マネジメント

弁護士法人法律事務所オーセンスの代表弁護士、元榮(もとえ)太一郎です。ビジネス弁護士としての実務経験で得たトラブル対応のノウハウ、「ブラック企業と言われないための対策」を解説いたします。

 【 事例 】

 X社は、A社長が経営する小規模の洋菓子製造会社です。看板商品のZロールは、知る人ぞ知る本格洋菓子として元々コアな人気を獲得していましたが、このたび雑誌に紹介されたことで、爆発的に売り上げを伸ばしました。

 ところがあるとき、「Zロールでお腹を壊した」「クリームの味がおかしい」という苦情が寄せられました。その数は徐々に増えていき、さらには、「工場従業員のBが何かの液体をクリームに混ぜているのを見た」という噂がA社長のもとに流れてきました。そこでX社が、Bが働く工場で作られたZロールを調べたところ、なんと、クリームから農薬が検出されました。BはAに個人的な恨みを抱いており、X社の評判を落とし、Aを困らせようとして農薬を入れたということです。

 A社長は慌てました。「このままでは被害が拡大してしまう!せっかくZロールの売れ行きが好調なのに……」。

 X社やA社長はこの後どうなってしまうのでしょうか。

 

【 解説 】他人事ではない!企業不祥事

  企業不祥事は、いつ、どの会社で起きてもおかしくありません。今回は冒頭の事例を題材に、企業不祥事に伴うリスクと対応策を説明します。

 (1)損害賠償のリスクがある!

 まず、企業不祥事が発生した場合、会社が被害者に対して損害賠償責任を負う可能性が出てきます。今回、農薬を混入したのは従業員のBですが、会社はその従業員が職務中に行った違法な行為(不法行為)についても損害賠償責任を負うことになります(使用者責任・民法715条)。さらに今回のケースでは、X社の他X社の役員も損害賠償責任を負うことがあります。仮に、A社長が問題を放置した結果、食中毒被害が拡大してしまった場合、社長として重大な過失があったとされ、A社長は、被害者に対して直接的に損害賠償責任を負うことになります(会社法429条)。

 (2)刑罰を受けることも!

 もしA社長が、農薬混入を知りながら事態を放置したならば、業務上過失致傷罪に問われる可能性すらあります(法定刑は5年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金)。過去には、2000年に雪印乳業が毒素の入った原料を使った低脂肪乳などを製造・出荷したがすぐに公表せず、1万数千人以上が食中毒を発症した事件で、元工場長が業務上過失致傷罪で禁固2年(執行猶予3年)の有罪判決を受けています。

 (3)営業停止の可能性も

 今回、X社は農薬が混入した食品を製造してしまったので、場合によっては食品衛生法に基づく営業停止処分がなされる可能性があります。

 (4)ブランドが失墜する

 企業不祥事でついて回るのはブランドの失墜です。特に消費者の関心が高い食品事故などでは、会社が倒産してしまうこともあります。

 

 【解説】会社がとるべき不祥事対応は

 それでは、X社はこれからどうすればいいのでしょうか。

(1)事実確認や原因究明を最優先に行う

 事実関係把握のため、迅速な調査が必要です。X社の例でいえば、Zロールに有害な物質が含まれているのか、その原因は何か、有害物質が混入した製品の販売量等を調査すべきでしょう。

 (2)同時並行で被害拡大の防止を!

 調査と並行して、真っ先にやるべきは、被害を最小限に抑えるための応急処置をとることです。原因が分かるまで製造ラインの停止、消費者への注意喚起、商品の回収など、消費者の安全を第一に考えた応急処置が重要です。

(3)事実を公表する

 消費者に直接かかわる不祥事の場合、積極的に事実を公表し、説明責任を果たすことが重要です。適切な対応を取るために、弁護士など専門家を利用することが有効です。

 (4)再発防止策を打ち出す

 調査結果を踏まえ、再発防止策を講じましょう。X社の不祥事の原因の1つは、工場内に農薬を持ち込ませてしまったことにありますから、工場の出入りを厳重に管理する体制の整備は必須といえます。

 

不祥事はチャンスにもなり得る

 00年の食中毒事件で信用が失墜した雪印ですが実は、1955年に起きた同様の食中毒事件を契機に徹底した衛生管理に取り組み、業界最高の品質と評価されるようになりました。会社が企業不祥事に直面した場合にも被害拡大防止、原因分析、再発防止など適切に対応し、ピンチをチャンスに変える姿勢で臨めば、必ず活路は開けるはずです。

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