マネジメント

子育ては、ビジネスの世界における人材育成の原点です。チャイルド・ファミリーコンサルタント・山本直美が、6千人の子供たち、4千組の家族の子育てコンサルティングを通して学んだ、人を育てるマネジメント法を紹介。父親として、経営者として「育て」の悩みを抱える読者のご相談にお答えします。

 

●ある経営者の相談●

ある業務の結果やスピード感が気になると、任せていた部長を飛び越えて、自分が直接部下に指示を出してしまうことがある。その際、部長が自信を失ったような顔をしていたり、部下が腑に落ちない顔をしたりしている。それがとても気になるのだが。

 頭越しの指示が生む弊害

 「自分の上司の頭越しで、社長からの指示が下りてくる」――実のところ、部下にとってこれは迷惑な話でしょう。自分だけの判断で社長の指示に従うと、直属の上司の立場がなくなりますし、それで問題が起きたときのことを考えると、どう動いてよいか分からなくなります。やはり、社長とはいえ、「組織のラインを無視した指示出し」は極力避けたほうが無難です。

 実は、これと同じことが、家庭内でもよく起こります。

 例えば、以前、会社経営者のある父親から、「普段、子どもと接する時間があまり取れないので、ついつい甘やかしてしまう」と、相談を受けたことがあります。要は、子どもが「歩きたくない」と言えば抱き上げてやり、ジュースやお菓子が欲しいと言えば、すぐに与えてしまう。また、そんなふうなので、母親からは「子どもに甘すぎ!」と非難される、というわけです。

 父親と母親の社会的な「常識」は違っていて当たり前です。ですが、子どもに対する2人の対応があまりに違うと、子どもは、気まぐれに対応されていると思ったり、どちらの言うことを聞けばよいのか分からず、混乱するのです。

 仮に、母親が日常的に子どものしつけを担当し、子どもの生活習慣についての最終意思決定者だとしましょう(大抵のご家族では、そうなのですが)。この場合、「お茶と水しか与えない」、「買い食い癖をつけさせない」など、母親が普段から注意している部分を、父親が顧みないのは厳禁です。これは、しつけという仕事を任せた母親に対して、父親がどこまで信頼を置けるか、という問題でもあるのです。

 チームを任せた相手を信じ、一切、横から口出しをしないというのは、簡単なようで難しいことです。ですが、経営においても、子育てにおいても、チームリーダーを信頼し、リーダーの頭越しに指示を出さないようにするのが良策です。

 それでも口を出したい時には……

 では、どうしても「口を出したい」場合は、どうしたらいいのでしょうか。子育てにおいて、どうしても父親が口を挟みたい場合は、母親を尊重する表現で言い諭すことが大切です。例えば、「せっかくママが作ってくれたご飯だから、ジュースを飲む前に食べるんだよ」、あるいは、「ママがお話してくれているのに、ちゃんと聞かなきゃダメだぞ」といった具合です。要は、常に母親の顔を立てるようにするわけです。実を言えば、「父親が子どもを直接叱る」ことで、母親が傷つく場合があります。ですから、「まだ食べているのか!」、「まだ片付けていないのか!」といったふうに父親が子どもを直接叱るのではなく、「ママの言うことを聞きなさい」と、母親の援護射撃をしてあげるのがいいでしょう。

 目線を合わせる

 しつけを母親に任せる上では、夫婦間のコンセンサスを取っておくことも大切です。

 「甘やかしていいところ」と「厳しくしつけるところ」の2点について、夫婦の考え方や目線がそろっているのが理想的です。ここがそろっていると、子どもが食事を途中で嫌がったときに、最後まで食べるよう怒る母親に対し、「嫌ならいいじゃないか」と父親が言い、母親がしつけの自信を失い、子どもが混乱、といった事態は避けられるはずです。

 また、子どもにかかわる周囲全体が子どもを極端に甘やかしたり、その逆であったりするのも問題です。周囲が子どもを甘やかし過ぎると、子どもは社会性に欠けた性格になります。逆に全員が厳しいと、青年期におけるアイデンティティーの確立に悪影響を及ぼしかねないので注意が必要です。

 こうした「しつけ」のポイントを経営に置きかえてみると、社長が社員を叱りたい場合も、「常に直属の上司の顔をたてるよう心がけること」、また、気まぐれに口を挟むよりは、「援護射撃が効果的」といった要点が浮かび上がってきます。そして、社員の育成や教育の方針、教育の仕方について、直属の上司と常にコンセンサスを取っておくことも大切。要は、人に何かを「任せるコツ」は、子育ても経営も一緒ということです。

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