政治・経済

日本橋から銀座にかけての再開発が活況を呈している。次の時代の中心になるのはどの街か。先行する日本橋再生に対し、銀座も松坂屋跡地の再開発プロジェクトが動き始めた。(文=本誌/古賀寛明)

 

進む都心の再開発と銀座の新たなシンボル

 

プロジェクトを主導する左から住友商事・中村社長、森ビル・辻社長、J・フロント・山本社長、L Real Estateのヴォゼック氏

プロジェクトを主導する左から住友商事・中村社長、森ビル・辻社長、J・フロント・山本社長、L Real Estateのヴォゼック氏

 4月2日、東京・銀座の一画で起工式が行われた。その場所は、2013年6月に閉店した松坂屋銀座店の跡地とその周囲。銀座のメーンストリートである中央通りと三原通りの間の2ブロック、約1・4㌶の広大な土地が舞台となる。

 起工式には、松坂屋の属するJ・フロント リテイリングの山本良一社長をはじめ、再開発のコーディネーターである森ビル・辻慎吾社長、運営に参加する住友商事の中村邦晴社長などが顔をそろえた。約758億円の総事業費にふさわしい豪華な起工式になった。

 16年11月に竣工予定のこの建物は地上13階、地下6階、敷地面積は約9080平方㍍の広さを誇る。

 海外高級ブランドをはじめとする商業施設やオフィス、観世流の能楽堂などの文化施設が入り、緊急災害時には避難場所にもなる。起工式に先だった会見でも、森ビルの辻社長は「ハイクオリティーでハイクラスのテナントさんを250から300呼び寄せたい」と、世界に目を向けた新たな銀座のシンボルの誕生に自信をのぞかせた。

 その10日ほど前、銀座駅から3つ先の三越前駅も、大きな賑わいを見せていた。

 三井不動産が主導する日本橋再生計画の第2ステージにあたる室町東地区のコレド室町2とコレド室町3がオープンしたのだ。オフィスや商業施設はもちろんのこと、日本橋初の映画館、TOHOシネマズが入ることで、昼間の街というイメージから脱却し、夜も人の流れを生み出そうとしている。オープン直後の3連休には、多くの人が押し寄せ、日本橋復活を印象付けた。

 20年に開催される東京五輪を追い風に、都心の再開発は、ますます進んでいる。

 銀座や日本橋以外にも、例えば、渋谷では東急グループを核に渋谷ヒカリエが誕生。また、東武、西武沿線とつながったことで人の流れを変えた。今後もJR渋谷駅の再開発などを進める。

 同じく丸の内では、三菱地所を中心に順々にビルの建て替えを行っており、パレスホテルや東京駅周辺のリニューアルも相まって、ビジネス面だけではない東京の玄関にふさわしい街の魅力をつくり出している。

 

銀座再開発における日本橋との違いは?

 

 街が新しく生まれ変わっていく中で、集客力や活気など、街の力関係にも変化が訪れている。

 かつて、街の活力は競争によって醸成された。例えば渋谷におけるセゾンと東急。新宿ではヨドバシカメラなど家電量販店の争いや丸井の攻勢。池袋では西武と東武がしのぎを削ることで街が活性化された歴史がある。

 その後、六本木ヒルズや丸ビル、今年竣工する虎ノ門ヒルズなど、大艦巨砲主義のごとく、シンボルが街を引っ張っていく。森ビル得意の形といえるが、今回の銀座六丁目のプロジェクトもこの流れに沿う。

 外国人観光客数も順調に伸びていることで、三原通り側にバスを乗り付けることができるようにし、館内にも観光案内所を設置、主にアジア圏の富裕層を館内の高級ブランド店に誘導する狙いが見える。大丸松坂屋を再オープンしない理由も、ハイクラス、ハイクオリティー戦略に合致しないからであろう。

 ただ、ハイクラスをターゲットにする場合、景気に左右されるのはもちろん、中国の観光客などは政治的な問題が起こった場合のリスクもある。また、会見を聞く限りでは、高級感は感じるものの銀座らしさは伝わってこない。つまり、土地のシンボルではなく、機能のシンボルと考えたほうが分かりやすいかもしれない。

 一方、日本橋は街を「面」でとらえているようだ。日本橋は江戸時代には街道の起点になるなど、商業の中心地であったが、ご存じのように明治以降、銀座にその座を明け渡してきた。

 近年も、中心であるはずの日本橋三越と高島屋が多少離れていることで連携することもなく、それぞれ「点」で勝負していた。そもそも、シンボルであるはずの日本橋自体が、首都高速の下に隠れていたのでは、致し方のないことだろう。しかし、今の日本橋は連携での再生を図る。

 例えば、新しいコレド室町を歩いてみれば分かるが、日本橋の持つ伝統や和の文化といった特性に沿うような出店が多い。

 鰹節やダシを扱うにんべんや調味料で人気の茅乃舎など、雑貨でも和のテイストや上品で落ち着いた感じの店が並ぶ。また、コレド室町を出ても、街は同じコンセプトを共有する。刃物の木屋や文明堂、山本海苔店など、相乗効果で今までよりも魅力を増したように感じる。大企業と地元の小さな商店の間にさえも垣根は感じられない。

 その中心にあるのが神社だ。福徳神社は平安時代からこの地に鎮座している神様だそうだが、一時はビルの上に追いやられていたそうだ。神社や祭りはコミュニティーに欠かせないものだけに、街に共通のアイデンティティーになっている。

 街という視点で考えれば、日本橋が「らしさ」を存分に出しているのに比べて、銀座はいくらハイクオリティーといえど、高級ブランドが集まるだけの受け身という印象でしかない。

 ただ、まだオープンまで2年以上ある。銀座らしさや魅力が発信されることが期待される。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る