政治・経済

  「消費税、きょうから8%、17年ぶり増税、国民負担、年8兆円増」--消費税率が4月1日、5%から8%に上がった。税率の引き上げは17年ぶり。高齢化で増え続ける年金や医療などの社会保障費を賄う狙いがある。

 国民負担は年間で約8兆円重くなる見通し。第一生命経済研究所によると、年収500万〜550万円の4人世帯の場合、年間の負担額が7万1千円増える。(中略)

 2014年度の税収増は約5兆円の見込み。うち2・9兆円を基礎年金の国庫負担に、1・3兆円を赤字国債で賄っていた社会保障費の補填にあてる。0・5兆円は子育て支援充実などに使う。(後略)(日本経済新聞2014年4月1日付)

 家計の負担は年間約9万円

 今回の消費増税の負担額を試算すると、消費増税そのものは相当景気へのダメージが大きい。参考のために1989年度(消費税3%導入)と97年度(同3→5%増税)、今回2014年度に5→8%へ増税した場合のそれぞれについてマクロの負担額を見ると、89年度には物品税の廃止等の減税もあり、ネットの増税幅は1・8兆円にとどまった。当時はバブル景気末期で景気の勢いもあったため、結果的に景気への影響は軽微だった。

 97年度は消費税率の引き上げ幅自体は2%で、負担増は5兆円程度と限定的であった。しかし、特別減税の廃止や年金医療保険改革等の負担が重なり、結果的には9兆円近い負担となった。景気対策がない中で同年6月にアジア通貨危機が起こり、同年11月に金融システム不安が生じたため、景気は腰折れした。

 確かに、97年度は消費増税以外の負担増もあり、消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない。しかし、今回の消費税率3%引き上げは、それだけで8兆円以上の負担増になり、家計にも相当大きな負担がのし掛かる。事実、総務省「家計調査」を用いて、具体的に4人家族(有業者1人)の平均的家計への負担額を試算すれば、年間約9万円の負担増となる。

 また、内閣府のマクロ計量モデルの乗数をもとに経済成長率への影響を試算すれば、13年度は駆け込み需要によりプラス0・5%ポイント経済成長率を押し上げるが、14年度についてはマイナス1・0%ポイントも経済成長率を押し下げると試算される。しかし、消費税率引き上げに伴い、97年度のように日本の景気が後退局面に入る可能性は高くないだろう。

 まず、今回は真水で5・5兆円の景気対策と1兆円程度の追加減税が打ち出されたことがある。内閣府のマクロ計量モデルの乗数をもとに今回の経済対策と減税が経済成長率に及ぼす影響を試算すると、14年度はプラス0・7%ポイント経済成長率を押し上げるとみられる。このため、消費税率引き上げに伴う経済成長率押し下げはマイナス0・3%ポイントになると試算される。

 駆け込み需要は前回より小さく

 さらに、今回は駆け込み需要の反動減の規模が97年ほど大きくならない可能性が高い。乗用車については、97年を上回る駆け込み需要が生じた可能性があるが、家電製品については過去数年の間にエコポイントや地デジ化等、駆込み需要の主因となる耐久消費財の需要喚起策が複数回打ち出され、既に需要が先食いされていた可能性が高い。また、97年当時と比べて買いだめがしにくいサービス消費の割合が高まっていることも支援材料だ。住宅投資についても、今回は増税後に住宅ローン減税の拡充や住まい給付金などが控えている。こうなれば、14年度に生じる反動減も97年度ほどは大きくならないと見込まれよう。

 一方、97年当時と比べても国内企業の生産設備の過剰感は低く、雇用人員に至っては不足超となっている。このため、駆け込み需要の反動や実質購買力の目減りに伴う企業収益への悪影響が生じても、国内企業が設備投資の抑制や人件費の削減を余儀なくされる可能性は低い。なお、97年の消費税率引き上げ後に景気が腰折れした背景には、アジア通貨危機や国内における金融システム危機が発生したことがある。これにより、バブル崩壊以降に生じた過剰な設備や雇用、債務の調整を余儀なくされたため、本格的なデフレに陥った。今回は、当時と比べて企業の業況判断DIも高水準にあり、銀行の不良債権問題も片付いている。

 さらに、政府が労使交渉に介入したこともあり、賃上げが実現する可能性が高い。実際、春闘賃上げ率に連動性が高い労務行政研究所の賃上げ率見通しを見ると、今年度は15年ぶりの水準に高まっている。したがって過去の経験則からすれば、14年度の春闘賃上げ率は2%を大きく上回ることが期待される。12年度から始まった公務員の給与削減措置が、13年度いっぱいで終了することも14年度以降の賃金押し上げに寄与しよう。

 

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