テクノロジー

将来の日本経済を背負う人材を発掘するビジネスプランコンテスト「金の卵発掘プロジェクト」。審査委員特別賞を受賞したパッシブホームが大きく評価された点は、技術の有望性と事業の堅実性だ。省エネ・節電技術の特許を取得し、既に複数の導入実績を持つ。「建築ベンチャー」という珍しい形態でビジネスを展開する同社の軌跡とは。

 究極の省エネ住宅 パッシブホーム

川多弘也(かわた・ひろや) 1967年生まれ。北海道出身。85年北海道電力入社。2008年に退職後、パッシブホームを含め3社の株式会社の経営に携わる。建物の光熱費を削減するパッシブ設計普及事業およびコンサルティングなどを行う。

川多弘也(かわた・ひろや)
1967年生まれ。北海道出身。85年北海道電力入社。2008年に退職後、パッシブホームを含め3社の株式会社の経営に携わる。建物の光熱費を削減するパッシブ設計普及事業およびコンサルティングなどを行う。

 私は、学校を卒業し北海道電力に就職した。

 電力会社は保守的な社風で当時の私は、日本のエネルギー問題解決のために、いろいろなアイデアや技術、設備などが必要だとは認識していながら、思うように動けない毎日が続いていた。

 早期退職制度を利用し一念発起。文句の付けようのないキチンと整備されたレール上から脱線し、他人からは「豪華客船から氷の海に飛び込むバカ者だ!」とも言われた。

 2年間は飲食業を営みながら、エネルギーコンサル会社の起業準備をし、今か今かとチャンスを待つ日々が続いた。

 そんなある日、「住宅を建てるのでエネルギーコンサルをして」と火力発電所の後輩から依頼があった。同じエネルギーを取り扱うプロだが建物に関しては未知の世界で不安で困っているんだと。

 後輩のために究極の省エネ住宅を建ててあげようと情報収集、そしてスキルを駆使し辿り着いたのがパッシブ工法による住宅である。以前から、ヨーロッパで建物の換気を機械に頼らず自然に換気を促す・パッシブ工法・が行われていたことは知っていた。

 北海道でパッシブを研究している天谷一男(現在弊社の取締役)を紹介され話を聞いていくと、良いモノだが売れないという。彼独自の・パッシブ建築・にさらに付加価値を付ければ、売れると確信した。

 この後輩の住宅は約50坪あり、冬にはマイナス24度にもなる外気の中、そのシーズンの12月の全光熱費は1万4千円。これが口コミとなり開業1カ月半で8棟も受注した。うち3棟は投資用のアパートで税理士や銀行マンには大変驚かれた。

パッシブホーム 川多弘也社長が目指すもの

096_20140422_Golden02 大手メーカーによるスマートハウスやHEMSといった動きがあるが、根本的な問題は解決できていない。問題とは、未来のためにいかにCO2排出を削減できるかである。機器設備が増えれば増えるほどランニングコストはもちろんのこと、製造、流通でのCO2排出が増加する。

 「寒い」「光熱費が高い」「結露が出る」は北海道、東北地方に住む人の苦痛とも言えるほど長年解決できていない悩みであった。冬季に家の中を暖めれば光熱費は月5万円を超える。それでも2階の部屋、北側の部屋は寒くリビングとの温度差が出る。押入の中は結露ができ、カビが発生し、高級革カバンにカビが移る。

 これらすべてを解決できるのが、自然対流システムを設計しているわれわれパッシブホームである。特許を応用し高額な建築費を掛けずに設計ですべての問題を解決するパッシブ建築は「建築の世界をイノベーションする革新的な技術だ」と感じる。

 パッシブホームが目指すのは、・超高効率・建築ベンチャーである。自社は事業の核となる研究開発とプロモーションに特化。施工や営業はすべて信頼のおける世界中のパートナー会社とタッグを組む。自社ならではの断熱施工技術、気密施工技術など指導、施工後のチェックなどは、自社の強みに集中し、究極の・エコ建築・を実現する。今夏までに、建築業界の常識を変えるほどのインパクトがあるエコ建築工法を2つ開発(特許出願予定)する。全国展開、世界展開への条件が整いつつあるのだ。パッシブ設計は近未来の住宅、アパート、マンションのコアになるものだ。建築コストを抑えながら、マンションが電力系統から独立するのもそう遠くはないだろう。

 東日本大震災から3年、経済的で暖かいパッシブが早く普及し、被災者に安らぎを与えられるよう邁進していく所存である。

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