文化・ライフ

低い声には説得力と自信を高める効果が

 ビジネスの現場で他人に大事なことを伝えるとき、あなたはどんなことを心掛けていますか。大きな声でゆっくり話すのは当然ですが、これに加え、重要なことは低い声で話すようにしてください。低い声を出すと聞いている人の信頼感が高まり、さらに話している本人も自信が深まる作用があることが研究で明らかになったからです。

 ティルブルグ大学(オランダ)のグループは、意識的に高い声と低い声のそれぞれで人に文章を読んでもらい、脳機能への影響を調べました。結果、低い声で読むと、読んでいる本人も聞いている人も、それが正しい情報だと感じて重く受け止める傾向があることが分かったのです。人は、話す内容に確信を持てないときは、声を作り出す声帯の周囲の筋肉が緊張するため、声が上ずる傾向があります。一方、話す内容に確信を持っていると、声帯が分厚くなり低い声になります。脳はこうした人体の性質を子供の頃から無意識のうちに学習し、声の高低から話す内容の信頼度を推定するようになるわけです。

 こうしたメカニズムが研究で実証されたのは最近のことですが、実は放送の現場では、経験に基づき、かなり前から気づいていました。私は若いころ、NHKでアナウンサーを務めた経験がありますが、新人研修では低い声でニュースを読むよう指導されました。ニュースは信ぴょう性が何よりも大切で、視聴者の信頼感は低い声で伝えたほうが高まるからです。そのとき一緒に研修を受けていた仲間の一人に「おはよう日本」という朝番組を担当している阿部渉アナウンサーがいます。この方も、ニュース原稿を読むときは低い声、スタジオでトークをするときは高い声といったかたちで、研修で学んだことを忠実に実行しています。

 これと同様の声の使い分けは、ビジネスの現場でも力を発揮します。信頼感が増すからと言って、低い声ばかり使っていると、周囲の人は常に重く受け止めようとするので脳が疲れてしまいます。人間関係を円滑にするための何気ない会話には、むしろ高い声のほうが望ましいのです。大切なのは声の高さを自分で意識すること。そうすれば、TPOに合わせた使い分けができるようになります。

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