政治・経済

パナソニックが2018年度に売上高10兆円を目指すことを明らかにした。津賀一宏社長はこれまで利益改善を重視してきたが、構造改革の順調な進展を受けて成長の目標を明確に打ち出した。10兆円はなかなか越えられなかった壁だが、津賀社長は達成に自信を見せる。(文=本誌/村田晋一郎)

パナソニックに立ちはだかる売上高10兆円の壁

 パナソニックは経営説明会を開催し、2014年度の事業方針を発表。そこで創業100周年となる18年度に売り上げ10兆円を目指すことを明らかにした。内訳は家電事業、住宅事業、車載事業がそれぞれ2兆円、BtoBソリューション事業が2・5兆円、車載向け以外のデバイス事業が1・5兆円となる。

 同社は昨年、津賀一宏社長の下では初めてとなる中期経営計画「Cross―Value Innovation 2015(CV2015)」を策定したが、具体的な売り上げ目標を明示しなかった。

 「売り上げを追うことは従来の路線の延長であり、構造改革が遅れる可能性がある」(津賀社長)とし、売り上げ目標を掲げず、利益重視の姿勢を強調。今回の経営説明会でCV2015の進捗を発表したが、最終年度となる15年度の売上高の目標は明示しなかった。

 しかし、18年度は同社にとって一大マイルストーンであり、数年前からおぼろげながらも未来像を提示してきた。それに合わせて、津賀社長の下での構造改革が順調に推移していることから、今回、明確な目標を提示した格好だ。

 売上高10兆円は達成できれば、もちろん同社では過去最高となるが、なかなか越えられない壁である。

 「売上高10兆円は、松下電器の頃から何回もトライしてはじきかえされてきた」(津賀社長)

 前社長の大坪文雄氏の在任中、07~09年度の「GP3計画」、10~12年度の「Green Transformation 2012(GT12)」と2度の中期経営計画でそれぞれ「売上高10兆円」を掲げてきたが、2度とも未達に終わった。

 その理由について、津賀社長は次のように語る。

 「従来は、売れば利益が落ちる事業も含んでいた。また、伸びている事業と落ちる事業を混在させていた。このため、10兆円を目指しても、届かずに失速するという結果になった」

 それに対して、今回は構造改革の進展が自信となっている。CV2015の初年度として、13年度は「財務体質改善」「赤字事業の止血」「脱・自前主義による成長・効率化」「お客さま価値からの逆算による成長戦略」の4つの施策を実行。前3つについては一定のめどが付き、成長戦略については具現化の途上にあるという。

 「ここ1年ちょっとの間でいろいろ手を打ってきて、売り上げを伸ばしていけば利益が上がっていく体質になった。また、何をやってはいけないのかが明確になっている。因縁の10兆円なのでなんとしても達成したい」と津賀社長は意気込みを語る。

売上高10兆円に向けてパナソニックのけん引役となる事業は?

 同社では14年度を、「中期計画達成への基盤を固める年」「18年の『新しいパナソニック』に向けた成長戦略を仕込む年」と位置付けている。構造改革を完遂すると同時に、100周年に向けた攻勢を開始する。

 そのために14年度に2つの組織再編は実行する。ひとつは、家電部門の強化だ。具体的には、テレビなどのホームエンターテインメント事業をこれまでのAVCネットワークス社から、白物家電中心のアプライアンス社へ移管し、家電事業を一元化する。

 売上高10兆円の牽引役は、2・5兆円が目標のBtoBソリューション事業や、成長余力のある車載事業や住宅事業が中心となる。しかし家電は同社のDNAであり、グループのブランド力向上のためにも重要な事業と位置付けており、競争力の維持・強化は必須だ。ここ数年家電事業の売り上げが低下している理由として、津賀社長は、スペック優先、イノベーション不足、他社の後追い、日本市場偏重、を挙げる。これらの解決に向けて、AVC社とアプライアンス社それぞれの強みを結集し、掛け合わせて競争力のある、新たな家電事業を創るという。

 もうひとつは、家電事業の強化にも関係するが、「脱・日本依存」をキーワードに海外事業を強化する。グローバル市場を「日本」、中南米を含めた「欧米」、アジア・中国・中東からなる「海外戦略地域」の3つの地域に分け、それぞれ地域に応じて、注力する事業を明確にして成長戦略を展開する。特に新興国を中心に成長余力の大きい海外戦略地域を攻略するため、「戦略地域事業推進本部」を設置する。

 「海外戦略地域の成長を取り込むことができなければ、パナソニックの将来はない」と津賀社長は重要性を強調する。

 本部長を務める山田喜彦副社長はインド・デリーに駐在。代表取締役が海外に駐在するのは初めてとなるが、山田副社長に全権委任する形で、海外事業を進めるという。

 これら2つの施策は、津賀社長が自ら言うように同社にとっての「チャレンジ」である。家電事業の一元化については、その必要性は理解できるが、同社が有する多岐かつ大規模なリソースを融合し、最適に活用していくことは容易ではない。また、戦略地域事業推進本部のオペレーションについても、初めての試みだけにやってみなければ分からない部分があるだろう。

 14年度は津賀社長にとって最初の勝負の年となる。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る