テクノロジー

次世代デバイスとして注目されるウエアラブル端末。その活動量計分野で業界をリードする米国のFitbitが6月、日本でリストバンド型端末の販路拡大に乗り出す。戦略や期待を、共同創業者でCEOのジェームス・パーク氏に聞いた。(文=本誌/長谷川愛)

 

米国で活動量計分野シェア1位のFitbit

 

 ウエアラブル端末とは腕時計型やメガネ型など身に着けて持ち歩ける情報端末である。最近ではグーグルの「グーグルグラス」が話題なほか、フェイスブックやインテルがウエアラブル端末関連企業を買収するなどIT市場をにぎわせる。
 中でも、健康維持のために日々の活動量などを記録する活動量計分野では、米国のジョウボーンやスポーツブランドのナイキ、日本ではソニーがリストバンド型製品を発表。クリップ型製品ではオムロンやタニタも根強い人気がある。英国の調査会社によれば、この分野は18年までに全世界で2兆円の市場規模になるとしている。
 「活動量計」分野にあるFitbitの製品は、身に着けることで歩数や移動距離、消費カロリー、睡眠時間などを測れるとともに、集めたデータをパソコンやスマートフォンと同期し、アプリ上で視覚化して管理が可能。その情報を家族や友人と共有して競うことも、メッセージを送り合うこともできる。現在は42カ国3万5千店舗の小売店で取扱いされており、活動量計分野で米国のシェア1位、67%を占めている。
 日本では現在、クリップ型の「Fitbit One」「Fitbit Zip」が店頭販売されている。リストバンド型の「Fitbit Flex」は、ソフトバンクヘルスケアの契約者に限り利用できたが、6月からはヨドバシカメラやビックカメラといった家電量販店など約600店舗で販売を開始し、販路拡大を本格化させる。
 米国での人気についてFitbit CEOのパーク氏は、「一流スポーツ選手ではない、われわれのような普通の人でも利用できるようにしたことが要因と考えます。多彩な形状、カラーバリエーションをそろえ、利用者が好みに合わせて選べる多様性があります」と語る。
 日本には健康のために時間とお金を掛けたいと考える人が50%いるという調査結果もある。そのような土壌がある日本の、発売当時の反応について、「消費者はFitbitを万歩計の進化形として自然に受け入れてくれました。『健康のために機器を身に着けよう』と啓発した米国とは違いました」(パーク氏)としている。ただ従来型の万歩計が普及し、既存の健康機器メーカーが多く存在する日本市場で、同社はどこまで売り上げを伸ばせるのか。製品の強みをパーク氏はこう分析している。
 「万歩計とは違い、Fitbitは測った活動量を、計44種のスマートフォン、パソコンから見ることができる接続性、適合性を持ちます。また健康上の目標を達成する上でソフトウエアの役割は重要。弊社はソフトウエアアプリケーションの使い心地を追求しており、他社より優位に立つと考えます」
 現在Fitbitの社員275人中、3分の2がソフトウエアの技術者だ。このソフトウエア重視の背景にはパーク氏自身の経歴が影響している。パーク氏は2007年、共同創業者のエリック・フリードマン氏と同社を創業。それまでは写真共有サービス会社などを運営しており、ソフトウエア畑の連続起業家だった。

 

販路拡大する「Fitbit Flex」(左)とクリップ型の「Fitbit Zip」を手にするジェームス・パーク・Fitbit共同創業者兼CEO

任天堂Wiiから着想し活動量計づくりに注力

 

 Fitbit設立のきっかけは任天堂のWiiの登場だ。
 「Wiiが発売された時、私は発売初日、家電量販店の行列に朝6時から並んで買いました。センサーとソフトウエアを組み合わせた商品は、ゲームの概念を変える衝撃がありました」
 当時運動不足を感じていたパーク氏は、「技術を使い健康的な生活を送りたいという個人的な思いも重なり、Fitbit設立の着想を得ました」と語る。
 7年で成長した同社だが、今後、後発企業が出てくると予測される。その中でパーク氏は生き残りに自信を見せる。
 「設立当初から『よりよい健康のために、優れた活動量計をつくる』ことを使命に、それだけに注力してきました。消費者の本当のニーズを深く理解していることも他メーカーにはない強みです」
 Fitbitの目標は「グローバルブランドにすること」(パーク氏)と断言する。新たな取り組みとして、1月には米国ブランド「TORY BURCH」と提携し、ファッション性の高いアクセサリー型の活動量計を作ると発表しており、新製品の展開が注目される。
 Fitbitがグローバルブランドとなるためには日本市場へのアプローチも重要だ。パーク氏は「Flexを販売する小売店と積極的なPR活動を展開します。ユーザーサポートも充実させたい」と語る。具体的には食品摂取カロリーのデータベースを持つ日本の企業と提携し、データを提供していくという。
 日本での認知度はまだ低いFitbitだが、ウエアラブル端末として斬新な製品と、より充実したソフトウエアを提供し続ければ、日本でのシェアナンバーワンも夢ではない。

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義 村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

経済界が主催するベンチャー企業支援企画「金の卵発掘プロジェクト2018」でグランプリを受賞した草木茂雄・エムアールサポート社長。建設・土木というガテン系の領域でイノベーションを起こすための挑戦を追った。(吉田浩)草木茂雄・エムアールサポート社長プロフィール 測量とアートが結び付く「測量美術」とは何…

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る