政治・経済

オフィス用品、家具大手のイトーキの歴史をひも解いていくと、その時代の「働く人」が見えてくる。同社がオフィスから感じ取る“次の時代のにおい”とは。(文=本誌・古賀寛明)

今も時代先取りのハイカラ屋

 1890(明治23)年4月、東京上野公園で行われた第3回内国勧業博覧会を訪れたイトーキ創業者の伊藤喜十郎は、世の中を便利にする発明品や特許品を広めるため、大阪の高麗橋に同年12月、「伊藤喜商店」を誕生させた。

 創業当時、販売していたのはホチキス、クリップなどで、クリップなどは今もその形をとどめる。その後も、魔法瓶や今でいうキャッシュレジスターなど、文明開化をけん引していた存在だったと言える。当時の姿は「平野町のハイカラ屋」といわれたことからも想像でき、欧米から入ってくる新奇で、便利な窓口であったようだ。

 発明品や特許品の商いに目を付けた創業者は、変化する時代を支える明治の男というイメージとともに、商いのセンスも感じさせる。それもそのはず喜十郎は、三井家の分家筋にあたる小野家の六男として生まれ、創業間もない三井銀行で活躍していた。そのため、東京の京橋オフィスには今も渋沢栄一翁の書いた伊藤喜商店と書いた額(写真参照)が飾ってある。

 会社の転換期は、戦後すぐの進駐軍が使う机の受注時からだ。戦前、机やいすは木製が主流であったが、鉄の生産量の増大とともにスチール製のオフィス家具が普及、もともと金庫の製造を手掛けていたこともあり、金属加工の技術に秀でていたイトーキはこの分野を伸ばした。高度成長時代に合わせて、会社も拡大していったが、今また、次なる転換期を迎えている。

 今後の人口減少を見据えて、海外に販路を求めるのはもちろんだが、多くの人が家庭と同じく長い時間を過ごすオフィスで、より快適に、充実した職場環境を行える仕組みを考えている。

 東京・京橋にあるイトーキのイノベーションセンター「SYNQA(シンカ)」は、「知の交流」をコンセプトに掲げる。訪れて気付くのは、創造性を培うオフィスには、木がふんだんに使われ、鉄とコンクリートの時代からさらなる転換が行われたこと。また、効率を求める時代といわれるが、これからのオフィスは、人がより触れ合えるように、できるだけ座り続けないようにと、効率だけでは済まされない生活者の視点が加わる。

 124年目を迎えた今、イトーキは人への視点でオフィスを変えようとしている。

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