらいの話ができたかな」といたわったそうだ。

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